執筆・監修:箕浦雅子(薬剤師)|株式会社健将 代表取締役
「ピザを食べたあと、お腹がゴロゴロした」
「ピザを食べると、なぜか下痢になる」
「チーズが原因?それとも油?」
そんな経験がある方もいるでしょう。
結論からいうと、ピザそのものが必ず下痢を起こすわけではありません。
ピザは、
- 脂質が多くなりやすい
- 一度にたくさん食べやすい
- チーズなどの乳製品を使う
- 小麦を使う
- 玉ねぎやにんにくなどの具材を使うことがある
- 肉や魚介類など多くの具材を使う
という特徴があります。
そのため、体質や体調によっては、いくつかの条件が重なって下痢や腹痛につながることがあります。
特に、
「脂っこいものを食べるとお腹がゆるくなる」
「牛乳を飲むとゴロゴロする」
「小麦や玉ねぎを食べたときに調子が悪い」
といった傾向がある人は、ピザのどの部分が自分に合わなかったのかを分けて考えることが大切です。
① 脂質の多さでお腹が動きやすくなることがある
ピザには、
- チーズ
- サラミ
- ベーコン
- ソーセージ
- オイル
- 脂の多い肉類
などが使われることがあります。
そのため、種類によっては脂質の多い食事になりやすい食品です。
Snapeらの研究では、標準的な食事だけでなく、脂質だけの試験食を摂ったあとにも、直腸S状結腸の活動が速やかに増えることが確認されています。[1]
また、NIDDKでは、すでに急性の下痢があるときに症状を悪化させる可能性がある食品として、揚げ物、ピザ、ファストフードなどの脂肪の多い食品を挙げています。[2]
つまり、
「ピザを食べるとすぐ便意がくる」
という場合には、脂質を多く含む食事によって、食後の大腸運動が強まっている可能性も考えられます。
ただし、脂質を摂った人すべてが下痢になるわけではありません。
ピザを食べた量や、その日の体調、ほかに一緒に食べたものも確認してみましょう。
脂質と食後の便意については、こちらの記事でも解説しています。
② 一度にたくさん食べたことが関係する場合も
ピザは数切れを続けて食べやすく、気づかないうちに食事量が多くなることがあります。
食事をすると、大腸の動きが活発になる「胃結腸反射」が起こります。
Snapeらの研究でも、食後に直腸S状結腸の活動が速やかに増えることが確認されています。[1]
そのため、
「1切れなら大丈夫なのに、3~4切れ食べるとお腹がゆるくなる」
という場合は、特定の具材だけでなく、食べた量そのものが関係している可能性もあります。
無理に食べきらず、自分がどのくらいの量で症状が出やすいのかを見ることも大切です。
胃結腸反射については、こちらの記事でも解説しています。
③ チーズや乳製品と乳糖不耐症
ピザにはチーズが使われることが多いため、
「乳製品が原因なのでは?」
と考える人もいるでしょう。
乳糖不耐症は、小腸で乳糖を分解する酵素「ラクターゼ」が少なく、乳糖を十分に消化できないことで起こります。
消化されなかった乳糖が大腸へ届くと、大腸の細菌によって分解され、水分やガスが増えることで、
- お腹の張り
- 下痢
- ガス
- 吐き気
- 腹痛
- お腹がゴロゴロする
などの症状が出ることがあります。[3]
ただし、「チーズだから乳糖が多い」と一律にはいえません。
NIDDKでは、乳糖不耐症の人でも耐えられる乳糖の量には個人差があり、チェダーやスイスなどの硬質チーズは、ほかの乳製品より乳糖が少ないとしています。[4]
つまり、ピザのチーズだけを見て原因と決めるのではなく、
「ほかの乳製品でも同じ症状が出るか」
を見ることが手がかりになります。
また、乳糖不耐症と牛乳アレルギーは別のものです。
乳糖不耐症は乳糖を消化する力の問題で、牛乳アレルギーは乳製品に含まれるタンパク質に対する免疫反応です。[3]
④ 小麦・玉ねぎ・にんにくなどFODMAPが関係する人も
ピザには、
- 小麦
- 玉ねぎ
- にんにく
- きのこ
- 一部の乳製品
などが使われることがあります。
過敏性腸症候群(IBS)のある人では、医師から低FODMAP食を勧められることがあります。
FODMAPとは、小腸で吸収されにくい一部の糖質の総称です。
NIDDKでは、低FODMAP食で制限を検討する食品の例として、
- 玉ねぎ
- にんにく
- きのこ
- キャベツ
- 一部の乳製品
- 小麦製品
などを挙げています。[5]
ピザには、これらがいくつも重なることがあります。
ただし、
「小麦を食べたら下痢になる」
「玉ねぎを食べたら下痢になる」
という意味ではありません。
低FODMAP食は、医師から勧められた場合などに数週間試し、その後、食品を少しずつ戻しながら症状との関係を確認していく方法です。[5]
必要な場合は、自己判断で多くの食品を長期間除くのではなく、医師や管理栄養士に相談しながら進めるとよいでしょう。
きのこを食べたときにお腹がゆるくなる方は、こちらの記事も参考になります。
⑤ 食物アレルギーの可能性は?
