執筆・監修:箕浦雅子(薬剤師)|株式会社健将 代表取締役
「美容室でヘアカラーをしたあとに下痢になった」
「パーマ液の匂いで気持ち悪くなり、そのあとお腹を壊した」
「白髪染めの薬剤が頭皮から吸収されて、下痢になることはあるの?」
このような疑問を持つ方もいるでしょう。
結論からいうと、通常のヘアカラーやパーマの施術が、頭皮から薬剤を吸収することで直接下痢を起こす、とする十分な根拠は、本記事で参照した資料の範囲では確認できません。
ただし、ヘアカラーではアレルギー性の皮膚障害が知られており、まれに重いアレルギー反応が起こることがあります。[1][3]
アナフィラキシーでは、じんましんや息苦しさなどだけでなく、吐き気、強い腹痛、下痢などの消化器症状が現れることもあります。[6]
そのため、
「カラーをしたあとに下痢した」
という時間的な一致だけでカラー剤を原因と決めつけず、
下痢以外に、皮膚症状・呼吸器症状・吐き気・強い腹痛などが出ていないか
を確認することが大切です。
ヘアカラーが直接「下痢の原因」とは言い切れない
インターネット上などでは、
「カラー剤は頭皮から吸収されて全身に回る」
「体内に蓄積して体調不良を起こす」
といった説明を見かけることがあります。
しかし、厚生労働省、国民生活センター、日本化粧品工業会などの資料で、酸化染毛剤について主に注意喚起されているのは、
- 皮膚障害
- アレルギー反応
- まれな重いアレルギー反応
などです。[1][2][3]
通常のヘアカラー施術によって、薬剤が頭皮から吸収され、それが直接慢性的な下痢を引き起こすという因果関係は、本記事で参照した資料の範囲では確認できません。
そのため、下痢が続いている場合に、
「白髪染めをしているからだ」
「ヘアカラーが原因だ」
と決めつけるのではなく、ほかの原因も含めて考える必要があります。
ヘアカラーで下痢より先に確認したいのはアレルギー
白髪染めやおしゃれ染めなどに使われる酸化染毛剤は、アレルギー性の皮膚障害を起こすことがあります。[1][2][3]
国民生活センターでは、酸化染毛剤によって、
- かゆみ
- 赤み
- 痛み
などの異常が起こることがあり、使用を続けることで症状が重くなる場合があると注意喚起しています。[3]
厚生労働省の通知では、染毛剤の使用説明書に、染毛中または染毛直後に、
- じんましん
- かゆみ
- 発疹
- 発赤
- 息苦しさ
- めまいなどの気分の悪さ
を経験したことがある人は、使用を避ける旨を記載するよう定めています。[1]
また、頭皮や皮膚が過敏な状態になっている人(病中、病後の回復期、生理時、妊娠中など)も、使用を避ける対象とされています。[1]
「今まで何ともなかったから、これからも大丈夫」
とは限りません。
継続して毛染めをしているうちに、突然アレルギー症状が出る場合もあります。[2][3]
下痢と一緒に確認したい「重いアレルギー反応」のサイン
ヘアカラー後に下痢が起きたからといって、それだけでアレルギーとは判断できません。
ただし、酸化染毛剤では、まれに重いアレルギー反応が起こることがあり、アナフィラキシーについても注意喚起されています。[1][3]
アナフィラキシーは、アレルギー反応によって複数の臓器に症状が急速に現れる状態です。[6]
症状は、原因物質への曝露後、数分から数時間で急速に現れることがあります。[6]
代表的な症状には、
- かゆみ
- じんましん
- 発赤
- 唇や舌、目の腫れ
- のどが締め付けられる感じ
- 息苦しさ
- 咳
- 吐き気
- 繰り返す嘔吐
- 持続する強い腹痛
- 下痢
- ぐったりする
- 意識がもうろうとする
などがあります。[6]
つまり、
「ヘアカラーのあとに下痢だけが出た」
場合と、
「下痢と一緒に、じんましんや息苦しさ、腫れなどが出た」
場合では、分けて考える必要があります。
呼吸困難や意識障害などを伴う場合は、アナフィラキシーなど重いアレルギー反応の可能性があります。速やかな救急対応が必要です。[6]
毛染めのあと「気持ち悪い・吐き気がする」ときは?
