下痢原因は食中毒代表O157

下痢原因は夏の食中毒代表0157

これから、夏本番になります。高温多湿な夏には食中毒による下痢が多く発生します。加えて今年もコロナ禍によってデリバリーやテイクアウトを実施する飲食店も急増、例年よりリスクが高まっています。



食中毒の中でも代表的な腸管出血性大腸菌(O157)はとても危険です。症状は下痢、血便などですが、重症化すると死を招きますので十分な注意が必要です。

腸管出血性大腸菌(O157)とは

殆どの方は「O(オー)157」と聞くと、聞き覚えがあるかと思います。


大腸菌は、名前から推測されるように、元々大腸から発見された菌です。では大腸にはどのくらいの菌が棲みついているのでしょうか。

私達の大腸内には、1000種類、100兆個以上の細菌がすみついていますが、それらは普段は殆ど無害です。元々腸内にいる大腸菌も同様に無害です。

腸内細菌は、善玉菌と悪玉菌、そのどちらでもない中間の菌(日和見菌)と、大きく分けて3グループで構成されています。これらの菌は互いに密接な関係を持ち、複雑にバランスをとっています。

腸内細菌の中で一番数が多い菌は日和見菌で、次に善玉菌が多く、悪玉菌は少数です。その割合は日和見菌70%、善玉菌20%、悪玉菌10%となっています。腸内細菌の種類は個人によって極めて多様で異なり、さらに食事や住んでいる地域や国などの要因によっても大きく異なります。

また、菌の数は年齢によって増減はあるものの、菌の種類は一生を通じてほとんど変わらないことも報告されています。例えば抗生物質の飲用や食中毒では腸内細菌は大きく変動しますが、時間の経過とともに元に戻るとの報告があります。

ところが、こうした腸内に、元々人が持っていない、危険な毒を持った大腸菌が侵入すると、重篤な病気を引き起こすことがあります。なかでも有名なのが、ベロ毒素という毒素を産生する大腸菌で、腸管からの出血を起こすので腸管出血性大腸菌(0157)と呼ばれています。

腸管出血性大腸菌(O157)の症状

腸管出血性大腸菌は頻回の水様便で発病し、その後、激しい腹痛と水溶性の下痢、血便がみられます。発熱はあっても多くは一過性です。潜伏期間は3~8日。

抵抗力が弱い感染者の場合、溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳症などの重症合併症を発症することもあります。

一方で、全く症状がないものから軽い腹痛や下痢のみで終わる場合もあります。

かかってしまった時の対処法

腸管出血性大腸菌O157による感染症が疑われるときは、必ず医師の診察を受けましょう。また、下痢止め薬や痛み止め薬の中には、毒素が体外に排出されにくくするものもあるため、薬は自分の判断で服用しないようにしましょう。
一般的には下痢の治療が行われます。安静、水分補給、消化しやすい食事の摂取などです。抗菌剤を使って治療することも有効ですが、医師とよく相談して対応を決めましょう。

食中毒を招く細菌が増殖しても、食べ物の見た目や味は変わらず、匂いもしません。だから怖いのです。
では腸管出血性大腸菌のだす毒素はどれほど恐ろしいのでしょうか。

腸管出血性大腸菌の出す毒素とは

腸管出血性大腸菌(O157)は、大腸菌につけられた背番号のようなものです。腸管出血性大腸菌に限らず、大腸菌は、細菌表面(血清抗原)の違いで、1番から順にO1などと番号がつけられており、特にベロ毒素を産生しやすい番号が、O157やO111、O104などです。

腸管出血性大腸菌の出すベロ毒素は細胞を壊す能力を持つ強力な毒素で、特に大腸粘膜の内側にある血管の細胞(血管内皮細胞)を傷つけます。腸壁を傷つけますので、これが血便の原因となっています。

ちなみに、veroというのは緑を表すラテン語に由来し、ベロ毒素が元々アフリカミドリザル腎臓上皮由来の細胞を壊すことから名付けられたのです。

ベロ毒素が血液に入り込むと恐ろしいことになる

ベロ毒素には、VT1とVT2の二種類があり、VT1は赤痢菌が産生する毒素(シガ毒素とも呼ばれます)とほぼ同一の毒素であることがわかっています。

ですから、腸管出血性大腸菌感染症の症状は、赤痢菌による感染症、いわゆる赤痢の症状とほぼ同じで、出血性の腸炎を起こします。

また、大腸だけではなく、血液に入り込むと、ベロ毒素によって全身の血管が傷つけられ、致命的になることがあります。

全身の血管が傷つけられると、毛細血管が詰まってしまい、そこを流れようとする赤血球が壊され(溶血)、貧血が起こります。

例えば、その典型例は、腎臓の血管内皮細胞が壊されて起きる急性腎不全です。腎臓は、体内でできた老廃物を尿として排出するための臓器ですが、急性腎不全になると、老廃物がたまります。急性腎不全により老廃物がたまると尿毒症になります。