ピザには、
- 小麦
- 牛乳・乳製品
- エビ
- カニ
- ナッツ類
など、食物アレルギーの原因になりうる食品が使われることがあります。
食物アレルギーでは、原因となる食品を食べたあとに、
- じんましん
- 口・唇・舌の違和感や腫れ
- 吐き気
- 嘔吐
- 腹痛
- 下痢
- 咳
- 呼吸困難
などが起こることがあります。[6]
ピザを食べたあとに、
「下痢だけでなく、じんましんも出た」
「口や喉に違和感がある」
「息苦しさがある」
といった場合は、単なる消化不良と考えず、食物アレルギーの可能性も考える必要があります。
呼吸困難など重い症状が急に出た場合には、救急要請が必要です。[6]
「ピザは消化が悪いから下痢になる」とは言い切れない
ピザについて、
「小麦やチーズは消化が悪いから下痢になる」
と言われることがあります。
しかし、すべての人に同じように起こるわけではありません。
本記事で参照した資料からは、
- 脂質のみの試験食のあとに直腸S状結腸の活動が増えること
- 乳糖不耐症では乳糖を含む食品で下痢や腹痛などが起こること
- IBSのある人ではFODMAPを含む食品が症状に関係する場合があること
などは確認できます。[1][3][5]
一方で、
「ピザは消化が悪いから、それだけで下痢になる」
と一括りにするのは適切ではありません。
どの食品や条件が関係しているのかを分けて考える方がよいでしょう。
食べてから時間がたって下痢したら食中毒も考える
ピザを食べたあとに下痢が起きた場合、体質だけでなく食中毒の可能性もあります。
NIDDKでは、急性下痢の主な原因として、ウイルス性胃腸炎、食中毒、薬の副作用を挙げています。[7]
特に、
- 肉類
- 鶏肉
- シーフード
- 加熱前の食材
などを使ったピザでは、十分な加熱や衛生管理が重要です。
厚生労働省では、食肉は中心部まで十分に加熱し、中心温度75℃で1分間以上を目安としています。[8]
また、調理前後の食品を室温に長時間放置しないことも大切です。[9]
宅配ピザや食べ残したピザも、
「あとで食べるから」と室温に長時間置いたままにしないようにしましょう。
保存する場合は速やかに冷蔵し、再び食べるときには十分に再加熱することが大切です。[9]

ピザを食べると毎回下痢する場合は?
毎回ピザを食べたあとに症状が出る場合は、原因を一つに決めつけず、
- 何切れ食べたか
- チーズや乳製品が多かったか
- サラミやベーコンなど脂の多い具材が多かったか
- 玉ねぎやにんにくが入っていたか
- シーフードなど特定の具材が入っていたか
- 食後どのくらいで症状が出たか
を記録してみると原因を探る手がかりになります。
NIDDKでも、下痢の原因になっている食品を探すため、食べたものと症状を記録する方法を紹介しています。[2]
「ピザ」という料理全体を避けるのではなく、
「自分は何を、どのくらい食べたときに症状が出るのか」
を見ることが大切です。
ピザを食べて下痢したときの対処法
一時的な下痢で強い症状がない場合は、まず水分と電解質を補いながら様子をみます。
下痢では水分や電解質が失われるため、補給することが大切です。[10]
必要に応じて、経口補水液などを利用します。
また、急性の下痢があるときは、
- 脂肪の多い食品
- アルコール
- カフェイン
- 大量の単純糖
- 糖アルコール
などが症状を悪化させる可能性があります。[2]
無理に絶食する必要はなく、食欲が戻れば、体調をみながら普段の食事へ戻していきます。[2][10]
こんな場合は医療機関へ
一時的な軟便で、その後すぐ改善する場合は自然に落ち着くこともあります。
ただし成人では、
- 下痢が2日以上続く
- 1日に6回以上のゆるい便がある
- 嘔吐を繰り返す
- 強い腹痛がある
- 高い熱がある
- 血便や黒い便がある
- 脱水症状がある
場合は、医療機関へ相談してください。[7]
脱水のサインには、
- 強いのどの渇き
- 口の乾燥
- 尿が少なくなる
- だるさ
- めまい・ふらつき
- 尿の色が濃くなる
などがあります。[7]
また、
「ピザを食べるたびに強い腹痛や下痢になる」
「特定の食品を食べるたびに症状を繰り返す」
場合も、一度医療機関へ相談するとよいでしょう。
まとめ|「ピザだから下痢」ではなく、何が関係したかを見る
ピザを食べたあとに下痢や腹痛が起きても、ピザそのものが悪いとは限りません。
確認したいのは、
- 脂質の多さ
- 食べた量
- チーズ・乳製品
- 乳糖不耐症
- 小麦・玉ねぎ・にんにくなどFODMAP
- 食物アレルギー
- 食中毒
などです。
一つの理由だけで原因を決めるのではなく、
「何を、どのくらい食べ、いつ症状が出たか」
を確認することが、原因を探す第一歩になります。
参考文献・参考情報
[1] Snape WJ Jr, Wright SH, Battle WM, Cohen S.