毛染めや白髪染めの最中・直後に、
「気持ち悪い」
「吐き気がする」
「めまいがする」
などの症状が出た場合は、我慢して施術を続けないことが大切です。
厚生労働省の通知では、染毛中または直後に、じんましんや息苦しさ、めまいなどの気分の悪さを経験したことがある人は、その後の染毛剤の使用を避ける対象とされています。[1]
また、染毛後に何らかの異常を感じた場合には、医師の診療を受けるよう使用上の注意に記載することが定められています。[1]
吐き気だけでヘアカラーが原因とは判断できません。
ただし、
- 皮膚症状
- 息苦しさ
- 強い腹痛
- 下痢
など、複数の症状が短時間に現れた場合は、アレルギー反応も考える必要があります。[6]
パーマ液で下痢になることはある?
パーマネント・ウェーブ用剤には、製品によってチオグリコール酸またはその塩類などが使用されます。[4]
厚生労働省では、パーマネント・ウェーブ用剤について、有効成分の種類や濃度、pHなどの承認基準を定めています。[4]
一方、チオグリコール酸アンモニウムという化学物質そのものの安全データシートには、
- 経口摂取
- 吸入
- 皮膚への接触
など、曝露経路ごとの有害性情報が記載されています。[5]
また、同SDSには、長期または反復した皮膚接触により、吸収に伴う毒性影響が起こり得る旨の記載もあります。[5]
ただし、この安全データシートは、化学物質(原料)の取扱いを対象とした安全データです。
美容室で承認された製品を通常の方法で使用した場合の健康影響を、直接示した資料ではありません。
したがって、原料そのものの有害性情報から、
「パーマをかけると薬剤が頭皮から入り、下痢になる」
と結論づけることはできません。
パーマ液の「におい・匂い」で下痢した?
「パーマ液の匂いで気分が悪くなった」
「パーマのあとに下痢になった」
と心配される方もいます。
チオグリコール酸アンモニウムのSDSには、においについて強い不快臭があることが記載されています。[5]
そのため、においによって不快感や気分の悪さを感じる人がいること自体は不自然ではありません。
ただし、この記載は、においが下痢を引き起こすことを示すものではありません。
パーマ液のにおいを感じたこと自体が、直接下痢を引き起こすとする根拠は、本記事で参照した資料の範囲では確認できません。
施術中に強い刺激を感じたり、吐き気や気分不良が起きたりした場合には、我慢せず美容師に伝え、必要に応じて施術を中止しましょう。
一方、施術後に下痢だけが続いている場合には、
- 感染性胃腸炎
- 食事
- 薬の副作用
- ストレス
- そのほかの消化器疾患
など、ヘアカラーやパーマとは別の原因も考える必要があります。
縮毛矯正でも同じ?
