下痢原因は特定の糖類から

下痢原因は特定の糖類から

慢性的に下痢に困っている人の中には、ある意外な栄養素が関係しているかもしれないことが分かってきました。その栄養素とは糖類のことです。

糖類は、人によっては腸で分解がしづらく、そのまま大腸に届いてしまうと、下痢を引き起こすことがあるのです。ではどんな糖類が下痢の原因となるのでしょうか。

下痢の原因は特定の糖質で起こる

慢性的な下痢の原因は特定の食べ物が体に合わなくて起こる場合が合います。おなかが弱いのは体質だから仕方がない、半ばあきらめておられる方はすくなくありません。

特に日常生活にそれほど支障がない方は、こんなことでわざわざ病院に行くのは恥ずかしい」など、おなかの不調に慣れてしまい放置している方もおられると思います。

しかし、そうではないことが明らかになりました。下痢になる体質などはないのです。下痢体質だと思われる方は、悲観することも、諦めることもなく、悪くしないいような生活管理を心掛ければいいのです。つまり、自分の下痢はもしかしたらある成分が原因ではないかなと思ったら、その成分を避けてみればいいだけの事です。

その成分とは、小腸で分解しにくい糖類です。小腸で分解しにくい糖類の事をFODMAP(フォドマップ)と言い、腸の運動が過敏になり、腸が不調になることです。

FODMAPとは以下の頭文字をとったものです。
F=Fermentable:発酵性の

O=Oligosaccharides:オリゴ糖(フルクタン、ガラクトオリゴ糖)

D=Disaccharides:二糖類(ラクトース)

M=Monosaccharides:単糖類(フルクトース)

A=And

P=Polyols:ポリオール(ソルビトール、マンニトール、イソマルト、キシリトール、グリセロール)

下痢を繰り返す人たちに、こうした糖類を控えた食事をしてもらったところ、下痢の回数が大きく減ることが、様々な研究によって明らかになりました。特に小腸で分解しにくい糖質に多く見られます。

分解しにくい糖質(FODMAP)が下痢になる理由

本来、糖質は消化酵素で分解され、小腸で吸収されます。ところがFODMAPは小腸で吸収されづらいため、小腸内に残存した分解しにくい糖類が、小腸の表面から水を吸い上げて、消化管内に過剰に水分を滞留させます。

消化管内に水分が溜まることによって、腹部の膨満感や腹部の痛みや、下痢などの原因になると考えられています。

更に、糖が吸収されずにそのままの状態で小腸から大腸へとそのまま到達します。そして大腸で腸内細菌とFODMAPが急速に異常発酵を起こし、過剰な水素ガスが発生し、ガスが消化管内に滞留し、腹部の膨満感や痛みにつながると考えられ、腸の働きが不調になるのです。 つまり、腸全体が過敏になり、おなかがゴロゴロしたり、痛くなったり、ガスがたまったり、便秘などになります。

どのくらいの糖が入ってくると、実際に下痢が起こってしまうかは、個人差があります。この上限量は、バケツに想像してもらうとわかりやすいと言われています。
糖類が含まれる様々な食べ物を食べていると、バケツの中の糖類が徐々に増えていきます。FODMAPが溜まり、バケツが溢れると(上限量を越えると)、消化器症状が現れると考えられています。

ここでのポイントは、FODMAPは累積するということです。一つ一つのFODMAPを摂取して症状がでない場合でも、それが徐々に蓄積していくと、消化器症状が現れる可能性があります。
また累積するということは、FODMAPが含まれる食べ物の種類に加え、食べ物に含まれるFODMAPの量を確認することが重要になります。

しかし、FODMAPが含まれる全ての食品の制限を長期的に続けると、体に必要なビタミン・ミネラルなどの栄養素の不足や、腸内細菌への影響が懸念されますので注意が必要です。

普段から特に下痢に悩んでいない方については、FODMAP食を食べても全く気にする必要はありません。

過敏性腸症候群の方は特定の糖質(FODMAP)で悪化する

「過敏性腸症候群」など、普段から下痢を起こしやすく、腸が敏感に反応してしまう人ほど、下痢を起こしやすいと考えられています。過敏性腸症候群で慢性的な下痢の方は特定の糖質(FODMAP)で下痢が悪化することがあります。

慢性的な下痢、特に過敏性腸症候群の最新研究では、炭水化物などに含まれる特定の糖質(FODMAP)が注目されています。過敏性腸症候群の人は、FODMAPというある種の糖質を小腸でうまく吸収できない体質と腸内細菌の特徴をもっており、これらを多く摂取したときに症状が悪化する、という考えで、豪州のモナッシュ大学をはじめとする海外で盛んに研究が行われています。

現在、欧米・豪州では低FODMAP食が盛んです。FODMAPが多い食品を避け、症状の引き金となる糖質を特定していく方法です。

3週間、低FODMAP食にすることで約7~8割の方は症状が改善します。消化器系の医学誌で最も権威の高い「Gastoroenterology」誌の最新号でも、低FODMAP食が過敏性腸症候群に有効であることを証明した論文が掲載されました。

最近注目されているグルテンフリー食(小麦粉不要食品)も過敏性腸症候群に効果が期待されますが、今のところ科学的にその有効性が確認されていません。それよりも低FODMAP食のほうが科学的にも有効性が高いことが論文で確認されています。

