下痢になる3つのパターン

下痢が起こる3つのパターン

下痢は便秘とは反対の症状ですが、日頃から下痢に悩まされている人は多いものです。

健康な大人の便には70~80%の水分が含まれていますが、この水分が85%以上まで増えた状態が下痢なのです。体の水分リサイクルとして排出される便の水分量としては僅か100gなのですが、下痢になると倍くらいの水分が排出されます。

下痢の起こる3つのパターン

下痢というと、一日に何度もトイレに駆け込む状況を思い浮かべると思いますが実際は排便の回数は殆ど関係がないのです。一日一回でも泥状や水状なら下痢です。一日に何回もトイレに行く状態でも形があれば下痢ではないのです。よく勘違いされる方がいます。

下痢の起こり方は次の3つのパターンがあります。

(Ⅰ)腸が激しく運動しすぎて食べ物の通過時間が速くなり、大腸が水分を充分に吸収しなくなる場合

(Ⅱ)腸粘膜などからの水分が過剰になって、大腸の吸収能力を超える場合

(Ⅲ)大腸の粘膜の水分吸収能力が衰えてしまった場合

この三つがお互いに関連し合って、下痢が起こっているのです。

腸が異常をきたす3つの要因

それではパターンごとに見てみましょう。

(Ⅰ)腸が激しく運動しすぎて食べ物の通過時間が速くなり、大腸が水分を充分に吸収しなくなる時

①その原因の一つは腸粘膜を異常に刺激するようなものを食べた時。
消化しにくいものを食べ過ぎて、胃や腸が消化不良を起こすと、その食べ物が異常発酵や腐敗を起こします。それによってできた物質が粘膜を刺激するのです。有毒物質を食べたり、病原菌が腸内で毒素を出した時にも同じことが起こります。

飽食の時代、美味しいものが巷に溢れています。誰もが美味しいものを食べたいという基本的な欲求は当たり前ですが、その欲にまかせて暴飲暴食になっていくのも現代人の特徴です。暴飲暴食は胃腸に負担をかけます。

そうした状態で起きやすいのが急性下痢です。体に悪いものを速く排出したいという自己防衛的な生理現象です。こうした急性下痢は一過性で終わることがしばしばです。出てしまえば下痢は治まります。

②腸粘膜に何らかの病変があって、刺激に対して過敏になっている時

腸内の粘膜が炎症や潰瘍を起こすと、それが腸壁に対して異常刺激として働いてしまい下痢を起こします。

③腸の働きを支配している、自律神経に異常をきたしている時

精神的な緊張、特にストレスが原因となって交感神経よりも副交感神経が優位になり興奮してしまうのです。

あるいは、最近毒素が原因となって、水分の分泌が異常になる場合もあります。逆に、水分の吸収に異常が生じる場合では、腸管の吸収系の欠損、吸収実効面積の減少、腸内フローラの異常、消化不良などが原因として考えられます。

下痢の症状は2種類、急性と慢性

下痢の症状は大きく分けると急性と慢性の2種類です。

(Ⅰ)急性下痢の場合
急性下痢を起こす原因のほとんどは、暴飲暴食や刺激物・アルコールの摂りすぎなど、生活習慣の乱れに基づくものです。

それ以外に多いのは、ウィルスや細菌の感染によるものや食あたりによる下痢です。そのほか、薬剤性の下痢や心理的要因によるものなどがあります。

急性下痢の中には、命に係わる病気が隠れているケースがまれにあります。例えば、細菌感染が重症化した場合(敗血症)や心筋梗塞、大動脈瘤の破裂、胃腸からの出血などの初期症状が下痢である、ということがあり得ます。

これらの場合は、下痢のほかに腹痛や胸痛、血圧低下・ショック症状など他の症状が一緒に現れますので、注意が必要です。

また便秘と同様にストレスも大きな原因の一つです。入試の前日や年末年始、仕事がハードな時期、会議の前、引越、転勤、人間関係で悩むなどと、ストレスを抱えると必ず下痢をするというタイプの人も多いのではないでしょうか。

(Ⅱ)慢性的な下痢の場合
慢性的下痢の場合、数週間で終わるものもあれば、一年以上続いてしまうものもあります。急性下痢の場合は、一日に何十回もトイレに行くことがありますが、慢性下痢の場合、それほど回数は多くありません。

トイレに駆け込むのは一日に1~2回で、あるいは周期的に下痢と便秘を繰り返す(交替制下痢)のようなこともあります。

胃、小腸、膵臓、肝臓、胆のうなどの疾患が原因の場合は殆どが慢性下痢です。

慢性下痢に血液が混じったり、発熱、全身の衰弱、食欲不振、体重の減少などがある時にはクローン病、潰瘍性大腸炎、大腸ガン、アメーバー下痢、更に乳糖不耐症、薬剤性の下痢などがあげられます。

最近非常に増えてきたのが過敏性腸症候群という病気です。

過敏性腸症候群は、腸そのものに異常はないのに腸の動きや分泌機能に異常が出る病気であり、ストレスなど心理的要因も原因の一つとされています。

腸に異常があるような病気の場合は、やはり下痢のほかに体重減少や発熱、貧血などの症状を伴うことが多いので、鑑別(病気の見分け)に役立ちます。

現代の若者にこうした腸の病気が増加しています。その原因として、食生活による腸内環境の乱れによるものが大きな要因となっていると言われています。

下痢になった時の対処法

(Ⅰ)急性下痢の場合
急性下痢の場合、下痢の時は絶食という、実に基本的な方法です。胃腸を休ませ、体力を消耗させず、腸の運動を刺激しないためには何よりも安静を保つことが必要です。