このように、溶血と尿毒症が起ることを溶血性尿毒症症候群と呼び、腸管出血性大腸菌による感染症の重症例となるのです。

特に、免疫力の弱い、乳幼児や小児、基礎疾患がある高齢者では腎機能や神経学的障害などの後遺症を残す可能性のある溶血性尿毒症症候群になりやすく、致命率も高いので注意が必要です。

腸管出血性大腸菌(O157)の感染経路

腸管出血性大腸菌は食中毒が多発する初夏から初秋にかけて特に注意が必要ですが、気温の低い時期でも発生が見られることから、夏以外の季節も注意が必要です。

動物の腸内に生息しており、汚染された食肉やその加工品・飲料水を飲食することで感染します。ご家庭では感染者の便で汚染された手指で取り扱う食品などを介して、二次感染を起こすこともあります。しかしながら、衛生的な食材の取り扱いと十分な加熱調理、手洗い・消毒を徹底することで感染を予防できます。

腸管出血性大腸菌O157の特徴のまとめ

●初夏から初秋にかけて特に注意が必要
●乳幼児や小児、高齢者などは重症化しやすい
●家庭内では二次感染に要注意
●食中毒対策を徹底することで予防可能
●原因となる食品は様々

腸管出血性大腸菌O157の感染事例の原因食品等と特定あるいは推定されたものは、牛レバー刺し、ハンバーグ、牛タタキ、ローストビーフ、サラダなどで、様々な食品や食材から見つかっています。

腸管出血性大腸菌は人から人への感染に要注意!

腸管出血性大腸菌O157の感染は”食品”からだけではありません。感染者の便に含まれる大腸菌が直接または間接的に口から入ることによって感染します。

人から人への感染を予防する基本は手洗いです。家庭内に感染者がいる場合の主な注意点は以下の通りです。

●水洗トイレの取っ手やドアのノブなど、菌で汚染されやすい場所を塩素系消毒剤(次亜塩素酸ナトリウムなど)で消毒する
●感染者および家族は食事前など十分に手を洗い、消毒用エタノールなどでこまめに消毒する
●感染者の便を処理する場合(おむつ交換など)には使い捨ての手袋を用いる。また、おむつ交換は決められた場所で行う
●感染者の便で汚れた衣類は、他の人と別に洗濯する
●乳幼児は感染者の後に入浴しないようにする。また、バスタオルはひとりで1枚を使用し、共用しない
●食中毒の3原則を把握しよう

食中毒の3原則

食中毒はその原因となる細菌やウイルスが食品に付着し、体内に侵入することによって発生します。細菌を食べ物に「付けない」、食べ物に付着した細菌を「増やさない」、食べ物や調理器具に付着した細菌を「やっつける」という3つの原則が重要です。

①付けないこと
「つけない」ことが、もっとも重要です。菌がゼロであれば増殖しないので、つけなければ食中毒は起きません。

手にはさまざまな菌やウイルスが付着しています。食中毒の原因菌やウイルスを家庭では食べものにつけないように徹底しましょう。

調理に使用した器具、容器、手指をその都度洗浄・除菌しましょう。また、加熱しないで食べる生の野菜などにまな板や包丁の菌やウイルスが付着しないように、使用する前と後は都度きれいに洗い、「キッチン用アルコール除菌剤」「次亜塩素酸ナトリウム」などでこまめに除菌しましょう。

②増やさないこと
細菌の多くは高温多湿な環境で増殖が活発になりますが、10℃以下では増殖がゆっくりとなり、マイナス15℃以下では増殖が停止します。

食べものについた菌を増やさないためには低温で保存することが重要です。肉や魚などの生鮮食品などは購入後できるだけ早く冷蔵庫に入れ、迅速な調理と提供を心がけましょう。
但し、冷蔵庫の過信は禁物です。冷蔵庫に入れても菌はゆっくりと増殖するので、早めに食べましょう。

③やっつけること
ほとんどの細菌やウイルスは、加熱によって死滅します。肉や魚はもちろん、野菜なども加熱して食べれば安心です。特に肉料理は中心までよく加熱することが大事です。中心部は75℃で1分以上加熱することが目安です。野菜の除菌には、湯がき(100℃の湯で5秒程度)が有効であるとされています。

