執筆・監修:箕浦雅子(薬剤師)|株式会社健将 代表取締役
「カップ焼きそばを食べるとお腹が痛くなる」
「食べたあとに決まって下痢になる」
そんな経験があると、カップ焼きそばにお腹を壊しやすい成分が入っているのではないかと気になるかもしれません。
「かんすいが原因なの?」
こうした噂を小耳にはさんでしまうこともあるでしょう。
結論からいうと、カップ焼きそばを食べた人すべてが下痢や腹痛になるわけではありません。
一方で、脂質の多い食事、食べる量、香辛料や濃い味付け、その日の胃腸の状態などが重なることで、下痢や腹痛が起こる人はいます。
また、
「かんすいが入っているから下痢になる」
と単純に考えることもできません。
この記事では、カップ焼きそばを食べたあとに下痢や腹痛が起こる場合に考えられる原因、かんすいとの関係、添加物についての考え方、対処法、受診の目安を解説します。
カップ焼きそばを食べると下痢になることはある?
あります。
ただし、
「カップ焼きそばそのものが下痢を起こす食品」
と決めつけるのではなく、
- 脂質の多さ
- 一度に食べた量
- 香辛料や調味料
- 食後に腸が動く反応
- 本人の体質
- その日の体調
- 一緒に食べたもの
などを分けて考えることが大切です。
同じカップ焼きそばを食べても、まったく症状が出ない人もいれば、お腹が重くなる人、腹痛や下痢が起こる人もいます。
カップ焼きそばでお腹を壊す原因として考えられること
脂質の多い食事が症状に関係することがある
カップ焼きそばには、油で揚げた麺を使う商品などがあります。
すべての商品が同じではありませんが、すでに下痢があるときには、高脂肪の食品が症状を悪化させることがあります。
NIDDK(米国国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所)も、急性下痢の際に症状を悪化させる可能性がある食品として、揚げ物やファストフードなど高脂肪の食品を挙げています。[1]
ただし、これは
「健康な人が高脂肪食品を食べると必ず新たに下痢になる」
という意味ではありません。
一方、ヒトを対象とした研究では、脂質を含む食事が大腸運動を活発にすることが報告されています。[3]
Rennyらの研究では、脂質を含む食事のあとにみられる胃結腸反射とコレシストキニンとの関係が調べられています。[3]
ただし、この研究もカップ焼きそばそのものを対象にした研究ではありません。
ここから言えるのは、
「脂質を含む食事は、大腸の動きに影響することがある」
ということであって、
「カップ焼きそばの油が必ず下痢を起こす」
ということではありません。
一度に食べる量が多いと症状が出やすいことがある
カップ焼きそばは、1食分を短時間で食べることが多い食品です。
もともと胃腸が敏感な人では、
「少量なら平気だけれど、1個全部食べるとお腹が痛くなる」
ということもあります。
この場合は、特定の添加物だけを疑うよりも、
食べた量と症状の関係
を見ることが手掛かりになります。
例えば、
- 半量ならどうか
- 早食いをしていないか
- 空腹時に一気に食べていないか
- 他の脂っこい食品でも同じ症状が出るか
などを確認すると、原因を整理しやすくなります。
食べてすぐ下痢になるなら「胃結腸反射」も考える
「カップ焼きそばを食べて10分、20分くらいで急にトイレに行きたくなる」
という場合、
今食べたカップ焼きそばが短時間で便になって出てきたわけではありません。
食べ物が胃に入ることをきっかけに、大腸の運動が活発になる反応があります。
これを胃結腸反射と呼びます。
Snapeらは、食後に大腸運動が活発になる胃結腸反射について、ヒトを対象にその神経学的な仕組みを検討しています。[2]
また、脂質を含む食事では、この反応が強くみられることがあることも報告されています。[3]
そのため、
「食べてすぐ下痢になった=今食べたカップ焼きそばだけが原因」
とは限りません。
もともと腸内にあった便が、食事をきっかけに押し出された可能性もあります。
香辛料や濃い味付けが合わない人もいる
カップ焼きそばには、商品によってソース、香辛料、油脂などさまざまな原材料が使われています。
「辛い商品だけお腹が痛くなる」
「特定の味だけ下痢になる」
という場合は、すべてのカップ焼きそばを一括りにせず、商品ごとの原材料を比較してみましょう。
同じ「カップ焼きそば」という名前でも、商品の設計は同じではありません。
「かんすい」が下痢の原因なの?
