食後にトイレに行きたくなることは、誰しも経験があるのではないでしょうか。
これは「胃・結腸反射」と呼ばれるもので、胃への刺激が大腸に伝わって便意をもよおす現象です。これは正常な反応なので、特に気にする必要はありません。むしろ、食後にきちんと便意があるということは健康の証しともいえます。
ですが、便意を感じた後、トイレで必ずといっていいほど下痢をするという時は、少し注意が必要です。
特に朝食後、30分~2時間後に下痢になるという症状が続いている場合は、体内で作られている「胆汁」が下痢の原因となっている可能性があります。
胆汁による下痢について
胆汁は肝臓で作られる分泌物で、97%は水、そのほかに胆汁酸、ビリルビン(胆汁色素)、コレステロールなどが含まれ、消化酵素は含まれていません。
胆汁は十二指腸で食べたものと混ざり合い、胆汁に含まれる「胆汁酸」は脂肪を乳化し、消化・吸収させやすい形に変化させる働きをします。
また、水に溶けない脂溶性ビタミンの吸収を助けます。胆汁は夜の間に胆のうに蓄えられ、「食事が腸に入ってきた」タイミングで十二指腸に分泌されます。
こうして脂肪の消化を助ける働きをする胆汁は小腸の入り口で分泌され、小腸の末端部で吸収されます。小腸で吸収された胆汁は「門脈」という血管を通って再び肝臓に戻り、再利用されます。
つまり胆汁は、「肝臓で作られる → 胆のうに保存される → 十二指腸で分泌される → 小腸から吸収される → 肝臓に戻る」というふうに循環しているのです。
これを「腸肝循環」と言います。
しかし何らかの理由で、この胆汁が大腸にまで流れこむと大変です。胆汁は大腸で下剤と同じような働きをするため、下痢を引き起こす原因となります。
ただ健康な人の場合、大腸に到達する胆汁が少しぐらい多くても下痢になることはありません。しかし「胆汁に反応しやすい体質」の人の場合は、大腸に到達した胆汁が原因で下痢になってしまいます。
胆汁による下痢を疑う症状
主に朝食後、30分~2時間経って強烈な便意があり、お腹は痛くないのですが、下痢になっています。下痢の後は、すっきりします。様々な下痢止め薬を試しても効果がない。このような特徴がある時は胆汁による下痢を疑って下さい。
胆汁が大腸まで流れ込む理由として次のような事が挙げられています。
- 小腸の機能低下
感染症や食あたりによる炎症を繰り返していると、小腸の機能が落ちてしまいます。すると、本来なら吸収できるはずの胆汁を十分に吸収できなくなります。
- 胆のう摘出や盲腸の手術
胆のうや盲腸を手術で摘出すると、胆汁の量の調整がうまくできなくなり、過剰に分泌されるようになります。
そのため、小腸での吸収が追いつかずに多くの胆汁が大腸まで到達してしまうのです。
- 過去に盲腸の手術で小腸を切っている
盲腸の手術をするときに小腸を一部切除すると、胆汁は小腸の末端で吸収されますので、胆汁が吸収されにくくなってしまい、大腸まで胆汁が届いてしまうようになります。
- 飲み過ぎによる胆汁の過剰生産
胆汁は水分の吸収を抑制したり、腸粘膜から腸管内への水分の分泌を促したりします。胆汁がたくさん作られすぎると、小腸での吸収が追い付かず、大腸に流れ込んでしまいます。
大腸に達した胆汁は下剤と同じような働きをしますので、大腸が大量の水を出してしまいます。その結果、下痢が起きてしまうのです。
胆汁性下痢の対策
このように、「体質」や「手術」など、自分では対処しづらい原因によって胆汁性下痢は生じてしまうものです。
胆汁による下痢は、一般的な下痢止めの効果がなかなか得られない事が知られています。そのため、まずは生活習慣の工夫で対策をしていくのがよいでしょう。
- 朝ご飯のタイミングを変える
朝ご飯のタイミングを変えることで、下痢をするタイミングをある程度コントロールすることは可能です。
例えば、朝食後だいたい1時間後にトイレに行くようならば、出勤前にトイレを済ませることができるように逆算して朝食を摂るようにするのです。
家にいるうちにトイレを済ませたり、トイレの無い場所に行く前には食事を控えたりすることで、突然の下痢のリスクを減らすことができます。
- 朝ご飯を軽めにする
朝ご飯の量を少なめにすることで、出てしまう胆汁の量を減らし 大腸にかかる刺激を少なくすることができます。昔から腹八分目がよいとも言われています。大腸にかかる刺激を少なくするために、軽めの朝ごはんにしてはいかがでしょうか。
また、おなかにとって分解を苦手とする「糖」を一度に多く食べてしまうと、小腸の分解する力を越えてしまい大腸に多く流れこんでしまいます。
少しずつ分けて食べる事で、小腸は苦手な糖をゆっくりと分解することができるようになります。
また、消化のいい食品と合わせて食べる事で、糖が時間をかけて小腸を通過するようになり、これによって一気に大腸まで糖が流れこむことがなくなると考えられています。
白米や豆腐、醤油など大豆を加工した食品は下痢を誘発しにくいといわれていますので、おすすめです。
- 食生活全般に気を付ける
また、食生活全体に注意を払うことも大切です。先述のとおり、胆汁は脂肪の消化・吸収を助ける消化液です。したがって、脂肪の摂取を控えることで胆汁の分泌量を減らすことができます。
特に、ラードやバターなどの常温で固体の脂(飽和脂肪酸)は胆汁の分泌量を増やすので、これらの脂肪には十分注意しましょう。
また、水溶性食物繊維(大麦やシリアルなどに多く含まれる食物繊維)を積極的に摂取するのもおすすめです。水溶性食物繊維には腸内でコレステロールを吸着して排泄する働きがあるからです。
このように、胆汁性下痢に対しては食生活を意識することである程度対処することは可能です。食生活を見直すことは、下痢改善の第一歩でもあるのです。
時にはサプリメントの力を借りて
根本的には、腸を健康に丈夫に保つことが大切で、本来健康な人であれば、多少胆汁が大腸に流れ込んでも下痢になることはありません。
腸を健康に保つには、根本的に腸内環境を改善して腸年齢を若く保つ、あるいは弱ってしまった腸を回復させるための食事療法を継続し、体質を改善していかなければいけません。
ただ、食事は人生の楽しみの一つでもあります。食事制限が逆にストレスとして働くこともあるでしょう。そんな時には腸活サプリメントを利用するのも一手です。乳酸菌をはじめとする善玉菌が配合された食品やサプリメント、納豆に代表されるような納豆菌を含む発酵食品などもおすすめです。
無理のない範囲で体を労わり、下痢をコントロールできるようになるといいですね。