厚生労働省のパーマネント・ウェーブ用剤製造販売承認基準では、
「毛髪にウェーブをもたせ、保つ」
だけでなく、
「くせ毛、ちぢれ毛又はウェーブ毛髪をのばし、保つ」
という効能・効果をうたう頭髪用の医薬部外品も対象とされています。[4]
そのため、いわゆる縮毛矯正に使用される薬剤のうち、この範囲に該当する医薬部外品も同じ承認基準の対象になります。
ただし、縮毛矯正後に下痢が起こった場合も、
「薬剤が頭皮から吸収されたから下痢になった」
と直ちに判断する根拠はありません。
施術中・施術後に、
- 皮膚症状
- 呼吸器症状
- 吐き気
- 腹痛
- 下痢
など、どのような症状が出たのかを整理することが大切です。
ヘアカラーでは毎回パッチテストを
酸化染毛剤では、使用前に毎回パッチテストを行うことが重要です。[1][2][3]
日本化粧品工業会では、ヘアカラー使用の48時間前にパッチテストを行うよう案内しています。[2]
また、
- 過去に酸化染毛剤で異常が出た
- パッチテストで異常が出た
場合は、使用しないことが重要です。[1][2]
国民生活センターは、酸化染毛剤で一度でもかゆみ・赤み・痛みなどの異常があった場合には、以後の使用をやめ、パッチテストもしないよう注意喚起しています。[3]
「少量なら大丈夫」
「今回は違う製品だから大丈夫」
と自己判断して再び試さないことが大切です。
ヘアカラー・パーマのあとに下痢したときに確認したいこと
原因を整理するときは、次の点を確認してみましょう。
- ヘアカラー、白髪染め、パーマ、縮毛矯正のどれだったか
- 施術中にかゆみ、赤み、痛みなどがなかったか
- じんましんが出ていないか
- 唇や舌、目の腫れがないか
- 息苦しさやのどの違和感がないか
- 吐き気や強い腹痛を伴っていないか
- 下痢だけが起こったのか
- 施術後どのくらいで症状が出たか
- 同じ日に普段と違う食品を食べていないか
- 使用している薬に変更がなかったか
- ヘアカラーやパーマをしていない日にも下痢が続いていないか
特に、
皮膚・呼吸器・消化器など、複数の症状が短時間に現れていないか
を確認することが重要です。
下痢だけが続いている場合は、ヘアカラーやパーマ以外の原因も考える必要があります。
下痢したときの対処法
一時的な急性下痢で強い症状がない場合は、まず失った水分と電解質を補うことが大切です。[7]
必要に応じて経口補水液などを利用します。
食欲が戻ってきたら、体調をみながら普段の食事へ戻していきます。[7]
ただし、ヘアカラーやパーマのあとに、
- 全身のじんましん
- 唇や舌の腫れ
- のどが締め付けられる感じ
- 息苦しさ
- ぐったりする
- 意識がもうろうとする
などが出た場合は、単なる下痢として様子をみないでください。
アナフィラキシーなど、重いアレルギー反応の可能性があります。[6]
こんな場合は医療機関へ
成人では、次のような場合は医療機関へ相談してください。[8]
- 下痢が2日を超えて続く
- 1日に6回以上のゆるい便がある
- 嘔吐を繰り返す
- 強い腹痛がある
- 高い熱がある
- 血便や黒い便がある
- 脱水症状がある
脱水のサインには、
- 強いのどの渇き
- 口の乾燥
- 尿が少なくなる
- だるさ
- めまい・ふらつき
- 尿の色が濃くなる
などがあります。[8]
また、ヘアカラーやパーマのあとに、呼吸困難、唇や舌の腫れ、意識障害などがある場合は、救急対応が必要です。[6]
まとめ|「カラーやパーマ=下痢の原因」と決めつけない
ヘアカラーやパーマのあとに下痢が起きると、
「薬剤が頭皮から入ったのでは?」
と心配になるかもしれません。
しかし、本記事で参照した資料の範囲では、
通常のヘアカラーやパーマ施術が、頭皮から薬剤を吸収することで直接下痢を引き起こす
という因果関係は確認できません。
一方、酸化染毛剤ではアレルギー性の皮膚障害が知られており、まれに重いアレルギー反応が起こることがあります。[1][3]
アナフィラキシーでは、下痢、吐き気、強い腹痛などの消化器症状が、皮膚症状や呼吸器症状などとともに現れる場合があります。[6]
大切なのは、
「カラーをしたあとに下痢した」
という時間的な一致だけで原因を決めるのではなく、
どの施術を受けたか、どのような症状が、施術後どのくらいで現れたか
を整理することです。
下痢だけが続いている場合は、ヘアカラーやパーマ以外の原因も含めて医療機関に相談してください。
参考文献・参考情報
[1] 厚生労働省.
染毛剤、脱色剤及び脱染剤の使用上の注意について.
