執筆・監修:箕浦雅子(薬剤師)|株式会社健将 代表取締役
「ドーナツを食べると下痢になる」
「ドーナツを食べたあとにお腹が痛くなる」
「生ドーナツを食べて腹痛が出たけれど、食あたり?」
このように気になる方もいるでしょう。
結論からいうと、ドーナツそのものが、誰にでも下痢や腹痛を起こす食品というわけではありません。
ドーナツを食べたあとにお腹の調子が悪くなった場合には、
- 脂質の多い食品を一度に食べた
- ドーナツを食べ過ぎた
- クリームや牛乳などの乳製品が合わなかった
- 小麦やFODMAPが関係している
- 食後の胃結腸反射
- 生ドーナツやクリーム入り商品の保存状態
- 油脂が著しく劣化していた
など、いくつかの可能性を分けて考える必要があります。
特に最近人気の「生ドーナツ」には、ふわっとした食感のものや、クリームをたっぷり詰めた商品もあります。
この記事では、一般的なドーナツだけでなく、生ドーナツを食べて下痢・腹痛が起こる場合に何を考えればよいのかまで整理して解説します。
ドーナツを食べて下痢・腹痛になる主な原因

1.脂質の多い食品を一度に食べた
ドーナツは、生地を油で揚げて作るものが多く、商品によってはクリーム、バター、チョコレートなども使われます。
そのため、食事全体として脂質が多くなりやすい食品です。
NIDDK(米国国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所)は、急性下痢がある際に症状を悪化させる可能性のある食品として、揚げ物などの高脂肪食品を挙げています。[1]
ただし、
「脂っこいものを食べれば、健康な人でも必ず下痢になる」
という意味ではありません。
もともと胃腸が敏感な人や、すでに下痢をしている人では、脂質の多い食事をきっかけに症状が強くなることがあります。
特に、
- ドーナツを2個、3個と続けて食べた
- クリーム入りを複数食べた
- ドーナツと一緒に揚げ物なども食べた
という場合には、ドーナツ1個だけではなく、食事全体の脂質量を振り返ってみましょう。
2.ドーナツを食べ過ぎた
ドーナツはやわらかく食べやすいため、気づかないうちに複数個食べてしまうことがあります。
特に生ドーナツは、ふわふわした軽い食感のものもあり、見た目のボリュームより食べやすく感じることがあります。
食後の症状には、食品の種類だけでなく、食べた量や食事全体の構成も関係します。
「1個なら平気だけれど、2~3個食べるとお腹がゆるくなる」という場合は、まず量との関係を確認してみてください。
最近人気の「生ドーナツ」でお腹を壊すのはなぜ?
「生ドーナツ」の“生”は、生焼けという意味?
「生ドーナツ」と聞くと、
「中まで火が通っていないの?」
と思う方もいるかもしれません。
しかし、「生ドーナツ」という名称には、食品衛生上の一つの統一された意味があるわけではありません。
商品によって、
- しっとり、ふわふわした食感
- 生クリームなどを生地に使用している
- 中に生クリームやカスタードなどを詰めている
など、「生」の使われ方はさまざまです。
したがって、
「生ドーナツ=加熱不足」
と考える必要はありません。
むしろ大切なのは、その商品にどのような材料が使われ、どのような保存方法が指定されているかです。
生ドーナツでは「クリーム」と「保存状態」にも注意
生ドーナツの中には、生クリーム、カスタードクリーム、チョコクリームなどをたっぷり詰めたタイプがあります。
こうした商品では、一般的なシンプルなドーナツに比べて、
生地だけではなく、中に入っているクリームの保存状態
も重要になります。
厚生労働省の「洋生菓子の衛生規範について」では、クリーム、卵、乳製品などを扱う際の衛生管理や、洋生菓子を適切な温度で管理することが示されています。[2]
そのため、クリーム入りの生ドーナツを購入した場合は、
「ドーナツだから常温で大丈夫」
と自己判断しないことが大切です。
商品の表示や店舗の案内に、
- 要冷蔵
- ○℃以下で保存
- 当日中
- 購入後○時間以内
などの指示がある場合は、それに従いましょう。
生ドーナツは「持ち歩き時間」にも注意
生ドーナツは、手土産や差し入れとして持ち歩くことも多い食品です。
