下痢の原因は脳と腸の関係から
急な下痢、慢性的な下痢は仕事や学校生活に影響します。こうしたおなかに弱い人は毎日が辛い日々を過されているのではないでしょうか。
ストレスを感じているときには下痢になりやすくなるし、授業や仕事での集中力も下がり気味になります。こうした状況は案外、脳と腸の関係が原因となっていることが多々あるようです。
ではどのように関係しているのでしょうか。
下痢を起こす脳腸セットの関係
ある人はカウンセリングを受け、食生活の改善によって不調が軽減し、「会社に行くのが本当に楽になった!」と言われる人もいます。 また、日常生活では問題がなくても、「旅行に行くと便秘になる」「緊張するとお腹が痛くなる、下痢になる」という経験をされた方もいます。
前者は、慣れない空間でストレスを感じ、交感神経が優位になりすぎて腸の動きが低下し便秘に、後者は、なんとか落ち着こうと副交感神経が優位になりすぎて腸の動きが活発になって下痢になってしまうのです。
このようにストレスとお腹の調子は何かと関係が深く、脳と腸に相関関係があることは、度々指摘されてきました。脳のストレスは腸への影響を及ぼしますが、それは一方通行というわけではありません。双方に影響を受け合うからこそ、脳と腸の健康をセットで考える必要があるのです。
脳へのストレスをコントロールするのは難しいです。腸へのアプローチは自分の意志で出来ます。腸の不調は簡単に崩れますが、逆に簡単に腸は回復するのです。
最初はストレスで始まったお腹の不調が、お腹の不調によってさらにストレスを加速させるという悪循環にならないためにも、脳と腸は繋がっており、下痢は脳腸セットで改善しましょう。
腸は第2の脳
腸は「第2の脳」とも呼ばれる独自の神経ネットワークを持っています。脳からの指令が無くても独立しています。
例えば、ストレスを感じるとお腹が痛くなり、便意をもよおしす人がいます。これは脳が自律神経を介して、腸にストレスの刺激を伝えるからです。逆に、腸に病原菌が感染すると、感脳で不安が増します。また脳で感じる食欲にも、消化管から放出されるホルモンが関与することがわかっています。
これらは、腸の状態が脳の機能にも影響を及ぼすことを意味しています。このように密接に関連している脳と腸ですが、最近では、病原菌だけでなく腸内細菌も脳の機能に影響を及ぼす、「脳と腸と微生物相関」という研究報告があります。
脳と腸と腸内細菌の関係とは
脳と腸は、常に情報を交換し合い、互いに影響を及ぼし合う関係にあります。この関係を「脳腸相関」といいますが、近年、脳腸相関に腸内細菌が関与していることが分かってきました。
腸内細菌を持たない無菌マウスを使った実験で、脳腸相関における腸内細菌の関わりが世界で注目されたことがきっかけです。この研究で、無菌マウスは腸内細菌を持つ通常マウスに比べ、ストレスに対して過敏であること、脳の神経系を成長させるための因子が少ないことなどが分かりました。
その後、無菌マウスに通常の腸内細菌を移植すると多動や不安行動が正常化するという報告もされています。
つまり、腸内細菌はストレスの感じ方や脳の神経系の発達・成長、そして行動に関わる存在であることが示されたのです。
腸内細菌は一つの臓器とも言われていますので、脳と腸、腸内細菌、この関係は切っても切り離せないものになっています。今や腸内細菌は絶対に無視できない存在となり、私達の健康にはなくいてはならないものと言えます。下痢になりやすい人や慢性的な下痢の人はこの関係のバランスが崩れているからだと言えます。
腸は単なる消化器官ではない
腸は、食べ物を消化して、栄養素を吸収する場所、有害菌の抑制、解毒・排出などを行う消化器官として知られています。ところが、近年、腸は消化器官としての役割に加え、「免疫系」、「ホルモンの分泌」、「神経系」の働きが発達している重要な器官であることが明らかになっています。
腸の重要な他の役割
①腸は人体最大の免疫器官
私たちの消化管は口から肛門までひと続きの筒状、例えば竹輪の様なものです。腸は体の中にありますが、その内側は外界にさらされ、実は内なる外と言えます。
そのため、腸は食べ物だけでなく、細菌やウイルスなどのさまざまな病原体と常に接する場所になっています。それで様々な有害菌に対応でき、処理できるようになっています。それが、免疫系です。腸には体全体の半数以上の免疫細胞が存在し、腸管免疫系という独自の免疫系が発達していることから、人体最大の免疫器官とも言われています。
