手術後に起きがちなおなかのトラブル

下痢は食べ物や病気に由来するものだけではなく、なんらかの治療や手術後に副作用的に起こる例も数多くあります。

例えば、胃を切った後や大腸の手術をした後など、消化器官に関する手術の後は下痢を起こしやすくなります。こうした手術後に起こる下痢とその対処法について考えてみましょう。

 

胃の手術後の場合

食べ物の消化は、食べ物を口に入れた時から始まります。口である程度咀嚼し唾液と混ぜ合わさった食べ物は、胃の中で更に細かくされます。

しかし、その胃を手術するとなると、消化機能は格段に衰えることになります。手術後しばらくの間は胃の機能が低下しているので、細かく刻んだものや、やわらかく煮込んだものなど、消化の良い食事をするようにしましょう。 食べ物が未消化のまま腸内に流れ込んでいくと、消化不良となり下痢になる可能性が高まります。

そして、術後はこれまでの食習慣を見直し、新たな消化能力にあわせた食習慣を身につけていく必要があります。

 

大腸・直腸手術後の場合

大腸の手術をすると、大腸からの水分の吸収が減少するため、軟便や下痢になりやすくなります。また大腸の蠕動運動が阻害されることで、便秘の可能性も高まります。

また、直腸の手術の場合は、便の貯留機能が減少あるいは失われるため、便をもよおす回数が格段に増えることも考えられます。

術後、小腸や大腸の癒着が出てしまうと、内容物の通過がうまくいかず、おなかのハリ、膨満を感じることがあります。また腸閉塞の危険性も高まりますので無理は禁物です。

これらの症状は、食事療法で完全に防ぐことができるわけではありませんが、生じにくくすることは可能です。

原則、食事の種類に制限はありませんが、食物繊維が多く含まれているものや消化しにくいものは、腸閉塞の原因となることがありますので、術後3ヵ月は控えたほうがよいでしょう。

 

膵臓の手術後の場合

膵臓を切除すると、消化液である膵液の分泌が減るため、消化吸収障害が起こり、結果として下痢しやすくなったり、脂肪肝になったりすることがあります。

消化吸収障害が明らかな場合は、膵液の代わりになる消化剤を服用します。まず一度、医師に相談しましょう。

 

手術後に下痢にならないために

食事は生きる楽しみと直結しています。手術前と同じ食事ができれば一番ですが、身体の変化を受け入れ、おなかの調子を確認しながら、徐々に慣らしていくことが大切です。

①1回の食事量は無理をせず少なめに、回数を多くする

退院後2~3ヵ月は、3食と2~3回の間食を目安に、一度にたくさんの量を食べるのは胃腸に負担がかかりますので、少しずつ回数を多く食べるのを意識しましょう。

②しっかり咀嚼して、時間をかけて食べる事

よくかむことで、唾液と食べ物がよく混ざり、胃腸の負担が軽くなります。食べ物を少しずつ腸に送り出す働きを補います。一口口に入れたら30回噛むことを目安にするとよいでしょう。

③食事時間を規則的にする事

だいたいでかまいませんので、食事の時間を決めて、それを習慣化するようにします。生活リズムが安定することで、体は食べ物を受け入れる態勢ができます。これにより便通も規則的になり、ペースが安定します。

④食事内容は段階的に進める事

何を食べてもよいのですが、消化の悪いものをたくさん食べるのは避け、体の状態に合わせて、段階的に進めていくことが大切です。

  • 繊維の多い食品は少量ずつ増やす
  • 細かく刻む、軟らかく煮込むなどの調理の工夫
  • 天ぷら、フライ、コロッケなどの油であげたものは少量から食べはじめる
  • 煎茶、コーヒー、紅茶などは薄めにして飲む

⑤食べすぎないように気をつける事

体調が良くなると食欲も増します。しかし、決して食べすぎないよう腹八分を意識しましょう。 量が多くない人でも、早食いにならないようにしましょう。

⑥アルコールはできるだけ避ける事

手術後、少量のアルコールは飲むことができますが、担当医との相談の上で開始しましょう。手術後アルコールに弱くなり、酔いやすくなる人もいるので気をつけましょう。

 

身体の基本を整えるために

術後は薬やストレスの影響で、腸内環境が極端に乱れることが予想されます。腸内環境が悪化すると消化や便の排出に影響します。腸内善玉菌を増やし、腸内環境を整えましょう。腸内環境が整うと下痢や軟便といった症状だけでなく、栄養をきちんと吸収できるようになるため、体力、免疫力も違ってきます

善玉菌たち

腸内善玉菌を増やすには、なんといってもサプリメントがおすすめです。最近は腸活ブームということもあり、良質な乳酸菌や善玉菌はもちろんのこと、そのエサとなるオリゴ糖なども配合されたものがたくさん販売されています。各社独自の菌種を用いている場合が多いですので、自分のおなかに合う菌を見極めるのも大切です。

自分の腸内環境に合っているかどうか、試してみないことにはわかりませんので、最低でも一週間、できれば最長で3か月ほど、続けて体調の変化を感じてみてください。