しかし、クリームや乳製品を使った商品では、長時間の常温放置は避けた方がよい場合があります。
厚生労働省は家庭での食中毒予防として、冷蔵や冷凍が必要な食品は持ち帰ったら早めに保存すること、調理済み食品を室温に長時間放置しないことなどを案内しています。[3]
特に、
- 夏の暑い日に長時間持ち歩いた
- 車内に置いていた
- 購入後、何時間も室温に置いていた
- 翌日まで常温で保管した
- 要冷蔵表示を見落としていた
という場合には、保存状態を確認しましょう。
ただし、
「生ドーナツを食べて下痢した=食中毒」
とは限りません。
食中毒以外にも、脂質、乳製品、食べ過ぎ、胃結腸反射など複数の原因が考えられます。
生クリームや牛乳が合わない場合もある
クリーム入りの生ドーナツを食べたときに症状が出る場合は、乳製品にも目を向けてみましょう。
乳糖不耐症では、乳糖を十分に消化できないため、牛乳や乳製品を摂取したあとに、
- 腹痛
- 膨満感
- ガス
- 下痢
- 吐き気
などが起こることがあります。[4]
症状の程度は、摂取した乳糖の量などによっても異なります。
そのため、
「プレーンタイプは平気だけれど、クリーム入りの生ドーナツではお腹を壊す」
という場合には、乳製品との関係も確認してみましょう。
カスタード入りなら「生卵を食べている」ということ?
カスタードクリームには卵が使われます。
しかし、
「カスタード入り生ドーナツ=生卵をそのまま食べている」
という意味ではありません。
一般的なカスタードクリームは、卵や乳製品などを混ぜて加熱して作られます。
ただし、ここでは「加熱してあるから必ず安全」とも言い切れません。
卵を使った食品では、原材料そのものの衛生管理に加えて、製造後の取り扱いや保存状態も重要です。また、卵アレルギーがある人では、食中毒とは別にアレルギー反応を考える必要があります。
つまり、カスタード入り生ドーナツで注意したいのは、
「生」という名前より、卵やクリームを使った商品をどのように製造・保存・持ち運びしたか
という点です。
要冷蔵の商品を長時間常温に置いたり、消費期限を大きく過ぎたりした場合には注意が必要です。
一方、じんましん、口やのどの違和感、息苦しさなどが出た場合は、単なる下痢ではなく食物アレルギーの可能性もあります。
小麦が原因でお腹を壊すことはある?
ドーナツの多くには小麦粉が使われています。
しかし、
「ドーナツで下痢した=グルテンが悪い」
と決めつけることはできません。
IBS(過敏性腸症候群)の人では、小麦などに含まれるFODMAPの一種であるフルクタンが症状に関係する場合があります。
Monash Universityでは、低FODMAP食で小麦を減らす理由について、主として小麦に含まれるフルクタンを減らすためであり、必ずしもグルテンを避けるためではないと説明しています。[5]
そのため、
- パン
- パスタ
- うどん
- 小麦を使ったお菓子
などでも同じように症状が出る場合には、小麦との関係を記録してみるのも一つの方法です。
ただし、自己判断で長期間グルテンを完全除去することはおすすめできません。
セリアック病などを疑って検査を行う場合、先にグルテンを除去してしまうと診断に影響することもあるため、症状が続く場合は医療機関に相談してください。
食べてすぐ下痢したのは、ドーナツがそのまま出たから?
ドーナツを食べた直後や、短時間で便意が起きると、
「さっき食べたドーナツが、もう出てきたのでは?」
と思うかもしれません。
しかし通常、今食べたドーナツが、そのまま短時間で便として排出されたわけではありません。
食事をすると胃が刺激され、その刺激をきっかけに大腸の動きが活発になる胃結腸反射が起こることがあります。
Snapeらの研究でも、食事後に直腸・S状結腸の運動が速やかに増えることが確認されています。[6]
そのため、食後すぐに便意が起きた場合には、
ドーナツを食べたことをきっかけに、すでに大腸にあった内容物が押し出された
可能性も考えられます。
特に、
- 食事をすると毎回トイレに行きたくなる
- 朝食後に便意が起こりやすい
- コーヒーなどでも同じことが起こる
という場合には、胃結腸反射が関係している可能性があります。
「酸化した油」が下痢の原因になるの?
