下痢・嘔吐になる食中毒

下痢の原因は集団食中毒

突然の嘔吐・下痢の中には食中毒による感染症があります。
食中毒は夏というイメージがりますが、実は一年を通じて発生するのです。

今年も嘔吐・下痢に苦しむ集団食中毒が発生しています。
ではどんな原因で、どのような時に発症するのでしょうか。

下痢、嘔吐になる食中毒とは

食中毒は1年を通じて発生するので、常に注意が必要です。
食中毒は、細菌やウィルス、有害な物質などが含まれた食品を食べて下痢、嘔吐など健康被害を起こしますが、下痢や嘔吐だけでなく、生命をうばう可能性を有する危険な病気です。

海外では清潔な飲み水を得られない国が多く、食品由来と水由来による食中毒も多く発生しています。
日本では水道管理が行き届き飲み水は非常にきれいですので、食品由来と水由来の問題を分けて考えることができます

最近の集団食中毒発生事例

①2020年9月16日福岡市保育園で「O‐26」集団食中毒
福岡市博多区の保育園で園児と職員、11人が腸管出血性大腸菌O-26に集団感染していたことが分かりました。

福岡市によりますと、9月16日、下痢の症状があった博多区の1歳の男の子から腸管出血性大腸菌O-26が検出されたことから、通っていた保育園で検査を実施したところ、0歳児と1歳児のあわせて9人と、職員1人からも菌が検出されたということです。

重症者はおらず、全員、快方に向かっています。福岡市での腸管出血性大腸菌の集団感染は、今年はこれが初めてです。

腸管出血性大腸菌O-26の症状

臨床症状は、無症候性から軽度の下痢、激しい腹痛、頻回の水様便軽度の発熱、さらに、著しい血便とともに重篤な合併症を起こし死に至るものまで様々です。

患者の6〜7%では、発症数日後から2週間以内に、溶血性尿毒症症候群、または脳症などの重症な合併症が発症する場合があり、HUS を発症した患者の致死率は1〜5%とされています。

②2020年9月24日郡山市保育園で「サルモネラ菌」集団食中毒
岐阜県は24日、郡上市八幡町初音の妙高保育園で調理された給食を食べた同園や併設幼稚園の1~6歳の男女54人の幼児が、下痢や発熱など食中毒症状を訴え、5人が入院したと発表した。いずれも快方に向かっている。

県によると、同園の園児ら205人が10日、給食のごはんやグラタン、きんぴらごぼうなどを食べ、54人が112日から23日にかけて発症。関保健所郡上センターは給食残品からサルモネラ属菌が検出されたことから、食中毒と断定。食品衛生法に基づき、妙高保育園を24日から業務禁止処分にした。

③2020年7月4日八潮市小学校で「病原性大腸菌」集団食中毒
埼玉県八潮市の全市立小中学校15校の児童生徒と教員計3453人が食中毒症状を発症したことを受け、大山忍市長は3日、「児童生徒や保護者の皆様に深くおわび申し上げ、再発防止に最善を尽くす」とのコメントを発表した。

石黒貢教育長は同日、工場が県から営業停止処分を受けた、市内の東部給食センターを視察。市教育委員会は「来週いっぱいは保護者に弁当の用意をお願いしたい」としている。

市内の小中学校では6月27日以降、腹痛や下痢などの症状を訴える児童生徒が相次ぎ、県は同26日の給食が原因の病原大腸菌による食中毒と断定した。
市教委によると、約1週間たった3日時点でも学校を休む児童生徒が多数いるという。

埼玉県は2日、同県八潮市の全市立小中学校15校で6月26日に給食を食べた児童・生徒と教員計3453人が下痢や嘔吐などを発症したと発表した。
県は病原大腸菌による食中毒と断定し、給食を提供した市内の給食センター工場を2日から3日間、営業停止処分とした。

発表によると、発症者は市内の全児童・生徒と教員計6922人の約半数にあたる。いずれも快方に向かっているという。

嘔吐・下痢になる食中毒の発症にかかわる3つの条件

食中毒の発症に関しては、3つの条件があります。
①食べる人間側の状態
人は健康状態が、いつも良いとは限りません。
疲れや、ストレスなど身体が弱っている状態の時など、免疫力が低下し、食中毒菌を口にした場合には発症する可能性は高くなります。