薬食安発第1226001号、平成19年12月26日。
染毛剤による皮膚障害、まれな重いアレルギー反応、染毛中・直後にじんましんや気分の悪さを経験した人への注意、使用を避ける対象、毎回の皮膚アレルギー試験などについて参照。
厚生労働省の資料を確認する
[2] 日本化粧品工業会.
髪の毛を染めるしくみ ― ヘアカラーリング剤 ―.
酸化染毛剤によるアレルギー、ヘアカラーリング剤の種類、使用の48時間前に行うパッチテスト、過去に問題がなくても突然アレルギー症状が出る可能性について参照。
※日本ヘアカラー工業会の資料を日本化粧品工業会が編集したもの。
日本化粧品工業会の資料を確認する
[3] 独立行政法人 国民生活センター.
毛染めによるアレルギーに注意 アナフィラキシーが起きることも.
見守り新鮮情報 第503号、2025年1月30日。
酸化染毛剤によるかゆみ・赤み・痛みなどの症状、繰り返し使用による症状の悪化、アナフィラキシーの可能性、一度でも異常を感じた場合の注意について参照。
国民生活センターの資料を確認する
[4] 厚生労働省.
パーマネント・ウェーブ用剤製造販売承認基準について.
薬生発0628第10号、令和3年6月28日。
パーマネント・ウェーブ用剤の有効成分、濃度、pH、効能・効果、くせ毛・ちぢれ毛・ウェーブ毛髪をのばす用途などについて参照。
2026年10月16日時点で、厚生労働省に掲載されている承認基準として確認。
厚生労働省の資料を確認する
[5] 厚生労働省 職場のあんぜんサイト.
チオグリコール酸アンモニウム 安全データシート(SDS).
作成日:2023年3月31日。
経口摂取、吸入、皮膚への接触など、曝露経路ごとの有害性、および長期・反復した皮膚接触に関する記載について参照。
※化学物質(原料)の取扱いを対象とした安全データであり、通常の美容施術による健康影響を直接示す資料ではありません。
厚生労働省 職場のあんぜんサイトを確認する
[6] アレルギーポータル(運営:一般社団法人 日本アレルギー学会).
アナフィラキシー.
最終更新:2026年4月9日。
アナフィラキシーの皮膚・呼吸器・消化器・全身症状、数分から数時間で急速に症状が現れること、下痢・吐き気・持続する強い腹痛などについて参照。
アレルギーポータルを確認する
[7] National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases(NIDDK).
Treatment of Diarrhea.
急性下痢時の水分・電解質補給、経口補水、食欲が戻った後の通常食への復帰について参照。
NIDDKの資料を確認する
[8] National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases(NIDDK).
Symptoms & Causes of Diarrhea.
成人の受診目安、下痢が2日を超えて続く場合、1日6回以上のゆるい便、脱水症状などについて参照。
NIDDKの資料を確認する
執筆・監修
箕浦雅子(薬剤師)
株式会社健将 代表取締役
薬剤師としての専門知識を基盤に、長年にわたり健康・食品分野に携わり、食品と体調との関係をはじめとする健康情報の発信を行っています。
株式会社健将は健康食品の企画・開発・販売も行っています。本サイトでは、公的機関・医学論文などを確認しながら、一般の方にも分かりやすい健康情報の提供に努めています。
利益相反(COI)について
執筆者は株式会社健将の代表取締役であり、同社は健康食品の企画・開発・販売を行っています。
本サイトおよび執筆者は、特定のヘアカラー製品、染毛剤メーカー、パーマ剤メーカー、美容室等との広告・協賛関係はありません。
本記事は、特定の製品・企業・美容施術を批判または推奨することを目的としたものではなく、公的機関・業界団体・学会等の資料をもとに、一般的な健康情報を提供することを目的としています。
※本記事は一般的な健康情報の提供を目的としたものであり、個別の診断・治療を指示するものではありません。症状が続く場合、強い症状がある場合は、医療機関へご相談ください。
