シナモンで下痢・腹痛になるのはなぜ?食べすぎ・アレルギーとの関係と対処法

執筆・監修:箕浦雅子(薬剤師)|株式会社健将 代表取締役

「シナモンを食べたあとに下痢になった」

「シナモン入りのお菓子を食べると、お腹を壊す気がする」

「シナモンを食べすぎたのが原因?」

そんな疑問を持つ方もいるでしょう。

結論からいうと、シナモンを食べたからといって、誰にでも下痢や腹痛が起こるわけではありません。

シナモンを食べたあとに下痢になった場合は、

  • シナモンをどのくらい摂ったか
  • シナモン入り食品のほかの材料
  • 食物アレルギー
  • 食中毒や感染性胃腸炎など、シナモンとは別の原因

などを分けて考えることが大切です。[2]

また、シナモンにはいくつか種類があり、カシア系シナモンには「クマリン」という成分が比較的多く含まれます。[1]

ただし、クマリンは「シナモンを食べた直後の下痢の代表的な原因」として考える成分ではありません。主に、長期間多く摂取した場合の安全性、とくに肝臓への影響という別の問題として考えます。[1]

シナモンとは?

シナモンは、ニッケイ属の植物の樹皮を利用した香辛料です。

パンや菓子、飲料、カレーなど、さまざまな食品の香りづけに使われています。

「シナモン」とひとことで呼ばれていますが、実際には複数の種類があります。

安全性を考えるうえで特に知っておきたいのが、

  • セイロンシナモン
  • カシア系シナモン

の違いです。

この2つでは、後ほど説明するクマリンの含有量が大きく異なります。[1]

シナモンを食べると下痢・腹痛になることはある?

シナモンを食べたあとに下痢になったとしても、それだけで「原因はシナモン」と判断することはできません。

いくつか確認したいポイントがあります。

① 「食べすぎ」が原因なの?

検索すると、

「シナモンを食べすぎると下痢になる」

という説明を見かけることがあります。

しかし、本記事で参照した資料の範囲では、「シナモンを○g食べると下痢になる」という一律の基準は確認できません。

そのため、

「たくさん食べたから、シナモンそのものが下痢を起こした」

と決めつけるのは早いでしょう。

まずは、

  • 普段より多くシナモンを摂っていなかったか
  • シナモンそのものを多く使ったのか
  • シナモン入りの食品をたくさん食べたのか

を分けて考えてみましょう。

特に「シナモン入りのお菓子をたくさん食べた」という場合は、シナモンだけでなく、その食品全体を見る必要があります。

② シナモン入り食品の「ほかの材料」が原因のことも

シナモンは、そのまま単独で食べるよりも、

  • シナモンロール
  • ドーナツ
  • アップルパイ
  • クッキー
  • チャイ
  • カレー

などに使われることの多い香辛料です。

そのため、シナモン入り食品を食べたあとに下痢になったとしても、シナモン以外の材料が関係している可能性があります。

たとえば、食品によっては、

  • 油脂
  • 乳製品
  • 果糖などの糖質
  • 糖アルコール
  • アルコール
  • ほかの香辛料

なども含まれます。

NIDDKでは、急性下痢の主な原因としてウイルス性胃腸炎、食中毒、薬の副作用などを挙げており、食物アレルギーや特定の糖質をうまく消化・吸収できないことも、慢性・持続性の下痢に関係する場合があります。[2]

「シナモン入りのものを食べると下痢する」と感じる場合は、商品名や一緒に食べたものまで記録しておくと、原因を考える手がかりになります。

③ シナモンアレルギーが関係することもある

シナモンに関連した即時型の過敏反応やアナフィラキシーは、症例として報告されています。[3]

シナモンの香りに関係する成分のひとつに、シンナムアルデヒド(cinnamaldehyde)があります。

シンナムアルデヒドは接触アレルギーとの関連が知られており、2016年には、シナモンを含む香辛料食品による重い即時型過敏反応についての症例報告も発表されています。[3]

また、食物アレルギーでは、

  • じんましん
  • 口・唇・舌の違和感や腫れ
  • 吐き気
  • 嘔吐
  • 腹痛
  • 下痢
  • 咳や息苦しさ

など、皮膚症状だけでなく消化器症状や呼吸器症状が出ることがあります。[5]

そのため、

「シナモンを食べるたびに下痢や腹痛が起こるうえ、じんましんや口の違和感なども伴う」

という場合は、自己判断で繰り返し食べて確認するのではなく、医療機関へ相談してください。[5]

④ セイロンシナモンとカシアは何が違う?クマリンとは?

ここは聞き慣れない言葉が多いので、一つずつ説明します。

セイロンシナモンとは?