厚生労働省の通知では、かんすいは中華めん類の製造に使用されるアルカリ剤として扱われています。[4]
また、かんすいには、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸類のカリウム塩・ナトリウム塩などが用いられます。[4]
さらに、「食品、添加物等の規格基準」では、かんすいについて成分規格などが定められています。[5]
したがって、
「かんすい入りだから下痢になる」
「麺にアルカリ成分が残るから危険」
と一般化することは適切ではありません。
医薬品のリン酸塩と、食品中のかんすいは同じように考えない
かんすいに用いられる一部のリン酸塩は、医薬品として別の目的で使用されることもあります。
ただし、
食品添加物として使用される場合と、医薬品として使用される場合では、目的、製剤、摂取量が異なります。
そのため、医薬品としての作用をそのまま食品中のかんすいに当てはめることはできません。
この記事では、食品として通常使用されているかんすいについて、
「医薬品にも使われる成分だから危険」
とも、
「絶対に症状と無関係」
とも断定しません。
特定の商品を食べたときだけ毎回症状が出る場合は、その商品の原材料を確認することが手掛かりになります。
添加物が多いから下痢になるの?
結論から言うと、
入っている添加物の数が多いことだけを理由に、下痢の原因と判断することはできません。
厚生労働省は食品添加物について、食品安全委員会による安全性評価を受けたうえで、人の健康を損なうおそれがないと認められたものについて、必要に応じて使用基準や成分規格を定めて使用を認めています。[6]
つまり、
「加工食品だから危険」
「添加物が多いから下痢になる」
という単純な説明は適切ではありません。
一方で、特定の商品を食べたあとに毎回同じ症状が出るのであれば、商品ごとの原材料を確認することには意味があります。
重要なのは、
添加物の数ではなく、何をどのくらい摂取したときに症状が出るか
を見ることです。
カップ焼きそばを食べるたびに下痢になる場合は?
一度だけなら、その日の体調や別の食事が影響していた可能性もあります。
一方で、
「毎回カップ焼きそばを食べると下痢になる」
「特定の商品だけ腹痛がする」
「量が多いほど症状が強い」
という場合は、条件を分けて考えてみましょう。
脂っこい食品全般で下痢になる
揚げ物、ラーメン、ピザなど、ほかの高脂肪食品でも同じ症状が出るか確認します。
カップ焼きそばだけ症状が出る
商品の原材料、量、香辛料、油脂などの違いを確認します。
少量なら平気だが1個食べると症状が出る
食べる量との関係が手掛かりになります。
カップ焼きそばを食べていない日にも下痢になる
この場合は、カップ焼きそば以外の原因も考える必要があります。
カップ焼きそばで下痢になったときの対処法
いったん食べるのをやめる
症状が出た場合は、一度その食品の摂取を中止します。
「本当にこれが原因か」を確かめるために、再び大量に食べる必要はありません。
水分を補給する
下痢では、水分や電解質を失います。
「下痢だから水分を控える」という対応は適切ではありません。
少量ずつでも水分を取り、下痢が多い場合は水分と電解質の補給を意識します。
食べたものと症状を記録する
症状を繰り返す場合は、
- 商品名
- 食べた量
- 食べた時間
- 症状が出た時間
- 一緒に食べたもの
- その日の体調
などを記録すると原因を整理しやすくなります。
NIDDKも、慢性的な下痢などでは食事と症状の記録が、症状に関係する食品を探す手掛かりになるとしています。[1]
カップ焼きそば以外の原因も考える
下痢や腹痛には、さまざまな原因があります。
例えば、
- ウイルスや細菌による胃腸炎
- 食中毒
- 食品不耐症
- 過敏性腸症候群
- 薬の副作用
- その他の消化器疾患
などです。[7]
そのため、
「直前にカップ焼きそばを食べた」
という事実だけで、原因を断定することはできません。
カップ焼きそばを食べていないときにも下痢を繰り返している場合は、別の原因を考える必要があります。
こんな症状がある場合は医療機関へ
一度軟便になった程度で、その後症状が落ち着き、体調も普段どおりであれば、経過をみられることもあります。
一方で、次のような症状がある場合は医療機関へ相談してください。
- 血便がある
- 黒い便が出る
- 強い腹痛がある
- 高熱がある
- 嘔吐を繰り返す
- 水分が十分に取れない
- 尿が極端に少ないなど脱水が疑われる
- 下痢が続いている