コロナ禍で特に注意したいこと

新型コロナウイルスの感染症と夏の食中毒対策は、「感染症」という大枠でいえば、重複する部分もあります。

ただコロナ禍では生活スタイルが変わってオンライン化が進み、人が動くよりも物が動く機会が多くなります。その結果、物を介しての感染が多くなると思われます。予防の大前提としては「手を洗う」ことが基本ですが、特にコロナ禍において多く想定される場面について、以下の点にご注意しましょう。

●持ち帰り・デリバリー(宅配)について
・調理してから4時間以内に食べるのが基本です。きちんと冷温保存し、買ったらすぐ食べましょう。常温保存は絶対にいけません。冷蔵庫に入れても細菌はゆっくり増殖するので過信しないようにしましょう。

・持ち帰り用には、保冷バッグ、保冷剤を持参しましょう。持ち帰りの時間を計算しましょう。時間がかかる場合は保冷剤などの量を増やすなど考えましょう。

●弁当を手作りする場合
・調理する人の鼻の粘膜や手指の傷(特に手荒れしている手指)についている常在菌(黄色ブドウ球菌)に感染する可能性があるので、調理前の手洗いは必須です。おにぎりなどは素手で握らない。調理用具や容器は消毒しましょう。

・食材はできだけ新鮮なものを使い、前日の残り物は使用しないこと。残り物を使用する時は必ず再度加熱すること。水分の多いものは避け。食材は十分に加熱しましょう。

・おかずやご飯は冷めてから詰める。おかずとご飯も分けて詰めましょう。

・お弁当を持って行く先の環境や条件によってもお弁当の保存状態は変わってきます。夏場は保冷剤を使用するなど、温度管理に十分注意しましょう。気温の高い夏場でもない限り、朝作ってから6~7時間が安全と言えますが、お昼すぎには全部食べてしまうことが安心して食べられる目安です。

●野外でバーベキューなどを行なう場合
・普段の衛生管理と同じですが、箸や食器類を(家族でも)共用しないようにしましょう。

・料理やお菓子も必ず小分けし、個別に取り分けた分だけ食べ、アルコール類の回し飲みは止めましょう。

・トングやまな板などは、肉や野菜など食材別に複数用意しましょう。

・食材はクーラーボックスなどに入れ、保存温度に気を配ってください。

・食材の加熱ムラには十分に注意しましょう。

●手指消毒用エタノールの取り扱い
・使い切ったら容器ごと廃棄をお薦めします。ただし詰め替えを行なう場合は必ず容器を消毒液などで洗浄、乾燥してから使用する(特に液が残った状態での継ぎ足しは厳禁)

・次亜塩素酸ナトリウム系の消毒液は、使用濃度や保存期間を守って使用してください。

●マスク着用の効果を知る
・まずは適切につけましょう。(表裏や上下、マスクのひだが飛沫落下を防止することの意味を知り、正しく使う)

・飛沫感染だけでなく、手で無意識に目鼻口(感染源)を触るリスクを下げるので、鼻からあごまできちんと覆いましょう。

●身体を冷やし過ぎない
食中毒を含めた感染症は、細菌やウイルスが宿主(寄生される動植物)の組織に入り込んで増殖しますが、身体を守るために免疫が働いて、異物(病原体)を排除します。つまり免疫のシステムがきちんと機能すれば、感染症にかからないわけです。

ですから、糖尿病などの基礎疾患がある人や高齢者、乳幼児や妊産婦など、免疫が弱い人・低下している人は、特に注意が必要です。

また健康な人であっても、過労や睡眠不足、ストレスなどでホルモンのバランスが崩れると免疫がうまく働かないことがあります。免疫は体温が高いと活性化するので、冷房等で身体を冷やしすぎると免疫力が低下する恐れがあります。

さらに粘膜が乾燥すると防御機能も弱まります。マスクは粘膜の乾燥を防ぐ反面、熱がこもりやすいので、これからの季節は熱中症にも気を付けながら適切にマスクを使って、新型コロナも食中毒も防ぎましょう。

免疫を正しく機能させるために、日頃から適度な運動とバランスのいい食事、十分に睡眠をとり、よく笑えるようなストレスをためない生活をしましょう。

腸内環境を強化しよう

「元気の元は胃腸から」と昔から言われています。腸内は食べた物を消化・吸収・排泄するところだけではなく私達の生命を維持するためにたくさんの機能を備えています。

例えば、腸内にはウイルスや細菌などの有害物質から身体を守るために腸には免疫細胞の約70%が存在しています。ですから、腸内環境をしっかり整えましょう。

腸内環境を良好にするサプリメントがありますので上手に利用しましょう。