油脂は、空気、光、熱などの影響を受けて時間とともに劣化します。
厚生労働省の「菓子の製造・取扱いに関する衛生上の指導について」では、揚げ処理中の油脂について、粘度や泡立ちなどを目安に品質劣化の程度を把握し、明らかな劣化が認められた場合には交換することが示されています。
また、油脂で処理した菓子について、直射日光や高温多湿を避けて保存することや、適切な表示・管理を行うことも求めています。[7]
そのため、油の劣化そのものを無視する必要はありません。
ただし、
「市販のドーナツを食べて下痢したら、まず酸化した油が原因」
と考えるのは適切ではありません。
ドーナツを食べて腹痛や下痢が起きた場合には、まず、
- 脂質の量
- 食べ過ぎ
- 乳製品
- 小麦
- 胃結腸反射
- 保存状態
などを整理して考える方が自然です。
油の色や臭いだけで安全性は判断できない
家庭で揚げ油を使用する場合、明らかな異臭、強い粘り、消えにくい泡などは、油の劣化を疑う一つの目安になります。
厚生労働省の資料でも、粘度や泡立ちなどを品質劣化の目安としています。[7]
ただし、
見た目や臭いだけで食品の安全性を保証することはできません。
また、市販のドーナツを購入した人が、使用された揚げ油の品質を外見だけで判断することもできません。
そのため、市販品では、
消費期限・保存方法・商品の状態
を確認する方が実用的です。
ドーナツで「食あたり」を疑うのはどんなとき?
ドーナツを食べたあとに下痢しただけでは、食中毒とは判断できません。
一方で、
- 要冷蔵の商品を長時間常温に置いた
- クリーム入りの商品だった
- 消費期限を大きく過ぎていた
- 同じものを食べた複数人に症状が出た
- 下痢に加えて発熱や嘔吐がある
といった場合には、食中毒も考える必要があります。
厚生労働省は、冷蔵が必要な食品を速やかに冷蔵すること、食品を室温に長時間放置しないことを食中毒予防の基本として示しています。[3]
特に、生ドーナツやクリーム入りドーナツでは、購入した店舗が示している保存方法を守ることが大切です。
有名チェーン店のドーナツでも原因は同じ?
有名チェーン店のドーナツを食べたあとに、
「なぜかお腹がゆるくなる」
「腹痛が起きる」
という方もいるかもしれません。
しかし、特定のチェーン店だから下痢になるという医学的根拠があるわけではありません。
有名チェーン店の商品でも、考え方は基本的に同じです。
確認したいのは店名ではなく、
- 揚げたタイプか
- クリーム入りか
- 牛乳や乳製品を多く使っているか
- チョコレートなどを多く使った商品か
- 一度に何個食べたか
- 一緒に何を飲んだか
といった商品の内容と食べ方です。
「このお店のドーナツだから悪い」と決めつけるのではなく、
どの商品を、どのくらい食べたときに症状が出るのか
を確認する方が原因を整理しやすくなります。
ドーナツを食べると毎回お腹を壊すときは?
