執筆・監修:箕浦雅子(薬剤師)|株式会社健将 代表取締役
「目玉焼きを食べるとお腹が痛くなる」
「卵を食べると下痢になるのはなぜ?」
「半熟の目玉焼きだったけれど、食中毒の可能性はある?」
このように気になる方もいるでしょう。
結論からいうと、目玉焼きそのものが下痢や腹痛を起こす食品とは限りません。
目玉焼きを食べたあとにお腹の調子が悪くなった場合には、
- 調理に使った油や脂質
- 一緒に食べた食品
- 食後に起こる胃結腸反射
- 卵に対するアレルギー
- その日の胃腸の状態
- 半熟・加熱不足による食中毒
など、複数の可能性を分けて考える必要があります。
特に、半熟や加熱が不十分な卵ではサルモネラによる食中毒にも注意が必要です。農林水産省は、加熱不足の卵料理として生卵やオムレツなどを原因になりやすい食品の例として挙げています。[2]
この記事では、「目玉焼きを食べるとなぜ下痢・腹痛が起こるのか」を、調理法、油、胃結腸反射、アレルギー、食中毒の観点から整理して解説します。
目玉焼きを食べて下痢・腹痛になるときに考えられること

1.調理に使った油や脂質が関係している
目玉焼きは、フライパンに油やバターを使って調理することがあります。
そのため、
「卵そのものではなく、調理に使った脂質が関係している」
可能性も考えられます。
特に、
- 油を多めに使った目玉焼き
- ベーコンやソーセージと一緒に食べた
- 朝から脂っこい料理を多く食べた
- 揚げ物などでも同じようにお腹がゆるくなる
という場合は、卵だけを原因と考えない方がよいでしょう。
NIDDK(米国国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所)は、下痢があるときに症状を悪化させる可能性のある食品として、高脂肪食品などを挙げています。[1]
ただし、これは、
「脂っこいものを食べれば健康な人でも必ず下痢になる」
という意味ではありません。
2.目玉焼きと一緒に食べたものが関係している
朝食で目玉焼きを食べる場合、
- 牛乳
- コーヒー
- パン
- バター
- ベーコン
- ソーセージ
- 辛い調味料
など、さまざまな食品を一緒に摂ることがあります。
そのため、
「目玉焼きを食べたあとに下痢した=卵が原因」
とは限りません。
以前は平気だった目玉焼きで急に症状が出た場合には、卵以外に何を一緒に食べたかも振り返ってみましょう。
食べてすぐ下痢したのは、目玉焼きがそのまま出たから?
目玉焼きを食べた直後に便意や下痢が起こると、
「さっき食べた目玉焼きが、もう出てきたのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、通常は今食べたものが数十分でそのまま便として排出されるわけではありません。
食事をすると胃が刺激され、その刺激によって大腸の動きが活発になる「胃結腸反射」が起こることがあります。
そのため、食後すぐに便意が起きた場合は、今食べた目玉焼きそのものが直ちに下痢になったというより、食事をきっかけに、すでに大腸にあった内容物が押し出された可能性も考えられます。
特に、
- 朝食後にトイレへ行きたくなりやすい
- 食事をすると毎回便意が起きる
- コーヒーなどでも同じことが起こる
という場合には、胃結腸反射が関係している可能性があります。
ただし、食後すぐに症状が出たからといって、卵との関係を完全に否定できるわけではありません。
毎回卵を食べたときだけ症状が出る場合や、じんましん・吐き気などほかの症状も伴う場合は、別の原因も考える必要があります。
卵アレルギーで腹痛・下痢が出ることはある?