The gastrocolic response: evidence for a neural mechanism.
Gastroenterology. 1979;77(6):1235-1240.
DOI: 10.1016/0016-5085(79)90162-8
PMID: 583043
標準的な食事および脂質のみの試験食後の直腸S状結腸運動について参照。
PubMedで確認する
[2] National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases(NIDDK).
Eating, Diet, & Nutrition for Diarrhea.
急性下痢時の脂肪の多い食品、ピザ、アルコール、カフェイン、単純糖、糖アルコール、食事記録について参照。
NIDDKの資料を確認する
[3] National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases(NIDDK).
Symptoms & Causes of Lactose Intolerance.
乳糖不耐症の原因、下痢・腹痛・ガス・腹部膨満などの症状について参照。
NIDDKの資料を確認する
[4] National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases(NIDDK).
Eating, Diet, & Nutrition for Lactose Intolerance.
乳糖不耐症で耐えられる乳糖量の個人差、硬質チーズは他の乳製品より乳糖が少ないことについて参照。
NIDDKの資料を確認する
[5] National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases(NIDDK).
Eating, Diet, & Nutrition for Irritable Bowel Syndrome.
低FODMAP食、小麦、玉ねぎ、にんにく、きのこ、一部乳製品などについて参照。
NIDDKの資料を確認する
[6] アレルギーポータル.
食物アレルギー.
食物アレルギーの症状と、重い症状がある場合の対応について参照。
アレルギーポータルを確認する
[7] National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases(NIDDK).
Symptoms & Causes of Diarrhea.
急性下痢の原因、成人の受診目安、脱水症状について参照。
NIDDKの資料を確認する
[8] 厚生労働省.
食中毒予防:お肉はよく加熱して食べよう ~お肉の生食はとても危険です!~
中心温度75℃で1分間以上の加熱について参照。
厚生労働省の資料を確認する
[9] 厚生労働省.
家庭での食中毒予防.
調理前後の食品を室温に長時間放置しないこと、保存・再加熱について参照。
厚生労働省の資料を確認する
[10] National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases(NIDDK).
Treatment of Diarrhea.
下痢時の水分・電解質補給について参照。
NIDDKの資料を確認する
執筆・監修
箕浦雅子(薬剤師)
株式会社健将 代表取締役
薬剤師としての専門知識を基盤に、長年にわたり健康・食品分野に携わり、食品と体調との関係をはじめとする健康情報の発信を行っています。
株式会社健将は健康食品の企画・開発・販売も行っています。本サイトでは、公的機関・医学論文などを確認しながら、一般の方にも分かりやすい健康情報の提供に努めています。
利益相反(COI)について
執筆者は株式会社健将の代表取締役であり、同社は健康食品の企画・開発・販売を行っています。
本サイトおよび執筆者は、特定のピザ商品、飲食店、食品メーカー等との広告・協賛関係はありません。
本記事は、特定の食品・商品を批判または推奨することを目的としたものではなく、公的機関・医学論文等をもとに一般的な健康情報を提供することを目的としています。
※本記事は一般的な健康情報の提供を目的としたものであり、個別の診断・治療を指示するものではありません。症状が続く場合、強い症状がある場合は、医療機関へご相談ください。
