執筆・監修:箕浦雅子(薬剤師)|株式会社健将 代表取締役
「そうめんを食べると下痢になる」
「夏になると、そうめんのあとにお腹が痛くなる」
「そうめんを食べ過ぎるとお腹を壊すの?」
このように気になる方もいるでしょう。
結論からいうと、そうめんそのものが、誰にでも下痢や腹痛を起こす食品というわけではありません。
そうめんを食べたあとにお腹の調子が悪くなる場合には、
- 一度に食べる量が多かった
- 冷たいそうめんや飲み物を一度に多くとった
- 小麦が合わない体質や病気がある
- めんつゆや薬味、一緒に食べた食品が関係している
- 食後の胃結腸反射
- 保存状態や具材による食中毒
など、複数の可能性を分けて考える必要があります。
この記事では、「なぜそうめんで下痢・腹痛になるのか」を、食べ過ぎ、冷たい食事、小麦、IBS、めんつゆ、胃結腸反射、食中毒などの観点から整理して解説します。

そうめんを食べて下痢・腹痛になるときに考えられること
そうめんを一度に食べ過ぎた
そうめんは口当たりが軽く、暑い日でも食べやすいため、気づかないうちに量が多くなることがあります。
特に、
- 何束も一度に食べた
- 短時間で早食いした
- 普段よりかなり多く食べた
- 一緒に天ぷらなども多く食べた
という場合には、そうめんそのものより「食べた量」や食事全体の負担が関係している可能性があります。
「少量なら平気だけれど、たくさん食べると下痢になる」という場合は、量との関係を確認してみましょう。
冷たいそうめん・冷たい飲み物を一度に多くとった
夏は、氷水でよく冷やしたそうめんに、冷たいお茶やジュースを一緒にとることも多くなります。
冷たいものをとっただけで、健康な人が必ず下痢になるわけではありません。
一方で、IBS(過敏性腸症候群)の人を対象にした研究では、冷水を飲んだあとに腸の知覚や排便に関わる反応が変化することが報告されています。[1]
この研究では、IBS患者60人と健康な人18人を対象に、4℃の冷水220mLまたは37℃の温水を飲んだ前後で直腸の感覚を調べました。
その結果、冷水摂取後にはIBS患者で直腸の知覚閾値が低下し、特に下痢型IBSでは排便に関わる閾値も低下しました。[1]
ただし、これは、
「冷たいものを飲めば誰でも下痢になる」
という意味ではありません。
もともと腸が敏感な人では、冷たい飲食物が腹痛や便意などの症状を誘発する一つのきっかけになる可能性がある、という程度に考えるのが適切です。
特に、
- 冷たい麺類で毎回お腹がゆるくなる
- 冷たい飲み物を一緒に多く飲む
- 夏場にだけ起こりやすい
という場合には、温度や食べ方も一つの手掛かりになります。
小麦が原因で下痢・腹痛になることはある?
あります。
ただし、
「小麦は体に悪い」
「グルテンは誰にでも下痢を起こす」
という意味ではありません。
小麦を食べて腹痛や下痢が起こる場合には、いくつか異なる原因があります。
セリアック病
セリアック病は、グルテンを摂取することで免疫反応が起こり、小腸に障害が生じる病気です。
NIDDK(米国国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所)では、セリアック病を、グルテンを含む食品によって小腸が障害される慢性的な消化器・免疫疾患と説明しています。[2]
下痢などの消化器症状がみられることがあります。
ただし、日本ではセリアック病は比較的まれとされています。
日本の非臨床成人2,008人を対象に行われた研究では、セリアック病と確定された人は1人で、割合は0.05%でした。[3]
したがって、
「そうめんを食べて下痢した=セリアック病」
と考える必要はありません。
一方で、小麦を食べるたびに長期間にわたって下痢や腹痛が続く場合などは、自己判断でグルテンを完全除去する前に医療機関へ相談してください。
小麦アレルギー
小麦に対する食物アレルギーでも、腹痛や下痢などの消化器症状が起こることがあります。
じんましん、皮膚のかゆみ、唇や口の腫れ、咳、呼吸のしづらさなどを伴う場合には、食物アレルギーも考える必要があります。
毎回小麦を食べたときに同じ症状が出る場合は、自己判断で小麦を完全除去する前に医療機関へ相談してください。
IBSでは、小麦の「フルクタン」が関係する場合も
過敏性腸症候群(IBS)の人では、小麦を食べると腹痛、膨満感、下痢などが出る場合があります。
ここで重要なのが、
症状の原因が必ずしもグルテンとは限らない
という点です。
Monash Universityでは、小麦などの穀類に含まれるFODMAPの一種であるフルクタンが、IBSの人で腹部症状を誘発することがあると説明しています。[4][5]
また、低FODMAP食で小麦を減らすのは、グルテンそのものではなく、主としてフルクタンを減らすためとされています。[6]
そのため、
「そうめんを食べてお腹が痛くなる=グルテンが悪い」
と単純に決めつけるのは適切ではありません。
めんつゆが原因になることはある?