- 体重が減っている
- カップ焼きそばをやめても症状が続く
特に、強い症状や脱水が疑われる場合には、長く様子をみないことが大切です。
まとめ|カップ焼きそばで下痢になる原因を「かんすい」だけに決めつけない
カップ焼きそばを食べたあとに下痢や腹痛が起こることはあります。
しかし、
「カップ焼きそばだから下痢になる」
「かんすいが入っているから下痢になる」
と単純に決めることはできません。
考えられるのは、
- 脂質の多い食事
- 食べる量
- 食後の胃結腸反射
- 香辛料や調味料
- 商品ごとの違い
- 本人の体質
- その日の胃腸の状態
- カップ焼きそば以外の原因
などです。
かんすいについては、厚生労働省の通知で中華めん類製造に使用されるアルカリ剤として定義され、規格基準も設けられています。[4][5]
また、食品添加物についても、安全性評価や使用基準・成分規格の仕組みが設けられています。[6]
そのため、
「かんすいだから危険」
「添加物が多いから下痢になる」
と一括りにするのではなく、自分がどの商品をどのくらい食べたときに症状が出るのかを確認することが大切です。
そして、食べていないときにも下痢が続く場合や、血便・黒い便・高熱・強い腹痛などがある場合は、別の原因も考えて医療機関へ相談してください。
参考文献・参考情報
[1] National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases(NIDDK)
Eating, Diet, & Nutrition for Diarrhea.
急性下痢の際に高脂肪食品が症状を悪化させる可能性、食事と症状の記録について参照。
NIDDKの原文を確認する
[2] Snape WJ Jr, Wright SH, Battle WM, Cohen S.
The gastrocolic response: evidence for a neural mechanism.
Gastroenterology. 1979;77(6):1235-1240.
PMID:583043
PubMedで確認する
[3] Renny A, Snape WJ Jr, Sun EA, London R, Cohen S.
Role of cholecystokinin in the gastrocolonic response to a fat meal.
Gastroenterology. 1983;85(1):17-21.
DOI:10.1016/S0016-5085(83)80223-6
PMID:6303889
PubMedで確認する
[4] 厚生省
「食品衛生法に基づく添加物の表示等について」
平成8年5月23日 衛化第56号。
かんすいの定義、中華めん類に使用されるアルカリ剤の範囲について参照。
厚生労働省の原文を確認する
[5] 厚生省
「食品、添加物等の規格基準」
昭和34年12月28日 厚生省告示第370号。
かんすいの成分規格等について参照。
厚生労働省の原文を確認する
[6] 厚生労働省
「食品添加物」
食品添加物の指定、安全性評価、使用基準、成分規格の仕組みについて参照。
厚生労働省「食品添加物」を確認する
[7] National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases(NIDDK)
Symptoms & Causes of Diarrhea.
下痢の原因、食品不耐症、消化器疾患などについて参照。
NIDDKの原文を確認する
執筆・監修
箕浦雅子(薬剤師)
株式会社健将 代表取締役。
薬剤師としての専門知識を基盤に、長年にわたり健康・食品分野に携わり、腸内環境や納豆菌をはじめとする健康情報の発信を行っています。
株式会社健将は健康食品の企画・開発・販売も行っています。本サイトでは、健康や身体に関する一般的な情報について、公的機関・学会・医学論文などを確認しながら、できる限り正確で分かりやすい情報提供に努めています。
利益相反(COI)について
執筆者は株式会社健将の代表取締役であり、同社は健康食品の企画・開発・販売を行っています。
本記事は、特定商品の販売・批判・推奨を目的としたものではなく、公的機関、医学論文等をもとに一般的な健康情報を提供することを目的としています。
※本記事は一般的な健康情報の提供を目的としたものであり、個別の診断・治療を目的とするものではありません。症状が続く場合や気になる症状がある場合は、医療機関へご相談ください。