実際、軽い下痢なら食事を1~2回抜くだけで回復します。しかし、ここで注意しなければならないのは、あまりにも絶食しすぎて体力を消耗させると、逆に回復能力が落ちてしまうことです。絶食はあくまでも胃腸を休ませ、食事療法を始めるための準備だと考えましょう。

絶食をした後は、いきなり普通食に戻らず、消化の良い食事、お粥やスープなどから始めてください。それから、下痢の時は水分を大量に排泄しまうので、絶食中といっても水分だけは充分に補給して下さい。

水を飲むと何回もトイレに行かなければならなくなるからなどと言って、水を飲まずに我慢していたら脱水症状を起こして倒れてしまいます。但し、冷たい飲み物は腸の運動を刺激してしまいますから、熱いお茶、白湯などで補いましょう。

また塩分も必要ですから梅干しくらいは食べてください。熱いお湯に梅干しを入れてほぐしながら飲むのと、美味しく塩分補給水分補給と一石二鳥です。

絶食して、空腹感を覚えるようになったら、先ほども述べましたが、いきなり普通食ではなくて消化の良いものから始めて普通食に戻しましょう。普通食に戻るまでは脂肪やせんいの多い食品は避けて下さい。特に下痢をすると腸内の善玉菌が減少していますので、ビフィズス菌、乳酸菌や納豆菌など腸内善玉菌などを補うと更に効果的です。

急性下痢の対処法をまとめると

①絶食する
②水分補給をする
③塩分補給も忘れずに
④食事は徐々に消化の良いものから
⑤普通食に戻るまで脂肪、せんいの多いものは避ける
⑥腸内善玉菌(サプリメントも可)を積極的に補給する

(Ⅱ)慢性下痢の場合
慢性下痢の場合はまず原因を見つけてから改善していく必要があります。必要なら病院で精密検査をして本格的な治療と食事療法をしましょう。

下痢が長引くと、それによって栄養が低下するだけでなく、本人が神経質になって食事を制限しすぎるため、益々栄養の低下を招き、下痢が治らないことになります。

ですから、慢性的な下痢の方の食事療法として、高カロリー食品やビタミンなどを積極的に補給することを中心に考えましょう。

しかし、消化の悪い食物せんいが多く含まれている野菜や果物を食べ過ぎないようにして下さい。ヨーグルトなどは消化吸収されやすいので、積極的に摂っても良い食品です。

最近では腸内善玉菌を補うサプリメントや野菜のサプリメントもありますので、上手に使うのも効果的です。

慢性的な下痢の方は腸内フローラが乱れています。腸内フローラを整えることが改善の早道になります。


精神的なものも大きくかかわってきますので、ストレスを溜めない工夫も大切です。

慢性下痢の対処法をまとめると
①下痢の原因を見つけるために精密検査をする
②栄養不良防止に食事に気を付ける
③腸が喜ぶ食品を積極的に摂る
④サプリメントを利用するのも良い
⑤ストレス回避を工夫する

お腹の弱い方は日頃から腸をいたわる

食べ過ぎるとすぐ下痢になりやすい、心配事があるとすぐ下痢になる、ある特定な食べ物を食べると下痢になるなど、体質的に下痢になりやすいという人は、日頃の生活を振り返って、腸の健康に良くないことをしていないか、以下の事柄をチェックしてみましょう。

生活習慣チェック

□アルコールや冷たい物を飲みすぎていませんか?
□外食が多く、栄養のバランスが乱れていませんか?
□睡眠不足や運動不足が続いていませんか?
□仕事などでストレスが続いていませんか?
□体が冷える環境で過ごすことが多くありませんか?

生活習慣が乱れると腸内環境も乱れてきます。腸内環境が乱れると下痢や便秘を起こしやすくなります。下痢になりやすい人は、食生活や生活習慣を見直し、腸内フローラを良い状態に保つことを心がけるようにしましょう。

私たちの腸の中にすんでいる細菌は、約500~1000種類、100兆個以上にも及ぶといわれ、これらは勢力争いをしつつ、数のバランスを保ちながら、一種の生態系を形成しています。小腸の終わりから大腸にかけての腸の壁に、種類ごとにびっしりと分布していることから、お花畑にたとえて「腸内フローラ」と呼ばれています。

腸内フローラのバランスが良いと腸内環境が整い、病気に負けない丈夫な身体になります。

腸内環境を整えよう

腸内には様々な細菌が棲みついています。人の腸に棲みついている腸内細菌以外に、食べ物といっしょに入ってきても定住することができず、最終的には出て行ってしまう菌も存在します。こうした菌を「通過菌」といいます。

人の腸内に定住せず通過してしまう菌のうち、ヨーグルトやチーズ、納豆などの発酵食品に含まれる乳酸菌や納豆菌などは、通過菌であっても善玉菌の代表であるビフィズス菌を増やす働きをすると同時に、腐敗菌の増殖を抑える働きもあり、腸内環境を整えるのに役立っています。

納豆菌は、胞子(芽胞)をつくり、温度や酸に強い状態になって生き延びることができます。胃酸にも耐えるので胃を通って小腸から大腸上部に達して発芽し、善玉菌の増殖を助けます。通り過ぎていく納豆菌は、腸にとってありがたい存在なのです。

腸内環境を整える納豆菌のサプリメントがありますので、上手に利用してみましょう。そうするなら速く下痢の改善に役立ちます。