②ホルモンの分泌
私たちの体内では、体の様々な働きを調節するホルモンが分泌されています。これらのホルモンの働きで、体に何らかの変化が起きても、体の働きが常に同じになるように保たれています。
腸には、このホルモンを分泌する腸管内分泌細胞という細胞が存在していて、内分泌器官としての役割も担っています。
例えば、おなかが空くと、腸から分泌される食欲を促すホルモンが「空腹だから何か食べて」という信号を脳に伝えることで起こるのです。
③腸独自で考え活動する神経系の働き
腸には、脳と同じように、入ってきた情報の処理と処理した情報を伝達する役割を担う神経細胞が存在しています。その数は脳や脊髄に次いで多く、さまざまな種類の神経細胞が存在しています。
腸のこの神経細胞は網のように広がり、腸管神経系と言われる独自の神経ネットワークが発達しています。この神経を迷走神経と言い、腸から脳への情報量は脳から腸よりも多いと考えられています。
そのため、脳の指令が無くても自分で考えて、自分で活動することができているのです。脳と同じように外部からの情報を処理し、伝達でき、情報を交換しています。つまり言い換えると、まるでお互いに対話をしている様な感じなのです。
さらに最新の研究では、この腸から脳に送られる情報に、腸にすみつく微生物の存在が大きく影響を与えることも明らかになっているようです。
下痢になる過敏性腸症候群(ISB)の原因は脳腸関係
脳腸相関の悪循環にも腸内細菌が関与しているようです。ストレスが強くなると下痢や便秘の症状が悪化するという特徴から、ストレス関連疾患として知られている過敏性腸症候群は、腸に問題となる異常がないにもかかわらず、腹痛や腹部の不快感が続き、習慣的に便秘や下痢などの便通異常を繰り返す機能的な消化管疾患で、日本の人口の約1~2割に見られるなど、決して珍しい病気ではありません。
なぜストレスによってこの病気が悪化するのか、長い間原因が分かっていませんでしたが、IBS患者では、脳が不安やストレスを感じると、その信号が伝わりやすく、腸が過剰に反応し、痛みを敏感に感じ取りやすい(知覚過敏)こと、そして、その刺激が脳に伝わり、苦痛や不安感が増すことが確認され、IBSは脳腸相関の悪循環によって起こっていることが分かってきたのです。
さらに、この脳腸相関の悪循環を生み出す原因は、感染性の腸炎がきっかけとなる事があるようです。このことから腸内細菌が大きく関与している可能性があることがわかってきました。
脳腸相関に関わる腸内細菌はどのように脳に情報を送っているのか
最近の研究では腸内細菌の脳への影響のメカニズムには腸内細菌が腸管神経系と言われる独自の神経ネットワーク「迷走神経」を刺激し、脳に影響を及ぼしていることが分かってきました。
「迷走神経」は、脳と腸を結ぶ神経で脳と腸が情報を交換するルートの一つです。腸内細菌から脳への情報伝達も、この「迷走神経」を介していると考えられています。心の不調を感じている人は腸内細菌のバランスが崩れ、悪玉菌が多いようです。
ですから、ストレスなどで心の不調を感じ、下痢になるなど悪循環に陥っている人たちには腸内善玉菌を増やすプロバイオティクスを摂り入れ、腸内フローラのバランスを整えると改善されるようです。
下痢が改善されるプロバイオティクスの可能性
ストレスによる心身の不調は、過敏性腸症候群の人に限らず、健康な人にも日常的に起こります。こうしたストレスによる不調を解き明かす鍵として、脳-腸-腸内細菌相関が注目されるようになってきました。
例えば、健康な人に起こりうるストレスがかかる状況、重要な会議で説明をする、習っている楽器の演奏会で発表するなど、期日に向けた準備の中で、焦りや不安といった一時的な精神的ストレスを感じる場面に遭遇したことがあると思います。
ここぞという場面で、一時的なストレスによる心身の不調によって自分の力が発揮できず、体の不調が出てしまうと、情けなくなりますね。こうした状況を改善する可能性を持っているのがプロバイオティクスなのです。
プロバイオティクスというのは、人間や動物の体にいい働きをする生きた微生物のことです。例えば、乳酸菌とかビフィズス菌が体にいいと言われていますが、こういった菌をまとめてプロバイオティクス(腸内善玉菌)といいます。
