下痢の原因が油だったということはよくあります。油は劣化して、毒に変化していくので怖いのです。
例えば油で揚げたドーナツも下痢の原因となることがあります。ではドーナツがなぜ下痢の原因となるのかご一緒に考えてみましょう。
ドーナツが下痢になった理由
ドーナツを買って、常温で5日間位そのままにしていたのを思い出して、食べたところ下痢になった人がいます。
梅雨時でしたが、賞味期限はきれているものの、見た目に、カビも生えていないし、色も変わっていないので食べたようです。
しかし、カビも生えていないし、生地の食感は普通、粉砂糖も普通の甘味、いったい何が問題だったのでしょうか?それはドーナツに染み込んでいた油の劣化が原因だったようです。
下痢の原因となる油の劣化
油の劣化は油が酸化して起こります。「油の酸化」とは、光や熱、酸素と油が結合して起こす反応のことです。
酸化した油は過酸化脂質を生じます。油の脂肪酸に二重結合を有する不飽和脂肪酸と酸素の反応によって過酸化脂質を形成し、さらにその酸化分解により、二次生成物であるアルデヒド、ケトン、アルカン、アルケンなどが生成されます。
さらに反応が進むと重合体、エポキシド、低級脂肪酸となり劣化が進行してゆきます。
分解された物質同士が結合すると、分子量の大きな重合物と呼ばれる化合物になり、これらの物質が、油の色が悪くしたり、粘りや嫌なニオイを出すのです。
ここで生成される過酸化脂質やアルデヒドなどのカルボニル化合物には、毒性を有するものがあります。微生物関連(食中毒菌)の食中毒より事例は少ないですが、それらによる下痢や腹痛、吐き気などが発生します。
ですから、日にちの経ったドーナツも油による毒が発生し、下痢になったと考えられます。
油が酸化すると良くない理由
油が酸化すると劣化したり、粘りが出たり、下痢になることがあります。他にどのようなことが出てくるでしょうか。
①料理の風味を損なう
天ぷらやフライなどの揚げ物料理は、カラリと軽やかに揚がっていてこそ美味しいものです。
しかし酸化した油で調理をすると、こってりと油っこくなりやすく、カラッと揚げるのが難しくなります。また、油の色が悪くなったり、粘りや、油の匂いも悪くなり、料理の仕上がりに影響します。
②食中毒を引き起こす原因に
揚げ物を食べた後、お腹が痛くなったり、胸焼けがしたりといった経験がある方もおられると思います。これは酸化した油が原因の場合がしばしばあります。
ひどいときは食中毒症状を起こすことも。なお、油の酸化は揚げる油だけでなく、調理済みの揚げ物でも起こります。そのため、油で揚げた即席麺、菓子類、惣菜などの商品は、流通する際に酸化の程度について法的な基準があるほどです。
家庭でも、揚げ油だけでなく、残った揚げ物は早めに食べるなどの注意が必要です。
③多量に摂取した場合は、健康を損ねる可能性も
酸化した油を多少摂取しても、体内には毒素の分解機能があるため、すぐに体に影響がある訳ではありません。しかし多量に摂取すれば、内臓への負担や健康を損ねるさまざまな病気の原因となる可能性もあります。腸内での毒素分解機能が正常に行われるには腸内環境が良好であることが重要です。
酸化した油の食中毒例
①マウスの実験例
マウスの経口投与試験において、過酸化物が生体内の酵素を不活性化し、血球の破壊、肝臓、腎臓、肺の肥大化、各組織の細胞変性、壊死等を引き起こしたことが報告されています。
過酸化脂質自体は、腸管からの吸収がされにくいため、腸管内壁を傷つけることで下痢や腹痛を引き起こすのです。
②1964年の即席めんの例
劣化食用油脂による最も大きな食中毒事件は、1964年6月から8月にかけて発生した「即席めん」による食中毒があります。この事件では、大阪府、京都府等の関西地域、静岡県や長野県の広域において69名が下痢、吐き気、嘔吐、腹痛などの症状を発症しました。
原因は直射日光が当たるなどの極めて好ましくない保管状況だったとわかりました。
③2009年の即席めんの例
2009年仙台市衛生研究所報によると、即席めんの摂取によるとみられる吐き気、腹痛、下痢、発疹の症例の報告がありました。
この原因調査においては、酸価、過酸化物価による値には問題がないため原因が不明でしたが、酸価や過酸化物価が低値であっても二次生成物が多く生成している場合があるため、アルデヒド量を示すカルボニル価等も把握する必要があるとのことでした。
酸化した油の見分け方
酸化した油は料理の味を損なうばかりか、身体に悪い影響が出ます。油が酸化しているかどうかはどのように見分ければいいのでしょうか?