セイロンシナモンは、シナモンの種類のひとつです。

特徴のひとつが、クマリンの含有量が少ないことです。[1]

シナモンを日常的に多く使用する人に対して、BfR(ドイツ連邦リスク評価研究所)は、クマリン量の少ないセイロンシナモンを選ぶ方法を紹介しています。[1]

カシア系シナモンとは?

もうひとつが、一般にカシアシナモンと呼ばれる種類です。

カシア系シナモンは、セイロンシナモンと比べてクマリンを多く含む傾向があります。[1]

粉末になってしまうと、見た目だけでセイロンシナモンとカシアシナモンを区別するのは難しいとBfRは説明しています。[1]

頻繁に多く使う場合は、パッケージに「セイロンシナモン」など種類が明記されているかを確認する方法があります。

クマリンとは?

クマリンは、植物に自然に含まれる香り成分のひとつです。

シナモンだけに含まれる成分ではありませんが、カシア系シナモンには比較的多く含まれています。[1]

ここで大切なのは、

「クマリン=下痢を起こす成分」

と考えないことです。

クマリンで安全性上問題になるのは、主に肝臓への影響です。[1]

BfRによると、クマリンを医薬品として数週間使用した際、ごく一部の感受性の高い人で肝障害がみられたことがあります。

一方、BfRのFAQでは、シナモンを食品として摂取したことによる肝障害の症例は、その資料作成時点の科学文献では報告されていないとも説明されています。[1]

つまり、

「シナモンを少し食べただけで肝障害になる」

という意味ではありません。

一方で、クマリンを多く含むカシアシナモンを大量に、長期間摂り続ける場合には注意が必要です。[1]

TDIとは?

クマリンを考えるときに出てくるのが、TDI(耐容一日摂取量)です。

TDIとは、

「生涯にわたって毎日摂取しても、健康への悪影響が起こらないと考えられる1日あたりの量」

を意味します。

BfRでは、クマリンのTDIを、

体重1kgあたり0.1mg/日

としています。[1]

EFSA(欧州食品安全機関)も同じ値を示しています。[1]

たとえば体重60kgの成人なら、

0.1mg × 60kg = 6mg/日

となります。[1]

ただし、ここでいう6mgはシナモンの重量ではなく、クマリンそのものの量です。[1]

シナモンは1日何gまで?

ここは特に誤解しやすいところです。

BfRによると、調査されたカシアシナモンには、平均して約3,000mg/kgのクマリンが含まれていました。[1]

この平均値を使って計算すると、体重60kgの成人では、カシアシナモン約2g/日でクマリンのTDIに達する計算になります。[1]

ただし、

「カシアシナモンは1日2gまでなら安全」

という意味ではありません。

BfRのデータでは、カシアシナモンから最大10,000mg/kgのクマリンが検出された例もあります。[1]

もし10,000mg/kg含む製品なら、単純計算では体重60kgの成人で約0.6gでクマリン6mgに達します。

つまり、同じ「シナモン1g」でも、含まれるクマリン量には大きな差があります。

そのため、

「シナモンは1日○gまで」

という固定した数字だけで安全性を判断するのは適切ではありません。

なお、BfRは、TDIを1〜2週間程度わずかに超えたからといって、直ちに健康への危険が生じるわけではないとしています。[1]

日常的にたくさん使う場合は、シナモンの種類や使用量を確認することが大切です。

クマリンが下痢の原因なの?

ここは分けて考えることが大切です。

クマリンは、シナモンを食べたあとに起こる下痢の代表的な原因として説明される成分ではありません。

クマリンについて主に検討されているのは、

長期的に多く摂取した場合の肝臓への影響

です。[1]

一方、シナモンを食べたあとに下痢や腹痛が出た場合は、

  • シナモンをどのくらい摂ったか
  • 一緒に食べた食品
  • 食物アレルギー
  • 食中毒や感染症
  • ほかに服用している薬

なども含めて考えることが大切です。[2][5]

シナモンを食べて下痢したときの対処法

一時的な下痢で強い症状がない場合は、まずシナモンや原因と思われる食品の摂取をいったんやめ、様子をみます。

下痢では水分と電解質が失われるため、水分と電解質を補うことが大切です。[4]

また、

  • 何を食べたか
  • シナモンをどのくらい摂ったか
  • 食後どのくらいで症状が出たか
  • 一緒に食べたもの
  • 同じものを食べた人にも症状が出ていないか
  • じんましんや口の違和感、息苦しさなどがなかったか

を記録しておくと、原因を考える手がかりになります。

「シナモンを食べるたびに同じ症状が出る」という場合は、自己判断で少量ずつ食べて試すのではなく、医師に相談してください。[5]