あります。
食物アレルギーは、食物に含まれるたんぱく質などを身体が異物として認識し、免疫反応によって症状が起こるものです。
食物アレルギーでは皮膚症状だけでなく、腹痛、嘔吐、下痢などの消化器症状が起こることがあります。[3][4]
鶏卵アレルギーでは、卵黄よりも卵白に含まれるたんぱく質が原因となることが多いとされています。[3]
ただし、
「卵を食べて下痢したから卵アレルギー」
と自己判断することはできません。
食物アレルギーでは、
- じんましん
- 皮膚のかゆみ
- 唇や口の腫れ
- 咳
- 呼吸しづらい
- 嘔吐
- 腹痛
- 下痢
など、複数の症状が出る場合があります。
卵を食べるたびに同じ症状が出る、皮膚症状や呼吸器症状も伴うといった場合は、医療機関に相談してください。
半熟の目玉焼きで下痢したら食中毒?
必ずしも食中毒とは限りません。
ただし、加熱が不十分な卵ではサルモネラ食中毒を考える必要があります。
農林水産省によると、サルモネラは加熱不足の卵・肉・魚料理などが原因になりやすく、生卵やオムレツなども具体例として挙げられています。[2]
厚生労働省も、食中毒予防の基本として、
食材の中心部まで75℃で1分以上加熱すること
を示しています。[5]
そのため、目玉焼きでも、
- 白身が十分に固まっていない
- 黄身がかなり生に近い
- 割った卵を長時間室温に置いていた
- 調理後しばらく常温で放置した
といった場合には、食中毒のリスクについても考える必要があります。
サルモネラ食中毒ではどんな症状が出る?
サルモネラに汚染された食品を食べると、
- 下痢
- 腹痛
- 発熱
- 吐き気
- 嘔吐
などがみられることがあります。
農林水産省では、症状が出るまでの時間を一般に食後6〜48時間程度としています。[2]
そのため、
「目玉焼きを食べて30分後に下痢したからサルモネラだ」
と判断することはできません。
一方で、前日やその日の食事に、生または加熱不十分な卵料理があり、その後に腹痛・下痢・発熱などが出た場合には、食中毒も考える必要があります。
乳幼児や高齢者などでは症状が重くなる場合があるため、注意が必要です。[2]
「半熟卵は消化に良い」「目玉焼きは消化に悪い」は本当?
インターネットでは、
「半熟卵は消化がよい」
「目玉焼きは消化に時間がかかる」
といった説明を見かけることがあります。
しかし、今回確認した範囲では、
「目玉焼きは○時間、半熟卵は○時間」と食品ごとに一定の消化時間を示し、それがそのまま下痢の原因になると断定できる十分な根拠は確認できませんでした。
消化にかかる時間は、
- 食べた量
- 一緒に食べた食品
- 脂質の量
- 胃腸の状態
- 個人差
などによって変わります。
したがって、
「目玉焼きは消化に悪いから下痢になる」
と単純に考えるのではなく、調理方法や一緒に食べたもの、症状が出るタイミングまで含めて考える方が適切です。
卵の加熱でアレルギーの出方が変わることもある
卵アレルギーでは、加熱によってアレルゲン性が低下することがあります。
消費者庁の資料では、十分に加熱した卵なら食べられる場合でも、半熟の卵焼きや親子丼などで症状が出る場合があると説明されています。[3]
ただしこれは、
「加熱すれば卵アレルギーでも安全」
という意味ではありません。
食べられる量や加熱条件には個人差があるため、卵アレルギーが疑われる場合に自己判断で試すことは避け、医師の指示に従ってください。
目玉焼きを食べると毎回お腹を壊すときは?