②食品の環境状態
たとえば、温度や湿度管理、保存期間などで有害菌が発生しやすい環境状態であった時、あるいは食品でいえば、衛生的に加工されたかどうかなどの状態です。

③病原体そのもの
もちろん、病原体がいる場所や性質なども重要ですが、中でも深刻なのは、病原体が常に進化していることです。
例えば、ノロウィルスが非常に良い例です。ノロウィルスは、生牡蠣などの二枚貝を食べると感染しますが、現在では、ノロウィルス自体の感染力が強くなり、食品を食べなくても、保菌者から他の方へ直接感染するというように、変化しています。

O-157も、加熱殺菌した際、100万匹くらいの菌の中の1、2匹が生き延びて熱に強い性質となり、変異した子孫を残すことがあるのです。

上記の条件は、3つ同時に、常に人間にとって都合良くコントロール出来るものではありません。病原体はこれからも変異を重ね、また、新しい病原体が出てくることも否定できません。そう考えると、人間が食物を食べる限り食中毒はなくなることはないでしょう。

だからこそ、原因を見極め常に対策を怠らないということが大事なのです。人間はどんどん弱っていき、病原菌はますます強くなるってこともありうるのです。

嘔吐・下痢になる食中毒を起こす多種多様な原因

食中毒は、厚生労働省により、原因物質の違いで分類されています。
大きく分けて、「微生物性の食中毒」と、「化学性の食中毒」、「自然毒による食中毒」、「その他」となります。

原因物質による食中毒の分類
① 微生物性の食中毒
●細菌による食中毒
*感染型・・サルモネラ属菌、腸管出血性大腸菌O157、カンピロバクター、ほか
*毒素型・・黄色ブドウ球菌、ほか
●ウイルスによる食中毒:ノロウイルス、A型肝炎ウイルス、ほか

② 化学性の食中毒
化学物質:ヒスタミン(微生物の代謝産物であるが化学物質とされている)、スズ、ほか

③ 自然毒による食中毒
自然毒:ふぐの内蔵、毒キノコ、毒草、ジャガイモの芽、ほか

④ その他
寄生虫:クリプトスポリジウム、アニサキス、ほか

①微生物食中毒例
●感染型は、微生物の菌体が増えることから体調不良を起こすもので、代表的な菌はサルモネラ属菌、O-157やO-111、カンピロバクターなどです。
2011年2月に起きた、北海道岩見沢市の集団食中毒事件では1500人を超える被害者が出ました。
原因はサルモネラ属菌。調理所の衛生管理に問題があったために学校給食が汚染されたと推定されている事例です。

●毒素型は、菌が毒素をつくるために起きる食中毒です。代表的な菌は黄色ブドウ球菌で、2000年、関西で1万4000人もの被害者を出した低脂肪乳などによる食中毒事件が有名です。
菌は熱で死滅しましたが、菌による毒素が残っていたために起きました。

●ウィルス型は、今世界中で多大な被害を出しているのがノロウィルスによる食中毒です。症状としては腹痛や下痢などがあり、非常に激しい嘔吐を伴います。

②化学性の食中毒
残留農薬などが原因物質にあげられます。
しかし現在の日本では、農薬取締法や食品衛生法を適正に守れば、農薬による食中毒は起きないと考えています。
しかし、輸入小麦の残留農薬などからアレルギーなど健康被害は起きています。

その他の原因物質には、ヒスタミンやスズなどがあります。
ヒスタミンによる食中毒は、主に魚に含まれるアミノ酸の一種ヒスチジンを、微生物がヒスタミンに変えてしまい、じんましんや吐き気を起こすものです

③自然毒による食中毒
代表的なものは、動物性ではふぐの毒です。
日本では2011年1月、ふぐ処理師の免許のない方が肝を料理して、死者1名を出した事例がありました。
植物由来の自然毒では、キノコの毒やトリカブトのような野草の毒があげられます。

日本はキノコや野草を好まれる方が多いので、発症例も多くあります。
秋のキノコ狩りなど毒キノコがたくさんありますので、充分注意して下さい。
ベテランの方でも間違うことがあります。