通常、多くの方はこれらのFODMAPを問題なく消化・吸収することができます。

●特定の糖質が多い食品 (慢性的な下痢が続く方の避ける食品)
小麦、大麦、うどん、ラーメン、パスタ、ケーキ、納豆、キムチ、トウモロコシ、豆類(ひよこ豆、レンズマメ、さやえんどう)アスパラガス、ニラ、ニンニク、ゴボウ、セロリ、
牛乳、ヨーグルト、玉ねぎ、ネギ、豆類、リンゴ、柿、スイカ、梨、プルーン、プラム、イチジク、ザクロ、
キリシトール、スモモ、干しブドウなど

●特定の糖質が少ない食品(慢性的な下痢が続く方が食べても大丈夫な食品)
米、そば、豆乳、豆腐、シリアル、オートミール、コーンスターチ、トマト、人参、もやし、ほうれん草、なす、ブロッコリー、さつまいも、かぼちゃ、キュウリ、ショウガ、オリーブ、オクラ、レタス、キャベツ、白菜、パセリ、ズッキーニ、バナナ、イチゴ、ココナッツ、ブドウ、オレンジ、レモン、ザボン、栗、卵、牛肉(赤身)、鶏肉、魚介類など

■月3回以上 原因の分からない下痢をする人

■医師から下痢型の過敏性腸症候群と診断を受けている人
などは、下記の食品の摂取を見直すことで症状が緩和すると指摘しています。

※下記の食品群は、どれも栄養として、体に重要なものばかりです。多くの人にとっては食べても問題は起こりません。
下痢に悩む人は、下記の食品のうち、特に多く摂取している食品を見つけ、少し減らしてみることが推奨されています。

① 乳糖を含んだ食品
牛乳、チーズ、ヨーグルト などの乳製品(乳糖を除去したものを除く)

② 果糖や、糖が集まってできた甘い物質
マンゴー、梨、洋梨、リンゴ、ブドウ、サクランボ、桃、スイカなど
蜂蜜、人工甘味料を含んだおかしなど

③ フルクタンの仲間
小麦など麦の仲間
ネギ、タマネギ、ニンニク、ブロッコリー、マッシュルーム、アスパラガス、大豆など

特定の糖質で下痢になる方への改善策として

過敏性腸症候群の人の腸内では、バイヨネラとラクトバシラスという腸内細菌が多く、これらが作り出すある代謝産物が過剰なほど過敏性腸症候群の症状が悪いことがわかっています。低FODMAP食にするとこの代謝産物が減り、症状が改善することがわかっています。

①低FODMAP食を摂る
過敏性腸症候群の人は、まず最初に3週間、高FODMAP食を控え、上記に挙げた低FODMAP食をとってみましょう。

②自分の体質にあう糖類を選ぶ
次に高FODMAP食でふだんよくとっていたものを、おなかの調子を見つつ1品ずつとり入れ、自分の体質に合う食品、合わない食品を特定することを目指しましょう。

③一度に多くの量を食べない
分解が苦手な糖を一度に多く食べてしまうと、小腸の分解する力を越えてしまい大腸に多く流れこんでしまいます。少しずつ分けて食べる事で、小腸は苦手な糖を時間をかけて分解することができるようになります。

④消化のいい食品と合わせて食べる
消化のいい食品と合わせて食べる事で、苦手な糖が小腸を時間をかけて通過するようになります。一気に大腸に糖の成分が流れこむことがなくなると考えられています。

⑤トクホ認定でも鵜呑みにしない
オリゴ糖や発酵食品などは一般的に「腸にいい」とされトクホに認定されている食品も、過敏性腸症候群の人にはかえって症状を悪化させかねないものがあります。腸内細菌は個人個人で指紋のように多様であり、それぞれ種類も総数も違います。自分に合ったものを選ぶ工夫をしてみましょう。

⑥食事日記をつける
毎日食べた物を、記録し、その日の体調を記録しておくと参考になります。食事日記をつけると改善策が早く見つかります。
ふだんから腹痛などの症状がない無症状の人と、ふだんから腹痛や下痢などの症状がある人では、食事方法が異なることを覚えておきましょう。

腸内環境を整えよう

腸は、普段口にしている食べ物や飲み物から栄養を吸収し、血液や体質などを決定・形成しています。逆に口から体内へウイルスや細菌が侵入してくれば小腸がいち早く毒を察知し、下痢や嘔吐などを起こさせて身体の中を綺麗に掃除します。

また、その感染を防ぐために体内へ吸収せず便として排出するなど、腸は、私たちの身体を守るもっとも重要な免疫器官となっています。
事実、私たちの身体に存在している免疫細胞の約70%は腸に集中しており、私たちが起きている時も寝ている時も常に腸内の免疫細胞は身体を守り続け、ウイルスや細菌が侵入してきたときは、免疫細胞が行って闘います。

もし、腸内環境が悪いと、免疫力は低下、風邪を引いたり、下痢や便秘、生活習慣病になるなど、様々な病気を引き起こしてしまうのです。

苦手な食品が分かった場合でも、本来その食品は、人間の体に必要な栄養源です。腸内環境が整っていると、正常な消化・吸収がうまくいき苦手な食品を摂っても、大丈夫な腸になれるのです。

ですから、苦手な食品の摂取を完全にやめると栄養不足になってしまいます。

まずは腸内環境をしっかり整えてみましょう。腸内環境を整えるサプリメントがありますので上手に利用しましょう。重要な事は腸内善玉菌を増やす様に心掛けることで腸内環境が整えれば、腸は強くなれます。