高齢者の下痢の原因は?

高齢者の下痢の原因は短鎖脂肪酸不足

近年、腸内細菌と健康との関連がテレビや雑誌に溢れています。それは腸内細菌の研究が進み、肥満やアレルギー、加齢関連疾患との関わりなどが明らかにされてきたためです。

その中で、高齢者の下痢の原因の一つに腸内細菌が産生する短鎖脂肪酸不足が注目されています。


目次
🔷短鎖脂肪酸等とは?  🔷短鎖脂肪酸の働き  🔷短鎖脂肪酸が不足すると下痢になる  🔷短鎖脂肪酸不足で下痢になった例  🔷短鎖脂肪酸不足の見分け方  🔷短鎖脂肪酸不足の原因


下痢の原因となる短鎖脂肪酸とは

炭水化物には消化酵素で消化できる易消化性炭水化物と、オリゴ糖類や食物繊維類など、そのままでは簡単に消化吸収できない難消化性炭水化物があります。

難消化性炭水化物の一部は多くの腸内細菌が分解し、消化吸収の手助けをしてくれています。

この時に発生するのが、短鎖脂肪酸です。この難消化性炭水化物を腸内細菌が分解することによって産生されます。

短鎖脂肪酸は3つあり、1つはわれわれが料理などに使うお酢の主成分である酢酸、もう1つはブルーチーズのすっぱさや香りのもとで、

保存料や着香剤としても使われるプロピオン酸、そしてバターの香りのもとになっている酪酸です。
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🔷短鎖脂肪酸の働き

短鎖脂肪酸は大腸の粘膜細胞のエネルギー源であり、大腸の粘膜にあるセンサーを刺激して腸管の蠕動運動を促進します。

さらに、腸管の粘液の分泌や水やナトリウムの吸収を促す働きもあります。
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🔷短鎖脂肪酸が不足すると下痢になる

短鎖脂肪酸が不足すると感染しやすくなったり、病気が治りにくくなったりするといわれています。

その一因として、大腸のバリア機能が低下することが挙げられます。

短鎖脂肪酸は、結腸の粘液分泌も促進します。腸の中の便と腸管壁の間には粘液の層があって、ここに水が分泌されると、滑りやすくなります。

この粘液層によって、便がスムーズに腸内を移行できるだけでなく、便が腸管壁に直接触れることもありません。

つまり、便に含まれる細菌が腸管壁から侵入することを防ぐバリアにもなっているのです。ところが、短鎖脂肪酸が不足して便が粘液でコーティングされないと軟便や下痢便になり、

バリア機能も破綻すると腸管壁から病原菌が侵入しやすくなるため、病気に罹りやすくなるわけです。
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🔷短鎖脂肪酸不足で下痢になった例

戦争中に飢餓状態に陥った人たちの多くが下痢をしていたことが記録されていますが、それは腸内細菌の餌となる食物せんいを摂取していないために、

短鎖脂肪酸が産生されなくなって、水の吸収がうまくいかなくなったことが主な原因と考えられています。

ですから、毎日食物せんいなどを摂取して短鎖脂肪酸の産生を維持することはとても大切です。
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🔷短鎖脂肪酸不足の見分け方

わかりやすい目安は便の臭いで、難消化性炭水化物の摂取が足りないと、腸内細菌はタンパク質が分解されて生じた尿素や死んだ腸管上皮細胞のかけら、あるいは腸管内の細菌を餌にします。

それによって、多量のアンモニアや硫化水素、インドール、スカトール、あるいはイソ吉草酸などが産生されます。

アンモニアはおしっこの腐敗した匂い、硫化水素は卵が腐ったような匂い、イソ吉草酸はたくさんの汗を吸った武具の匂いです。

つまり、難消化性炭水化物の不足で短鎖脂肪酸の産生が低下すると嫌な臭いの便になるのです。
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🔷高齢者の食物繊維の不足が下痢を招く

高齢者の食物せんい不足が短鎖脂肪酸不足となり下痢を招きます。

高齢者は加齢に伴い、噛む力や飲み込む力が衰えたり、内臓機能が低下したりするため、摂食・嚥下障害や低栄養、消化不良などが起こる可能性が高まります。

中でもせんい質の食べ物は加齢とともに食べづらくなるので、不足が目立ちます。高齢者の食事は栄養が偏りがちになりますが、

さまざまな健康効果を持つ短鎖脂肪酸を産生するために、緑黄色野菜やゴボウ、セロリなどの食物せんいを意識して摂取するようにしましょう。
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腸内環境を整えよう

短鎖脂肪酸は、難消化性炭水化物を腸内細菌が分解することにより産生されるため、食物せんいの摂取が重要です。更に、プロバイオティクスの摂取も効果的です。

プロバイオティクスとは、われわれの体に良い働きをするとされる生きた菌のことです。

たとえば、乳酸菌、ビフィズス菌、酪酸菌などが知られており、大腸のエネルギー源である短鎖脂肪酸を増やすことが数多く報告されています。

こうしたプロバイオティクスを増やすサプリメントがありますので上手に利用しましょう。下痢の改善は一段と早くなります。