こんな場合は医療機関へ

一時的な軟便で、その後すぐ改善する場合は自然に落ち着くこともあります。

ただし成人では、

  • 下痢が2日以上続く
  • 1日に6回以上のゆるい便がある
  • 嘔吐を繰り返す
  • 強い腹痛がある
  • 高い熱がある
  • 血便や黒い便がある
  • 脱水症状がある

といった場合には、医療機関へ相談してください。[2]

脱水のサインには、

  • 強いのどの渇き
  • 口の乾燥
  • 尿が少なくなる
  • だるさ
  • めまい・ふらつき
  • 尿の色が濃くなる

などがあります。[2]

シナモンを食べたあと、アレルギー症状が出た場合

食物アレルギーでは、下痢や腹痛だけでなく、皮膚・呼吸器・循環器など複数の症状が現れることがあります。[5]

特に、

  • 全身にじんましんが広がる
  • のどが腫れる、声がかすれる
  • 息苦しい、ゼーゼーする
  • 強い腹痛や嘔吐を繰り返す
  • ぐったりする
  • 意識がもうろうとする

などの症状が急速に現れた場合は、アナフィラキシーの可能性があります。[5]

アナフィラキシーは急速に進行して命に関わることがあるため、緊急性の高い症状がある場合は速やかに救急要請をしてください。[5]

まとめ|シナモンだけを下痢の原因と決めつけない

シナモンを食べたからといって、誰にでも下痢や腹痛が起こるわけではありません。

シナモンを食べたあとに症状が出た場合は、

  • どのくらい食べたか
  • シナモン入り食品のほかの材料
  • 食物アレルギー
  • 食中毒や感染症
  • ほかの原因

を一つずつ確認してみましょう。

また、シナモンにはセイロンシナモンとカシア系シナモンがあり、カシア系にはクマリンが比較的多く含まれます。[1]

ただし、クマリンは下痢の代表的な原因として考える成分ではありません。

クマリンについては、シナモンを食べた直後の下痢とは分けて、大量・長期摂取における肝臓への影響という観点から考えることが大切です。

「シナモンを食べるたびに下痢になる」という場合は、無理に食べて確かめず、何をどのくらい食べたときに症状が出るのかを記録し、必要に応じて医師へ相談しましょう。

参考文献・参考情報

[1] German Federal Institute for Risk Assessment(BfR).
FAQ on coumarin in cinnamon and other foods.
27 September 2012.
セイロンシナモンとカシアシナモンの違い、クマリン含量、TDI、肝臓への影響、シナモン摂取量の考え方について参照。
BfRの資料を確認する

[2] National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases(NIDDK).
Symptoms & Causes of Diarrhea.
急性下痢の原因、食物アレルギー・糖質の消化吸収との関係、脱水症状、成人で医療機関へ相談する目安について参照。
NIDDKの資料を確認する

[3] Jensen-Jarolim E, Roth-Walter F, Leitner E, Buchleitner S, Vogelsang H, Kinaciyan T.
Prime and boost aerosol exposure via fog machine or shisha smoke followed by cinnamon hypersensitivity and anaphylaxis to spiced food.
World Allergy Organ J. 2016;9:4.
DOI: 10.1186/s40413-016-0091-6
PMID: 26839630
PubMedで確認する

[4] National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases(NIDDK).
Treatment of Diarrhea.
下痢時の水分・電解質補給について参照。
NIDDKの資料を確認する

[5] アレルギーポータル.
食物アレルギー.
食物アレルギーによるじんましん、口・唇・舌の症状、腹痛、下痢、嘔吐、呼吸器症状、重症時の対応について参照。
アレルギーポータルで確認する

執筆・監修

箕浦雅子(薬剤師)
株式会社健将 代表取締役

薬剤師としての専門知識を基盤に、長年にわたり健康・食品分野に携わり、食品と体調との関係をはじめとする健康情報の発信を行っています。

株式会社健将は健康食品の企画・開発・販売も行っています。本サイトでは、公的機関・医学論文などを確認しながら、一般の方にも分かりやすい健康情報の提供に努めています。

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執筆者は株式会社健将の代表取締役であり、同社は健康食品の企画・開発・販売を行っています。

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本記事は、特定の食品・商品を批判または推奨することを目的としたものではなく、公的機関・医学論文等をもとに一般的な健康情報を提供することを目的としています。

※本記事は一般的な健康情報の提供を目的としたものであり、個別の診断・治療を指示するものではありません。症状が続く場合、アレルギーが疑われる場合、強い症状がある場合は、医療機関へご相談ください。