「そうめんを食べると必ずお腹を壊す」と感じる場合、そうめんだけでなく、一緒に食べるめんつゆや薬味も確認してみましょう。
めんつゆには商品によって、
- しょうゆ
- 砂糖類
- だし
- 調味料
- 玉ねぎやにんにく由来の原料
などが使われることがあります。
ただし、市販のめんつゆだから危険、食品添加物が入っているから下痢になると考えることはできません。
一方で、IBSの人では、玉ねぎ・にんにくなどに含まれるフルクタンが症状につながることがあります。Monash Universityも、玉ねぎやにんにくをフルクタンが多い食品として挙げています。[4]
また、
- わさび
- しょうが
- ねぎ
- 辛い薬味
- 天ぷら
- 冷たい飲み物
など、一緒にとった食品が関係していることもあります。
食べてすぐ下痢したのは、そうめんがそのまま出たから?
そうめんを食べた直後に便意や下痢が起こると、
「さっき食べたそうめんが、もう出てきたのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、通常は今食べたそうめんが短時間でそのまま便として出てくるわけではありません。
食事をすると胃が刺激され、その刺激をきっかけに大腸の動きが活発になる胃結腸反射が起こることがあります。
そのため、食後すぐに便意が起きた場合には、今食べたそうめんそのものが直ちに下痢になったというより、食事をきっかけに、すでに大腸にあった内容物が押し出された可能性も考えられます。
特に、
- 食事をすると毎回トイレに行きたくなる
- 朝食後に便意が起こりやすい
- コーヒーなどでも同じことが起こる
という場合には、胃結腸反射が関係している可能性があります。
作り置きのそうめんや具材で食中毒になることはある?
あります。
そうめん自体だけでなく、
- 卵
- 肉
- 魚
- 薬味
- めんつゆ
- 作り置きしたおかず
など、一緒に食べた食品の保存状態にも注意が必要です。
厚生労働省は、家庭での食中毒予防として、冷蔵が必要な食品は早めに冷蔵庫へ入れること、温度管理を適切に行うことなどを案内しています。[7]
特に夏場は、調理した食品を長時間室温に放置しないことが大切です。
下痢だけでなく、
- 強い腹痛
- 発熱
- 嘔吐
- 血便
などがある場合には、食中毒も考える必要があります。
そうめんを食べると毎回お腹を壊すときは?