繰り返し症状が出る場合は、次の点を確認してみてください。
- 何個食べたか
- プレーンかクリーム入りか
- 生ドーナツか一般的なドーナツか
- 牛乳やカフェラテを一緒に飲んでいないか
- パンやほかの小麦菓子でも同じ症状が出るか
- 食後すぐか、数時間後か
- 要冷蔵商品を長時間常温に置いていなかったか
- 発熱や嘔吐がないか
こうした記録を残しておくと、原因を整理しやすくなります。
「毎回同じ種類のドーナツで症状が出る」のか、「ドーナツに限らず脂っこい食事全般で出る」のかでも、考え方は変わります。
ドーナツを食べて下痢になったときの対処法
いったんドーナツを控える
症状が出ているときに、原因を確認するために無理に食べ直す必要はありません。
いったん控えて、症状の経過をみましょう。
水分を少量ずつ補給する
下痢では水分や電解質が失われます。
水分を一度に大量に飲むよりも、少量ずつ補給しましょう。
「油だけ」が原因と決めつけない
ドーナツでお腹を壊した場合は、
脂質・量・乳製品・小麦・胃結腸反射・保存状態
をまとめて考えることが大切です。
こんな場合は医療機関へ
次のような場合は、医療機関に相談してください。
- 強い腹痛がある
- 下痢を繰り返す
- 血便がある
- 高熱がある
- 嘔吐を繰り返す
- 水分が十分に取れない
- 尿が少ないなど脱水が疑われる
- ドーナツ以外の食事でも繰り返し症状が出る
- 同じ商品を食べた複数人に同様の症状が出た
- 症状が長引いている
また、
息苦しさ、のどの腫れ、意識が遠のくなどの症状
がある場合には、食物アレルギーによる重い反応の可能性もあるため、速やかな救急対応が必要です。
まとめ|生ドーナツでは「油」だけでなくクリームと保存にも注目
ドーナツを食べたあとに下痢や腹痛が起こることはあります。
しかし、
「ドーナツの油が悪いから下痢した」
と一つの理由だけで説明することはできません。
考えられるのは、
- 脂質の多い食事
- 食べ過ぎ
- 生クリームや乳製品
- 小麦やフルクタン
- 胃結腸反射
- 保存状態
- 食中毒
- 油脂の著しい劣化
などです。
特に最近人気の生ドーナツには、クリームを多く使用した商品もあります。
そのため、
「生」という名前より、何が入っているか・要冷蔵か・購入後どのくらい常温に置いたか
を確認することが大切です。
また、有名チェーン店の商品であっても、店名を原因と考えるのではなく、
商品内容・食べた量・一緒にとった飲食物・症状が出るまでの時間
を整理してみましょう。
参考文献・参考情報
[1] National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases(NIDDK)
Eating, Diet, & Nutrition for Diarrhea.
下痢がある際に症状を悪化させる可能性のある高脂肪食品等について参照。
NIDDKの解説を確認する
[2] 厚生労働省「洋生菓子の衛生規範について」
クリーム、卵、乳製品等の保存・衛生管理について参照。
厚生労働省の資料を確認する
[3] 厚生労働省「家庭でできる食中毒予防の6つのポイント」
冷蔵が必要な食品の保存、室温放置の回避等について参照。
厚生労働省の解説を確認する
[4] National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases(NIDDK)
Symptoms & Causes of Lactose Intolerance.
乳糖不耐症による腹痛、膨満感、下痢等について参照。
NIDDKの解説を確認する
[5] Monash University「Avoiding wheat on a low FODMAP diet」
小麦に含まれるフルクタンとIBS症状との関係について参照。
Monash Universityの解説を確認する
[6] Snape WJ Jr, Wright SH, Battle WM, Cohen S.
The gastrocolic response: evidence for a neural mechanism.
Gastroenterology. 1979;77(6):1235-1240. PMID: 583043.
食後に起こる胃結腸反射と大腸運動について参照。
PubMedで原著論文を確認する
[7] 厚生労働省「菓子の製造・取扱いに関する衛生上の指導について」
揚げ油の劣化、油脂で処理した菓子の保存・管理について参照。
厚生労働省の資料を確認する
執筆・監修
箕浦雅子(薬剤師)
株式会社健将 代表取締役
薬剤師としての専門知識を基盤に、長年にわたり健康・食品分野に携わり、腸内環境や納豆菌をはじめとする健康情報の発信を行っています。
株式会社健将は健康食品の企画・開発・販売も行っています。本サイトでは、健康や身体に関する一般的な情報について、公的機関・医学論文などを確認しながら、できる限り正確で分かりやすい情報提供に努めています。
利益相反(COI)について
執筆者は株式会社健将の代表取締役であり、同社は健康食品の企画・開発・販売を行っています。
本記事は、特定のドーナツ商品、ドーナツチェーン、菓子メーカー等を批判・推奨することを目的としたものではなく、公的機関・医学論文等の情報をもとに一般的な健康情報を提供することを目的としています。
※本記事は一般的な健康情報の提供を目的としたものであり、個別の診断・治療を目的とするものではありません。症状が続く場合や気になる症状がある場合は、医療機関へご相談ください。
