下痢の種類とその原因について

下痢が起こる原因は様々で、程度も人それぞれですし、タイミングも選べません。通勤中や会議中、はたまた、

トイレがないときに限ってもよおすなど、本人にとって突然の下痢は肉体的にはもちろん、精神的にも大変な苦痛を強いられます。

下痢は便に形がない状態で、多くの場合、排便の回数も多くなります。

腸の水分吸収が不十分、あるいは腸からの分泌物が増加したときなどに起こります。

その原因について詳しくみていきましょう。

原因別にみる下痢の種類

下痢の起こり方にはいくつかの種類があります。

主な種類は①浸透圧性下痢  ②滲出性下痢  ③分泌性下痢  ④腸管運動異常性下痢 の4つの型です。

浸透圧性下痢

腸管内の浸透圧上昇が原因で生じる下痢を浸透圧性下痢といいます。

「腸から吸収されない物質」が腸管内に滞留すると、腸管内の浸透圧(水を引き寄せる力)が高くなります。

その結果、腸からの水分吸収が抑制され下痢が起こります。また、それと同時に腸管への水分分泌が促進され下痢が起こります。つまり、腸の中に多量の水分を抱えることになるのです。

浸透圧性下痢の場合は、腸内の吸収されない物質が外へ排出されれば、下痢はおおむね収まります。ですから、原因となっている物質を特定し、摂取しないようにすることが肝心です。

<例>牛乳

牛乳を飲むと下痢になると言う人は多くいます。ラクターゼという酵素は、正常なら小腸に存在する酵素ですが、この酵素を生まれつき持っていない人(先天性乳糖不耐症の人)、あるいは持っていても少ない人が、牛乳を飲んだり乳製品を食べたりすると「乳糖」が消化されず、小腸に蓄積され浸透圧性下痢を起こします。

このように、牛乳を飲むと下痢をする体質(乳糖不耐症)、食べ過ぎによる消化不良やアルコール飲料の刺激で翌日に起こる下痢も、浸透圧性の下痢にあてはまります。

その他の原因物質として、オリゴ糖、キシリトールなども有名です。

<例2>便秘薬

ある種の便秘薬(マグミットなど)には有効成分として酸化マグネシウムという成分が含まれています。

この酸化マグネシウムも腸管内の浸透圧を上げる物質です。

つまり、酸化マグネシウムを含む便秘薬は、人為的に浸透圧性下痢を引き起こすことで便秘を解消しているのです。

滲出性下痢

主に腸粘膜の炎症が原因で生じる下痢を滲出性下痢といいます。

滲出性下痢は、腸粘膜の障害による腸管壁の透過性の亢進や吸収の障害により生じる下痢です。つまり、腸壁が傷ついてくたびれてしまっているのです。

細菌感染による腸の炎症や慢性的な炎症、つまり腸粘膜が炎症を起こしたり腸粘膜を傷つけるような病原体に感染したりすると、腸液の分泌が増え、水分の吸収が低下し、下痢が起こるのです。

腸に炎症が起こると、腸管壁の透過性が高まった状態になり、そこからタンパク質、血液、粘液、その他の細胞内の液体などが滲み出て、便の水分量を増やします。

また、腸からの水分吸収が低下することも関係してきます。

滲出性下痢は食事で強さが増しますが、この下痢は腸が炎症しているので、絶食しても完全に下痢は止まりません

腸に炎症が起きる原因として、次のようなものが考えられます。

細菌感染

細菌性腸炎、ウイルス性腸炎、抗生物質性起因性腸炎、食事アレルギー性腸炎、虚血性腸炎などがこれにあたります。

特徴として、食事をすると下痢がひどくなり、絶食しても完全には治まりません。激しいときには1日に10数回も水瀉便が出ることがあり、体の水分が不足し、ときには脳貧血をおこして、トイレで倒れてしまうこともある、恐ろしい急性の下痢です。

