執筆・監修:箕浦雅子(薬剤師)|株式会社健将 代表取締役
「鶏軟骨を食べるとお腹を壊す」
「軟骨って消化に悪いの?」
「やげん軟骨を食べたあとに下痢をしたけれど大丈夫?」
このように気になる方もいるでしょう。
結論からいうと、鶏軟骨そのものが「消化に悪い食品」であり、食べれば下痢になると断定することはできません。
一方で、鶏軟骨を食べたあとに下痢や腹痛が起こった場合には、
- 一度に食べた量
- 唐揚げなど脂質の多い調理法
- お酒やほかの料理との組み合わせ
- その日の胃腸の状態
- 加熱不足や二次汚染による食中毒
など、軟骨そのもの以外の要因も考える必要があります。
特に鶏肉では、カンピロバクターによる食中毒に注意が必要です。
この記事では、「鶏軟骨は本当に消化に悪いのか」から、食べ過ぎ、下痢・腹痛、やげん軟骨と食中毒との関係まで整理して解説します。
鶏軟骨は本当に消化に悪い?
鶏軟骨はコリコリとした硬い食感が特徴です。
そのため、
「硬い=消化に悪い」
と思われることがあります。
しかし、今回確認した範囲では、鶏軟骨を食べること自体が消化不良や下痢の直接的な原因になると示した十分な医学的根拠は確認できませんでした。
硬い食感の食品では、よく噛んで食べることは大切ですが、
「軟骨を十分に噛まなかったから下痢になった」
と原因を一つに決めつけることはできません。
鶏軟骨を食べたあとにお腹の調子が悪くなる場合は、食べた量や調理法、ほかに一緒に食べたものなども確認してみましょう。
鶏軟骨を食べて下痢・腹痛になるときに考えられること

一度に食べる量が多かった
居酒屋の焼き鳥や軟骨唐揚げは、お酒を飲みながら何本も食べたり、一皿を短時間で食べたりすることがあります。
「少量なら平気だけれど、たくさん食べるとお腹が痛くなる」
という場合には、軟骨そのものの性質だけでなく、食べた量との関係を確認することが大切です。
また、早食いになっていないか、ほかの料理も多く食べていないかなども一緒に振り返ってみましょう。
軟骨唐揚げなど「脂質の多い料理」が関係することがある
鶏軟骨には、焼き鳥だけでなく唐揚げとして食べる機会も多くあります。
ここで分けて考えたいのが、
「軟骨だから」ではなく、「揚げ物だから」症状が出ている可能性
です。
NIDDK(米国国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所)は、急性下痢があるときに症状を悪化させる可能性のある食品として、揚げ物、ピザ、ファストフードなどの高脂肪食品を挙げています。[1]
ただし、これは、
「健康な人が脂っこい物を食べれば必ず下痢になる」
という意味ではありません。
もし、
- 焼き鳥の軟骨なら平気
- 軟骨唐揚げではお腹がゆるくなる
- 唐揚げ、天ぷら、ラーメンなどでも同じことが起こる
という場合には、軟骨そのものよりも脂質の多い食事との関係を考える手掛かりになります。
お酒やほかの料理が重なっている可能性
「飲み会で軟骨を食べたあとに下痢をした」という場合、軟骨だけを原因と考えるのは早いかもしれません。
飲み会では、
- アルコール
- 揚げ物
- 脂っこい料理
- 辛い料理
- 食べ過ぎ
- 普段より遅い時間の食事
など、複数の条件が重なりやすくなります。
NIDDKは、急性下痢がある場合に症状を悪化させる可能性のある飲食物として、アルコールや高脂肪食品などを挙げています。[1]
そのため、
「鶏軟骨を食べた直後に下痢した=鶏軟骨が原因」
とは限りません。
やげん軟骨を食べたあとに下痢したら食中毒?
必ずしも食中毒とは限りません。
しかし、鶏肉を使った料理ではカンピロバクター食中毒を考える必要があります。
厚生労働省によると、カンピロバクター食中毒は、生や加熱不十分な鶏肉、あるいは調理時の二次汚染などが原因になります。[2]
重要なのは、
「新鮮な鶏肉だから安全」とは限らない
ということです。
健康な鶏でもカンピロバクターなどの食中毒菌を保有していることがあり、厚生労働省も、生や十分に加熱されていない鶏肉を食べないよう注意を呼びかけています。[2]
やげん軟骨も鶏由来の食品ですから、調理や取扱いについては一般的な鶏肉と同様に十分注意する必要があります。
カンピロバクターではどんな症状が出る?
カンピロバクターに感染すると、
- 下痢
- 腹痛
- 発熱
- 吐き気
- 嘔吐
- 頭痛
- 悪寒
- 倦怠感
などがみられることがあります。
潜伏期間は一般に2~5日程度と比較的長いのが特徴です。[2]
そのため、
「軟骨を食べて30分後に下痢したからカンピロバクターだ」
というように、食べてすぐの症状だけから判断することはできません。
また、まれではありますが、カンピロバクター感染の数週間後にギラン・バレー症候群を発症することがあります。[2]
鶏軟骨の食中毒を防ぐために
鶏肉は中心まで十分に加熱することが重要です。
厚生労働省は、家庭でのカンピロバクター食中毒予防として、
中心部を75℃以上で1分間以上加熱すること
を示しています。[2]
また、家庭で調理するときは、
- 生の鶏肉とほかの食品を接触させない
- 生肉を扱ったあとは手を十分に洗う
- まな板や包丁などを洗浄・消毒する
- 生の鶏肉を洗わない
- 中心部まで十分に火を通す
ことが大切です。
生の鶏肉はなぜ洗わない方がいいの?