毎回同じように症状が出る場合は、次の点を確認してみてください。
- 半熟か、しっかり加熱しているか
- 油をどのくらい使っているか
- ベーコンやソーセージなどを一緒に食べていないか
- 牛乳やコーヒーも一緒に飲んでいないか
- 卵以外の料理でも同じ症状が出ないか
- じんましんやかゆみなどがないか
- 症状が出るまで何分・何時間かかるか
こうした記録を残しておくと、原因を整理しやすくなります。
目玉焼きを食べて下痢になったときの対処法
いったん卵料理を控える
症状が出ているときは、原因を確かめるために無理にもう一度食べる必要はありません。
いったん控えて、症状の経過をみましょう。
水分を補給する
下痢では水分や電解質が失われます。
水分を少量ずつ取り、脱水を防ぐことが大切です。
食べたものと症状の時間を記録する
- 何時に食べたか
- どんな卵料理だったか
- 半熟か十分加熱したものか
- 一緒に何を食べたか
- 症状が何時に始まったか
- 発熱や嘔吐があるか
- 皮膚症状があるか
などを書いておくと、受診時にも役立ちます。
こんな症状がある場合は医療機関へ
次のような場合は、単なる「食べ過ぎ」や「消化不良」と考えず、医療機関に相談してください。
- 強い腹痛がある
- 下痢を繰り返す
- 血便がある
- 高熱がある
- 嘔吐を繰り返す
- 水分が十分に取れない
- 尿が少ないなど脱水が疑われる
- 卵を食べるたびに同じ症状が出る
- じんましん、息苦しさ、のどの違和感などを伴う
- 加熱不十分な卵料理を食べたあとに症状が出た
- 症状が長引いている
特に、息苦しさ、のどの腫れ、意識が遠のくなどの症状がある場合は、重いアレルギー反応の可能性があるため、速やかに救急対応が必要です。
まとめ|目玉焼きで下痢しても、卵だけが原因とは限らない
目玉焼きを食べたあとに、下痢や腹痛が起こることはあります。
しかし、
「目玉焼きは消化に悪いから下痢になる」
と一つの理由で説明することはできません。
考えられるのは、
- 調理に使った油や脂質
- 一緒に食べた食品
- 食後の胃結腸反射
- その日の胃腸の状態
- 卵アレルギー
- 半熟・加熱不足
- サルモネラによる食中毒
などです。
特に、加熱不十分な卵を食べたあとに下痢・腹痛・発熱・嘔吐などが出た場合は、サルモネラ食中毒も考える必要があります。
一方、卵を食べるたびに腹痛や下痢が起こったり、じんましん・呼吸器症状なども伴ったりする場合には、食物アレルギーについて医療機関へ相談してください。
「目玉焼きだから悪い」と決めつけるのではなく、
どのような調理法で、何と一緒に食べ、どのくらい後に症状が出たか
を整理して考えることが大切です。
参考文献・参考情報
[1] National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases(NIDDK)
Eating, Diet, & Nutrition for Diarrhea.
下痢の際に症状を悪化させる可能性のある高脂肪食品等について参照。
NIDDKの原文を確認する
[2] 農林水産省「サルモネラ(細菌)」
加熱不足の卵料理、サルモネラ食中毒の症状、潜伏期間、予防方法等について参照。
農林水産省の解説を確認する
[3] 消費者庁「食物アレルギー表示に関する情報」
食物アレルギーの定義、鶏卵アレルギー、加熱によるアレルゲン性の変化等について参照。
消費者庁の食物アレルギー情報を確認する
[4] 厚生労働省「アレルギーについて」
食物アレルギーによる腹痛、嘔吐、下痢等の症状について参照。
厚生労働省の解説を確認する
[5] 厚生労働省「食中毒予防に関する資料」
サルモネラ属菌の原因食品、卵の保存・調理、中心部75℃・1分以上の加熱等について参照。
厚生労働省の資料を確認する
執筆・監修
箕浦雅子(薬剤師)
株式会社健将 代表取締役
薬剤師としての専門知識を基盤に、長年にわたり健康・食品分野に携わり、腸内環境や納豆菌をはじめとする健康情報の発信を行っています。
株式会社健将は健康食品の企画・開発・販売も行っています。本サイトでは、健康や身体に関する一般的な情報について、公的機関・医学論文などを確認しながら、できる限り正確で分かりやすい情報提供に努めています。
利益相反(COI)について
執筆者は株式会社健将の代表取締役であり、同社は健康食品の企画・開発・販売を行っています。
本記事は、特定の卵商品、食品メーカー、飲食店等を批判・推奨することを目的としたものではなく、公的機関等の情報をもとに一般的な健康情報を提供することを目的としています。
※本記事は一般的な健康情報の提供を目的としたものであり、個別の診断・治療を目的とするものではありません。症状が続く場合や気になる症状がある場合は、医療機関へご相談ください。