なによりもまず、水分をしっかりとりましょう。水分補給には番茶か湯ざましに、梅干または食塩を少し加えて飲むのがおすすめです。

食中毒による下痢は家庭での応急処置として、殺菌消毒の意味でクレオソート(正露丸)を使うくらいで、下痢止めは使わないで下さい。

食中毒の下痢は一刻も早く、悪いもの、有害なものを体外に出そうとする防衛反応ですから、症状によっては下剤を使うこともあるくらいです。こうした異常な下痢になった際には、必ず病院に行きましょう

慢性的な腸の炎症

慢性的な腸の炎症としては悪性腫瘍、潰瘍性大腸炎、クローン病、腸結核、放射線照射性胃腸炎などが挙げられます。

クローン病や潰瘍性大腸炎などは腸管内の細胞が剥がれ落ち、腸管内へ血液が漏出し、血液成分や細胞液が出て、排便時にはしばしば血液、膿、粘液が付着します。

これらの疾患は下痢だけでなく、腹痛、発熱、血便なども引き起こすため、日常生活に大きな支障をきたすことがあります。

分泌性下痢

細菌が産生する毒素やホルモンなどの影響で腸管内に過剰に水分が分泌されることがあります。このような原因で生じる下痢のことを分泌性下痢といいます。

コレラ菌や、ある種のウイルスに感染したときに産生される毒素によって、分泌性下痢が生じます。

急性なものとしてはブドウ球菌、コレラ菌、赤痢菌などのエンテロトキシン(毒素)によって起きる腸炎があります。

この下痢は大量の水様性下痢を特徴とし、絶食しても治まりません

海外旅行者が罹り易い分泌性下痢

腸管毒素原性大腸菌という種類の大腸菌は、海外旅行者がかかりやすい食中毒の原因菌です。

そして、この大腸菌はエンテロトキシンという毒素を産生します。

このエンテロトキシンは、腸管内でさまざまな作用を引き起こし、最終的に腸壁から腸管内にクロライドイオン(Cl-)というイオンを分泌させます。

腸管内のクロライドイオンの量が増えると腸管内の浸透圧が高くなります。そのため、最終的には浸透圧性下痢と同じ原理で下痢になってしまいます。

細菌やウイルス、寄生虫の種類によっては、血便、吐気、発熱、腹痛を伴うこともあります。

赤痢やコレラと言った伝染病や病原性原虫や寄生虫でも発生し、重症になることもあります。

特に海外旅行先で食事内容の急変によるおなかの負担に加え、衛生環境が良くない地域では細菌、寄生虫などに感染しやすくなること(輸入感染症)や見知らぬ土地での不安が原因となります。

便秘薬

前述のエンテロトキシンという毒素を元に作られた便秘薬が存在します。

リナクロチド(商品名:リンゼス)という便秘薬です。

つまり、リナクロチドは人為的に分泌性下痢を引き起こすことで便秘を解消する薬剤なのです。

長く便秘薬を使用される方は、今度は薬による分泌性下痢となってしまうことがありますので注意が必要です。

体内ホルモン

また細菌が産生する毒素だけでなく、人が体内で作り出すセロトニンなどのホルモンにも腸管内のクロライドイオンを増やす作用があります。

クロライドイオンは生体内で最も多量に存在するイオンの1つで、広く全身の細胞膜に分布しています。

その役割は、水の輸送に関わり、細胞の基本的機能に深く関与しているのです。

その他分泌性下痢の原因

このほかの原因には、ヒマシ油のような緩下薬、胆汁酸(小腸の部分切除術の後に蓄積しやすい)などがあります。ポリープによっても分泌性下痢が起こります。

★異常を感じたら、まず病院へ

1時間以内に大量の便が出た場合など、ちょっと異常だな?と思った場合は非常に注意が必要となりますのですぐに病院へ行き、医師に診察してもらうようにしてください

このぐらいの下痢症状で病院にいってもいいのかな?と判断に迷う場合には、#7119に電話してみましょう。

特に一人暮らしの場合、救急車を呼んだ方がいいか、今すぐに病院に行った方がいいかなど、一人では判断に迷うことがあると思います。

そんなとき、専門家からアドバイスを受けることができる電話相談窓口が#7119なのです。

 

下痢の原因②に続く