急な下痢の原因として食中毒が挙げられます。食中毒と言えば、焼き肉店やお弁当屋さん。仕出し屋さんがよく挙げられますが、洋菓子店の商品でも食中毒が発生するのです。例えば、ケーキ類です。実際ロールケーキで食中毒が発生しました。
ではなぜ、ロールケーキが食中毒の原因となるのでしょうか。ご一緒に考えてみましょう。
下痢の原因となるロールケーキとは
ふんわりして美味しいロールケーキ、ところが食べた後しばらくすると、急にお腹が痛くなったり、
下痢や嘔吐してしまう人がいます。中には発熱、下痢をともなう食中毒の発生もあります。
では、なぜ下痢になるのでしょうか。
まず、ロールケーキの材料から下痢の原因を見てみましょう。
材料:卵、薄力粉、砂糖、牛乳、生クリーム、生クリーム用砂糖です。
①下痢の原因となる卵
卵が原因の食中毒はサルモネラ菌によるものがほとんどです。しかし現在日本で市販されている卵のほとんどは、生で食べることが想定されて生産されているので、出荷前に殺菌消毒されていることがほとんどです。
ですので、卵の殻からサルモネラ菌に感染することはあまりないのですが、ごく稀に卵の中身がサルモネラ菌に侵されていることがあるので、特に生卵を食べるときなどは注意が必要です。
●食中毒になるサルモネラ菌とは?
食中毒を引き起こす恐ろしいサルモネラ菌は、牛や豚、ニワトリなどの家畜の腸の中から、川や下水など自然界の中にまで幅広く生息している細菌です。犬や猫、カメなどのペットから感染することもあります。
特徴として乾燥に強く、熱に弱いのが特徴です。このため肉や魚、卵などを充分に加熱せずに食べると、食中毒を引き起こすことがあります。
潜伏期間はサルモネラ菌が体内に入ってから、8~48時間の潜伏期間を経て発病するといわれていますが3、4日後の発病も珍しくありません。
主な症状は、急性胃腸炎です。嘔吐にはじまり腹痛、下痢、発熱などの症状が現れます。赤ちゃんや、高齢者など免疫力が弱い人は、重症化しやすく、回復も遅れる傾向があります。
●サルモネラ菌による食中毒の実際例
①ロールケーキの卵で食中毒
2021.10.15日付のニュースによると、三重県の洋菓子店で販売されたロールケーキなどを食べた客のうち、3歳から40代代までの男女20人に、下痢や発熱といった食中毒の症状が確認されました。
三重県によると、10月13日に桑名市内の医療機関から保健所に対し、複数の患者の便から同じサルモネラ菌が検出されたと連絡があり、調査したところ、いずれも10月2日と3日に同じ洋菓子店で作られた商品を食べていたことがわかりました。現在は全員快方に向かっているということです。
三重県はお店を14日から営業禁止処分とし、施設内の消毒などをするよう指導しているそうです。
②生卵入オクラ納豆を食べて食中毒
平成23年8月2日に宮崎県延岡市内の商店で卵を購入、5日夜に「生卵入りオクラ納豆」にして食べ、3人が食中毒を発症しました。3人の中の70代の女性が死亡しました。
保健所が行った調査では、食べ残された料理や冷蔵庫に保管してあった卵の殻の表面、卵パックの内側などからサルモネラ菌が検出され、卵のサルモネラ菌による食中毒死でした。
●卵による食中毒予防には
卵内には殺菌酵素リゾチームが含まれ、サルモネラ菌は10℃以下ではほとんど増殖しませんが、時間が経つにつれ卵の鮮度が下がれば殺菌力も低下してしまうので、必ず新鮮なものを食べましょう。
賞味期限は、生食できる期限として設定されているので、賞味期限経過後の卵は加熱調理することにより食べることができますが、なるべく賞味期限内に消費するようにしましょう。
特に卵黄と卵白を攪拌すると細菌が増えやすくなるという報告がありますので、混合撹拌した状態で放置しないようにしましょう。
実際、サルモネラ菌に卵が汚染されている割合は10万個に3個という、ごくごく少ない確率だと言われています。しかし可能性は限りなく少なくても、ゼロではありませんので、注意しましょう。
どうしても心配な時は、70℃で1分以上の加熱をすると、サルモネラ菌は死滅すると言われていますので、加熱調理すればさらに安心です。さらに、きちんと保存温度を守ることも大切です。
卵の殻を割っても割らなくても、その見た目だけでは恐ろしいサルモネラ菌に汚染されているかどうかがわかりません。それも怖いところです。
②下痢の原因となる薄力粉
●下痢の原因はグルテン