④その他」の分類
寄生虫による食中毒です。
原虫のクリプトスポリジウムや、魚に寄生するアニサキスなど、寄生虫によって健康被害が起きることがあります。

食品には多様な菌や物質が存在し、食品を食べる限り、同時に食中毒の原因物質も摂取してしまう可能性が大いにあります。
人間は、自分だけでは生きられない従属栄養生物で、食べないわけにはいきません。
食中毒の原因を知ることで、食品に対する配慮や警戒心が生まれてきます。注意しつつ、楽しく食べましょう。

食中毒を防ぐさまざまな方法

①生き物としての弱点を知る
食中毒対策では、まず原因菌の特性をよく知ることが重要です。
菌は生き物ですので、生き物としての弱点を持っています。
そこに効果的に作用させて、食品の価値はなるべく落とさずに、原因菌を死滅させたり、減少させることで食中毒を防止します。
その利用方法は3つに分けられます。

利用方法による食中毒対策の分類

①物理化学的な方法:温度(の管理:加熱、冷却)、電気、光、ほか
温度、電気、光などを利用します。
温度には、加熱による殺菌や冷却などの方法があります。
高電圧を短時間かけて、微生物を感電させることもあります。
光の利用としては、カメラのフラッシュのような強い光をあてて、増殖を抑制します。

②化学的な方法:食品成分、添加物、洗浄剤、ほか
酢のような酸や、わさびの成分を使うことなどがあります。
ナナカマドという植物の実から発見されたソルビン酸は、微生物の増殖を抑制し、人間が摂取しても代謝できるので、保存料として食品に添加されます。
保存料がなければ食中毒の危険性は高まります。

保存料は科学的に評価されて、十分な安全率をかけた使用基準が設定され、食品メーカーは使用基準を守りながら製品を作っています。
保存料にも様々な種類がありますので、各自が識別して食品を購入しましょう。

③生物学的な方法:微生物(による発酵)、拮抗(きっこう)微生物、溶菌酵素、ほか
微生物を微生物で制御するものです。
O157を抑え込むため、意図的に乳酸菌を多く入れる場合があります。

また、生物由来の酵素を使う方法もあり、卵の中のリゾチームという、を溶解できる酵素を食品に入れて、食中毒を防ぎます。

家庭でできる食中毒対策5つの鍵

私たちが暮らしの中でできる、具体的な食中毒対策はどのようなものがあるでしょうか。
世界保健機関(WHO)は、2006年に「食品をより安全にするための5つの鍵」を発表しました。

これは食品衛生の基本的な知識や行動を広く家庭に普及させるために作られたものです。
日々の食生活において、この「5つの鍵」をポイントに、食中毒を防ぎましょう。

食品をより安全にするための5つの鍵
①清潔に保つ
●調理中も頻繁に手を洗う。
●調理器具(まな板など)、ふきんは洗浄、消毒する。
●調理場や食材を、昆虫や動物の害から守る。

②生の食品と加熱済み食品とを分ける
●生の食品は他の食品と分けて取り扱う。
●生の食品と加熱済み食品それぞれに、調理器具や容器を分けて使う。

③よく加熱する
●特に肉類、卵および魚介類はよく加熱する。
●中心温度が70℃以上になるよう加熱する。
●調理済みの食品はよく再加熱する。

④安全な温度に保つ
●調理済み食品を室温に2時間以上置かない。
●食品保存は5℃以下、食べる際は60℃以上を保つ。
●冷凍された食品を室温で解凍しない。

⑤安全な水と原材料を使う
●新鮮で良質な食品を選ぶ。
●安全性が確保された、殺菌乳などの食品を選ぶ。
●果物や野菜を生食する場合にはよく洗う。

腸内環境を強化しよう

私達は食べることで、健康を維持することが出来ます。
「元気の元は胃腸から」昔から言われています。

胃腸が丈夫であれば、多少の無理もききます。
食べ過ぎ、飲み過ぎたとしても、すぐに回復するでしょう。

又有害菌が体内に入ってきても、腸内環境が良好であれば、有害菌が増殖しない様になります。
同じものを食べても、下痢になる人、下痢にならない人がいます。

これは腸内環境の良し悪しできまるのです。
腸内環境を整えるには腸内細菌の活躍が必要不可欠です。

下痢予防、下痢の改善、食中毒予防に腸内環境を強化しましょう。
腸内環境を整えるサプリメントがありますので、上手に利用しましょう。