「表面の汚れや菌を落としたい」と考えて、水で洗いたくなることがあるかもしれません。
しかし、生の鶏肉を水で洗うことは推奨されていません。
農林水産省は、鶏肉を洗った際に水がはねることで、食中毒菌がシンクや調理台、周囲の食品などに飛び散り、二次汚染につながる可能性があると注意喚起しています。[3]
ドリップが気になる場合には、洗うのではなく、キッチンペーパーなどで拭き取る方法が案内されています。[3]
つまり、鶏肉は洗うことで安全にするのではなく、
十分な加熱と、手指や調理器具からの二次汚染を防ぐこと
が重要です。
「鳥軟骨は体に悪い」と考えてよい?
鶏軟骨そのものを「体に悪い食品」と考える必要はありません。
検索すると「鳥軟骨 体に悪い」といった言葉を目にすることがありますが、
- 軟骨だから危険
- 軟骨だから下痢になる
- 軟骨だから消化できない
と単純に考えることは適切ではありません。
注意したいのは、食品そのものより、量・調理法・衛生状態・その日の体調です。
焼き鳥の軟骨なら平気だが、軟骨唐揚げでは下痢になる
脂質の多い料理との関係を確認します。
少量なら平気だが、大量に食べるとお腹が痛くなる
食べる量との関係が手掛かりになります。
軟骨以外の揚げ物でも下痢になる
軟骨だけの問題ではない可能性があります。
数日後に下痢・腹痛・発熱が出た
加熱不足の鶏料理を食べていた場合には、食中毒も考える必要があります。
鶏軟骨で下痢になったときの対処法
いったん食べるのをやめる
症状が出た場合は、無理に同じ食品を食べ続けず、いったん控えましょう。
原因を確かめるために、大量に食べ直す必要はありません。
水分を補給する
下痢では水分や電解質が失われます。
少量ずつでも水分を取り、脱水にならないよう注意してください。
食べたものを振り返る
「軟骨だけ」ではなく、
- 焼き鳥か唐揚げか
- 食べた量
- 一緒に飲んだお酒
- 一緒に食べた料理
- 食べた時間
- 症状が出た時間
- 発熱や嘔吐がなかったか
まで記録しておくと、原因を整理しやすくなります。
こんな症状がある場合は医療機関へ
次のような場合は、単なる「食べ過ぎ」と考えず医療機関へ相談してください。
- 強い腹痛がある
- 下痢を繰り返す
- 血便がある
- 高熱がある
- 嘔吐を繰り返す
- 水分が十分に取れない
- 尿が少ないなど脱水が疑われる
- 加熱不十分な鶏料理を食べたあとに症状が出た
- 症状が長引いている
特に、下痢・腹痛に加えて発熱などがあり、数日前に生や加熱不十分な鶏肉を食べた心当たりがある場合は、そのことを医療機関に伝えてください。
まとめ|鶏軟骨=消化に悪いとは限らない
鶏軟骨を食べたあとに、下痢や腹痛が起こる人はいます。
しかし、
「鶏軟骨は消化に悪いから下痢になる」
「鳥軟骨は体に悪い」
と一つの理由で説明することはできません。
考えられるのは、
- 食べた量
- 揚げ物など脂質の多い調理法
- アルコールやほかの料理
- その日の胃腸の状態
- 加熱不足
- 調理中の二次汚染
- カンピロバクターなどによる食中毒
などです。
とくに、加熱不十分な鶏肉を食べた数日後に下痢・腹痛・発熱などが出た場合は、カンピロバクター食中毒も考える必要があります。
「軟骨だから悪い」と決めつけるのではなく、
何を、どのくらい、どのような調理法で食べたか
を整理して考えることが大切です。
参考文献・参考情報
[1] National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases(NIDDK)
Eating, Diet, & Nutrition for Diarrhea.
急性下痢の際に症状を悪化させる可能性のある高脂肪食品、アルコール等について参照。
NIDDKの原文を確認する
[2] 厚生労働省「カンピロバクター食中毒予防について(Q&A)」
カンピロバクターの原因食品、症状、潜伏期間、予防法、鶏肉の加熱条件等について参照。
厚生労働省のQ&Aを確認する
[3] 農林水産省「鶏料理を楽しむために~カンピロバクターによる食中毒にご注意を!!~」
鶏肉の加熱、手洗い、調理器具、生の鶏肉を洗わないこと、二次汚染防止等について参照。
農林水産省の解説を確認する
執筆・監修
箕浦雅子(薬剤師)
株式会社健将 代表取締役
薬剤師としての専門知識を基盤に、長年にわたり健康・食品分野に携わり、腸内環境や納豆菌をはじめとする健康情報の発信を行っています。
株式会社健将は健康食品の企画・開発・販売も行っています。本サイトでは、健康や身体に関する一般的な情報について、公的機関・医学論文などを確認しながら、できる限り正確で分かりやすい情報提供に努めています。
利益相反(COI)について
執筆者は株式会社健将の代表取締役であり、同社は健康食品の企画・開発・販売を行っています。
本記事は、特定の鶏肉・軟骨商品、飲食店または食品メーカーを批判・推奨することを目的としたものではなく、公的機関等の情報をもとに一般的な健康情報を提供することを目的としています。
※本記事は一般的な健康情報の提供を目的としたものであり、個別の診断・治療を目的とするものではありません。症状が続く場合や気になる症状がある場合は、医療機関へご相談ください。