グルテンは小麦粉に含まれるたんぱく質のことです。腸がグルテンに過剰に反応したり、グルテンを消化しにくいグルテン不耐症(過敏症)の人は増えていています。
そういう人がグルテンをとると、小腸の粘膜に問題が生じて炎症を起こし、必要な栄養素が十分に吸収されなかったり、不要な毒素が体内に取り込まれたりして、慢性的な不調を引き起こす原因になるのです。
便秘や下痢などの消化器系のトラブルだけではありません。頭痛、めまい、イライラ、関節痛、疲労感、やる気喪失、ADHD(注意欠陥・多動性障害)、抑うつ症状など、不調は多岐に及びます。
また、グルテンによって腸内に起きた炎症が、副腎という臓器の疲労の原因になり、これが疲れやすさややる気のなさを引き起こすともいわれています。
③下痢の原因は牛乳
牛乳で下痢になる人は牛乳中の糖質である乳糖を分解する酵素(乳糖分解酵素=ラクターゼ)が少ないか、働きが弱いために下痢になります。
本来乳糖は小腸内で乳糖を分解する酵素(乳糖分解酵素=ラクターゼ)により分解されて小腸で吸収されますが、ラクターゼが少ないか働きが弱いと、乳糖は小腸で分解されずそのまま大腸の方へ進みます。
大腸へ進んだ乳糖が腸内細菌により分解される際にガスや酸が産生され、ガスが大量に発生すると腹部膨満感や腹痛の原因に、また産生された酸によって腸が刺激を受けると腹痛の原因となる場合があります。さらに乳糖は大腸内に水を呼び込む性質を持っており、下痢症状をもたらす原因になると考えられています。
このように乳糖摂取によって生じる不快な症状を「乳糖不耐症」と呼んでいます。乳糖不耐症と聞くと、病気のように感じるかもしれませんが決して病気ではありません。
授乳している赤ちゃんは母乳に含まれる乳糖をエネルギー源として利用するためラクターゼの働きが活発ですが、離乳後はエネルギー源を母乳中の乳糖に頼る必要がなくなるので、次第にラクターゼが生産されなくなります。これは哺乳動物全般に見られるごく自然なことなのです。
④下痢の原因は生クリーム
生クリームたっぷりのロールケーキには生クリームの中に乳糖を分解できない乳糖という成分がたくさん入っています。通常ならば小腸のラクターゼという酵素で分解・吸収することができます。
しかし、このラクターゼは大人になると分泌が少なくなってしまうのです。ラクターゼが不足すると、生クリームや牛乳などをたくさん食べると、牛乳と同様に上手く消化できなくなり、下痢などが起こりやすくなります。
今まで下痢など起きなかった人は、初めは食あたりと勘違いしてしまいます。下痢や嘔吐で出しきった後、腸の調子がすぐに戻ったなら、乳糖不耐症の可能性があります。
●高級なケーキほど下痢をしやすい
最近は志向・本物志向のものが増えてきました。乳糖を分解するのが苦手な人は、高級なケーキを食べるとお腹が痛くなりやすい、下痢になる時もあります。
なぜなら、生クリームは、高級なものほど乳脂肪が多い傾向があるからです。しかし、安い生クリームは、植物性の脂肪分を混ぜて作られますますので、乳脂肪分がその分少なくて下痢になりにくいかもしれません。
乳糖を分解するのが苦手な人は濃厚で、コクがあって、風味豊かな生クリームであればあるほど、腹痛で苦しむ確率が高いのです。
●アレルギーと乳糖不耐症は違う
乳製品アレルギーと乳糖不耐症は似ているようで全く違うものです。乳製品アレルギーは、乳製品そのものに免疫が過剰反応することです。
アレルギーの場合は不用意に食べると命に関わる重大な症状を引き起こす可能性があります。生クリームも乳製品ですからアレルギーの方は注意しなければなりません。
乳糖不耐症の場合は、乳糖分解酵素少なくて、消化不良によってガスがたまったり、酸性度が強まったりする腸内の物理的問題です。免疫細胞が攻撃しているのではなく、腸の活動によって下痢や嘔吐が起こります。中に溜まっているものを外に出せば、すぐに症状が治まるのです。
腸内環境を整えよう
「元気の元は胃腸から」と昔から言われています。腸内環境が元気であれば消化・吸収・排出もスムースに行なわれます。また、最近の研究では、腸内細菌がアレルギー症状の発症に深く関わっているという証拠が次々に明らかにされています。
善玉菌が減り、悪玉菌が増え、腸内環境が悪くなるとアレルギーを発症すると考えられているからです。腸内環境が良くなるとアレルギーだけでなく、免疫力アップなど健康効果は上昇します。
勿論、下痢の改善もスムーズに行われていきます。