毎回同じように症状が出る場合は、次の点を確認してみてください。
- 何束食べたか
- 冷たくしすぎていないか
- 冷たい飲み物を一緒に大量に飲んでいないか
- めんつゆや薬味は何を使ったか
- 天ぷらなど脂っこい料理を一緒に食べていないか
- パンやうどんなど、ほかの小麦食品でも同じ症状が出ないか
- 食後すぐか、数時間後か
- 発熱や嘔吐がないか
- じんましんや呼吸器症状がないか
こうした記録を残しておくと、原因を整理しやすくなります。
そうめんで下痢になったときの対処法
いったん食べるのを控える
症状が出ているときに、原因を確かめるために無理に食べ直す必要はありません。
いったん控えて、症状の経過をみましょう。
水分を少量ずつ補給する
下痢では水分や電解質が失われます。
一度に大量に飲むのではなく、少量ずつ水分を補給してください。
原因を一つに決めつけない
「そうめんが悪い」「グルテンが悪い」と決めつけるのではなく、
量・温度・小麦・めんつゆ・薬味・食べ合わせ・症状が出るまでの時間
をまとめて考えることが大切です。
こんな場合は医療機関へ
次のような場合は、医療機関に相談してください。
- 強い腹痛がある
- 下痢を繰り返す
- 血便がある
- 高熱がある
- 嘔吐を繰り返す
- 水分が十分に取れない
- 尿が少ないなど脱水が疑われる
- 小麦を食べるたびに同じ症状が出る
- じんましん、息苦しさ、のどの腫れなどを伴う
- 症状が長引いている
特に、息苦しさやのどの腫れ、意識が遠のくなどの症状がある場合は、重いアレルギー反応の可能性があるため、速やかな救急対応が必要です。
まとめ|そうめんで下痢しても、原因は一つとは限らない
そうめんを食べたあとに下痢や腹痛が起こることはあります。
しかし、
「市販のそうめんだから悪い」
「小麦やグルテンがすべての人に悪い」
と考えることは適切ではありません。
考えられるのは、
- 食べ過ぎ
- 冷たい食事や飲み物
- 小麦アレルギー
- セリアック病
- IBSとフルクタン
- めんつゆや薬味
- 胃結腸反射
- 保存状態や食中毒
などです。
特にセリアック病は小麦に関連する病気の一つですが、日本では比較的まれであり、そうめんを食べて下痢しただけで疑う必要はありません。
「そうめんを食べると毎回お腹を壊す」という場合は、
どのくらい食べたか、どのくらい冷たかったか、何と一緒に食べたか、どのくらい後に症状が出たか
を整理してみましょう。
参考文献・参考情報
[1] Zuo XL, Li YQ, Shi L, et al.
Visceral hypersensitivity following cold water intake in subjects with irritable bowel syndrome.
J Gastroenterol. 2006;41(4):311-317. DOI: 10.1007/s00535-005-1766-x. PMID: 16741609.
IBS患者における冷水摂取後の直腸知覚、排便閾値、腹部症状の変化について参照。
PubMedで原著論文を確認する
[2] National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases(NIDDK)「Celiac Disease」
セリアック病の定義、グルテンによる小腸障害、症状等について参照。
NIDDKの解説を確認する
[3] Fukunaga M, Ishimura N, Fukuyama C, et al.
Celiac disease in non-clinical populations of Japan.
J Gastroenterol. 2018;53(2):208-214. DOI: 10.1007/s00535-017-1339-9. PMID: 28389733.
日本の非臨床成人2,008人におけるセリアック病の頻度について参照。
PubMedで原著論文を確認する
[4] Monash University「FODMAP food list」
小麦、玉ねぎ、にんにく等に含まれるフルクタンについて参照。
Monash UniversityのFODMAP食品一覧を確認する
[5] Monash University「About FODMAPs and IBS」
FODMAPとIBSの腹部症状との関係について参照。
Monash Universityの解説を確認する
[6] Monash University「Avoiding wheat on a low FODMAP diet」
低FODMAP食で小麦を減らす理由が、主としてフルクタン含有量に関係することについて参照。
Monash Universityの解説を確認する
[7] 厚生労働省「家庭での食中毒予防」
家庭での食品の保存、冷蔵・冷凍、温度管理等について参照。
厚生労働省の解説を確認する
執筆・監修
箕浦雅子(薬剤師)
株式会社健将 代表取締役
薬剤師としての専門知識を基盤に、長年にわたり健康・食品分野に携わり、腸内環境や納豆菌をはじめとする健康情報の発信を行っています。
株式会社健将は健康食品の企画・開発・販売も行っています。本サイトでは、健康や身体に関する一般的な情報について、公的機関・医学論文などを確認しながら、できる限り正確で分かりやすい情報提供に努めています。
利益相反(COI)について
執筆者は株式会社健将の代表取締役であり、同社は健康食品の企画・開発・販売を行っています。
本記事は、特定のそうめん、小麦製品、めんつゆ、食品メーカー等を批判・推奨することを目的としたものではなく、公的機関・大学・医学論文等の情報をもとに一般的な健康情報を提供することを目的としています。
※本記事は一般的な健康情報の提供を目的としたものであり、個別の診断・治療を目的とするものではありません。症状が続く場合や気になる症状がある場合は、医療機関へご相談ください。