①色が濃くなる
最初は透き通った色の油も、酸化が進むと濃くなってきます。油の色が黒っぽく、濃くなってきた油は、揚げた食材が黒くなってしまいやすく、仕上がりにも影響します。鍋の底が見えない程に黒くなった油は交換しましょう。
②嫌なニオイがしてくる
ごま油やオリーブオイルなどを除く多くの植物性の油は、新鮮なときは無味・無臭ですが、揚げ物や炒め物で使用することで風味が生まれます。
多少の油の風味はおいしさにつながりますが、油臭いと感じるほどのニオイは料理の仕上がりにも影響を与えます。嫌なニオイ(=変敗臭)は酸化が進んでいるととらえ、交換の目安としましょう。
③泡が出る
揚げ物をしたときに泡が立ち、消えない場合は酸化が進んでいます。熱した油に食材を入れると水分が出てくるため、パチパチと気泡が生じますが、酸化が進んでいるときに出る泡はこの泡とは違い、細かく泡立ち鍋から消えません。
③粘りが出る
植物性の油はサラサラとしています。酸化によって油の分解が進むと、先述した通り、油はどろりと粘りが出てきます。保管していた油を鍋に移すとき、粘度がある場合は酸化が進んでいるので交換しましょう。
油の酸化を防ぐためには?
できるだけ防ぎたい油の酸化。油が酸化する要因には、空気・光・熱があるとお伝えしました。これらに触れないようにすることで油が酸化しにくくなります。
①空気に触れないようにする
油を保管する際は、なるべく空気に触れさせないようにします。揚げ物をした後に保管する容器は、間口が狭く空気に触れにくいものに入れて蓋をしっかり閉めましょう。容器内の酸素とも反応するので、なるべく口までいっぱいに入れられる容器が良いでしょう。
②光にあたらないようにする
油の酸化は太陽の光だけでなく、蛍光灯の光でも進みます。直射日光を避けることはもちろん、電気があたらない暗い場所に保管しましょう。
③熱を避ける
保管の際は涼しいところに。使い勝手の良さからコンロの横に置いているという方はいませんか?コンロ周りは特に温度が上がりやすい場所なので、おすすめできません。
なお、一度使った油を鍋の中に放置しておくのは、空気にあたる面積が広かったり、光を浴びやすかったりするので、とても油の酸化が進みやすい状況です。温度がある程度下がったら素早く濾(こ)して冷まし、保存容器に移しましょう。
④油が酸化する期間は
油の酸化の程度は、保存状態や使用状況により大きく変わります。油の状態をみて、色やニオイなどに問題が無ければ、2〜3回を目安に使うのが良いでしょう。
しかし揚げ物のように、鍋に油を注ぎ(空気・光に触れる)、高温で加熱される食材を調理するのは、油の酸化が進みやすくなる条件がそろった状況であるということです。
その上、揚げた食材から溶け出した成分によっても、油の劣化が進みます。使用後は適切に保存し、早めに使い切った方が安心でしょう。
⑤酸化しにくい油はある?
油の組成の違いから、酸化しにくい油としてよく知られているものにオリーブオイルがあります。また、抗酸化作用をもつ成分を含む、ごま油や米糠油(こめぬかあぶら)も酸化しにくい油といわれています。
なお健康志向の高まりから近年話題の亜麻仁油やえごま油は、酸化しやすい油のため、加熱調理には向きません。
⑥酸化した油に使い道はある?
酸化した油に特に使い道はありません。先ほど紹介したように、色やニオイが変わったり粘りが出たりと酸化してしまった油は、正しい方法で廃棄しましょう。
揚げ物に1回使った程度では廃棄するほどには劣化しないともいわれていますが、その後の保管方法や次に使うまでの期間の長さで、酸化が進んでしまうこともあります。
揚げ油に何度か使う場合には、酸化した油の見分け方を参考に、よく油を観察してみてください。
また、まだ使用していなくても、一度開封した油は空気に触れ徐々に酸化していきます。開封後の使い切り目安は商品のパッケージに書いてあることも多いので、よく確認し、保管方法に気をつけて早めに使いましょう。
まとめ
即席めん類、油脂で処理した菓子、洋生菓子などの酸化は、食品の風味や栄養価値を損ねるだけでなく健康被害も引き起こします。油脂が過度に酸化した食品を摂取すると、吐き気や嘔吐、下痢などの中毒症状を引き起こす可能性があります。
賞味期限やお店の陳列状態、また家庭での保管場所に注意しましょう。賞味期限ぎりぎりだからとか、少し過ぎていても使用できると思わず、出来るだけ新しい物を食べましょう。
酸化してしなくても油菓子(例えばドーナツ、ポテトチップス等)は頻繁に食べるのを避けましょう。
腸内環境を整えましょう
「元気の元は胃腸から」と昔から言われています。腸は私たちが食べた物を消化・吸収し、それを生かすために働いてくれるとても重要な臓器です。
ですから、少しくらい有害な物を食べても、腸内で処理して無毒化できます。それも腸内環境が整っている時のことです。
下痢を頻繁に起こす方、慢性的な下痢で悩んでおられる方、早急に腸内環境を整えましょう。
腸内環境を整えるサプリメントがありますので、上手に利用すると、下痢の改善は早くなります。