腸内善玉菌を増やし腸内フローラのバランスを整えよう
善玉菌を増やして、日和見菌を味方につけなければ腸内フローラのバランスは良くなりません。では善玉菌を増やすにはどうすればよいのか5つのポイントを考えてみましょう。
①高脂質・高カロリーの食事を避ける
避けるべきなのは、高脂質、高カロリーの偏った食事。お腹の調子が気になって、通勤前の朝や日中仕事している間にあまり食べない分、夜、自宅に戻って一安心してからは味の濃いものやお腹を満たすものを一気食いはよくありません。
腸内環境を左右する腸内細菌の状態は、食事によって左右されます。発酵食品や野菜、果物が中心のいわゆる健康的な食事をしていれば善玉菌が増え、ジャンクフードなど高脂質、高カロリーの食事が続けば悪玉菌が増えます。
完璧を目指さなくてもよいので、今よりも“脂っこさ”を減らして、野菜や海藻など、少しでも多くの食材を取れるような選択を心がけましょう。たとえば、ラーメンよりごはんもの、揚げ物より焼き物、牛丼より野菜がとれる豚のショウガ焼き定食…といったものを選びましょう。
②善玉菌は種類を多く摂る
善玉菌を増やし、腸内環境に良いとされているものの1つにヨーグルトや味噌などがありますが、善玉菌の数が多ければよいわけではなく、善玉菌の「種類」が豊富にあることも大事なポイントです。本物の乳酸菌たっぷりの漬物、大豆納豆など色々な善玉菌の種類のものを少しでも良いので毎日摂り入れましょう。
③肉より魚を選ぶ
腸の炎症を抑え、善玉菌が増えやすい環境をつくってくれるEPAとDHAはブリ、サバ、カツオ、イワシ、サンマなど青魚に多く含まれています。また、これらはうつなどの精神状態の改善や脳細胞を活性化します。
④硬水よりも軟水を、飲み物は常水を選ぶ
また、手軽なところでは、飲み物にも気をつけましょう。冷たい飲み物を飲みすぎると便の水分量が多くなり、下痢や軟便になります。しかし、下痢が続く場合には、便とともに失われた水分の補給も必要です。スープやおみそ汁など、温かい汁物を食事にプラスするのがよいでしょう。
オフィスで温かい飲み物を飲もうとすると、コーヒーなどカフェイン入りのものになってしまいがちですが、常温のお水をおいておくなどして、できるだけ刺激の強い飲料は控えましょう。アルコールや炭酸飲料出来れば避けましょう。
水にこだわるというのも1つの策です。お腹が弱く、下痢気味な方は、硬水よりも軟水を選びましょう。硬水はミネラル分が多いので体に良いように思いますが、胃腸への負担を減らすなら軟水の方がおすすめです。
又、水を選ぶなら、より自然に近い上質な水を選びましょう。今は機能性の高い浄水器がありますので簡単に手に入れることが出来ます。
⑤空腹時間をつくる
腸は、食べているときだけ動いているわけではなく、食後4時間ほどたって空腹を感じるくらいの時間にも腸をきれいになる様に働いています。そのため、ダラダラ食は改め、間食もできるだけ避けて、きちんと「空腹時間」をつくり、きちんと腸の掃除をすることも大事なのです。
汚れた腸では悪玉菌が増える原因にもなります。食事内容だけではなく、食べ方や食事間隔も大事な要素なのです。しかし、下痢の時には吸収されない栄養素も排出されてしまいますので、栄養不足による疲労感を感じるなら、間食にはおにぎりなどが良いでしょう。甘い物はよくありません。
1ヵ月以上下痢が続いて慢性的なものになっているなど、日常生活に支障が出ている場合は、病院できちんと見てもらうことも大切です。
腸内環境も、加齢とともにバランスが乱れてきます。下痢や便秘になるなど、便の状態が変わったら、食べ物の見直すチャンスだと思って、日頃の食事を振り返ってみましょう。
すぐに始められる腸内環境を強化しよう
脳と腸と腸内細菌の関係がわかりました。腸内細菌も一つの臓器ですから、腸内細菌は常に変化しますので積極的に腸内細菌が特に善玉菌が喜ぶ食事をしましょう。
腸内善玉菌が多くて元気なら、脳も心地良くなり脳の心地よさが腸に伝わり、腸も喜びます。脳と腸それに腸内細菌と強化すると、ストレスもなくなり、下痢もすぐに改善されます。
食事から難しいと思われる人は腸内善玉菌を強化するサプリメントがありますので、上手に利用しましょう。