下痢の原因・下痢が続く、下痢が治らない
最近は長引くコロナ禍で先の見通しが立たず、ストレスを抱え込む人も少なくありません。また、災害による不安など様々な心配事がたくさんあります。
ストレスが溜まると体に異変が起こります。その異変の一つに下痢という症状があります。
ストレスによる下痢は過敏性腸症候群
下痢になると気分も優れず、しかも2、3日の下痢ならともかく、下痢が一週間も続くと不安になります。
長引く下痢は、体調だけでなく、心の調子まで崩す原因になります。
ストレスによる下痢は過敏性腸症候群と言われ、もはや本格的な病気の一つです。
下痢の原因となる過敏性腸症候群とは
過敏性腸症候群というのは、慢性の経過をたどって、腹痛や腹部膨満感、下痢や便秘などの便通異常があります。
慢性の経過とはその症状が再発・再燃を繰り返し、炎症や腫瘍などの器質的疾患は除外されます。
食事の内容によっては翌日ちょっと下痢になったり、便秘になったりする。
そういう一時的なものではなくて、慢性的下痢や便秘です。
つまり過敏性腸症候群とは、検査をしても、がんや炎症、潰瘍など、目に見える異常がないにもかかわらず、下痢や便秘、腹痛などがおこる病気です。
●脳と腸の関係
過敏性腸症候群の病態はいろいろと研究されていますが、一番大きな原因はストレスが非常に影響しているといわれています。
「脳腸相関」という言葉があるのですが、脳でストレスを感じると、腸がそれに反応して敏感になってしまうのが過敏性腸症候群の病態だと考えられています。
発症の頻度は欧米の調査ではだいたい人口の10~20%と報告されています。
日本の調査でも15%前後といわれています。発症年齢は、やはり若年者で、20~30歳代が一番多いのですが、さらに70~80歳代にも一つのピークがあるとわかっています。
若者も悩みが多く、生活の環境の変化も大きいのですが、70~80歳代もこの時期には生活環境が大きく変わり悩みが増えてきます。
定年になり、家族の中での立場が複雑になり、ストレスを受けるようです。
●脳の不調が腸に伝わるから
脳の不調は腸に伝わり、腸の不調は脳に伝わります。
ですから胃腸は、脳のストレスの影響を最も受けやすい器官と言われ、心身のストレスが原因となって、さまざまな胃腸の疾患を発症したり、症状が悪化すると考えられています。
体の最上部にある脳と、臓器の下部にある胃腸には、どのようなつながりがあるのでしょうか。
脳と胃腸は、自律神経でつながっています。
自律神経は内臓や血管などに分布し、消化や呼吸、血液の循環、代謝などの働きを調節するなど、私たちが自分自身でコントロールできない神経です。
自律神経は交感神経と副交感神経という、相反する働きを持つ2つの神経からなり、交感神経は体各器官を刺激して活発にし、主に昼間に作用します。
一方、副交換神経は、消耗したエネルギーを回復させ、栄養素を補給するときに働き、主に夜間に作用します。こうした働きがバランスよく正常におこなわれることで健康を維持することが出来るのです。
●脳のストレスが強いと腸が機能異常を起こす
脳のストレスが強いと、 自立神経の働きが乱れます。
ストレスなどによって交感神経の働きが強くなると、 胃腸の働きが低下します。
例えば、 海外旅行で慣れない土地に行くと、 その緊張から便秘になることがあります。
これは脳がストレスを感じ、 胃腸に伝わるためです。
このように脳のストレスが腸に伝わり、腸が機能異常を起こします。
交感神経から副交感神経へのスイッチの切り替えは、 脳の緊張をといてリラックスさせることが大切です。
●腸の異常機能はうつにもなる
腸自体に異常がないのに、 大切な試験の前や重要な会議の前になると、下痢をしたり便秘になったりする、過敏性腸症候群はうつ症状やさまざまな不定愁訴が現れることがあります。
うつ状態は、脳がストレスを受けており、自律神経の失調を引き起こし、ひどい場合は肩こりや頭痛などの身体症状を伴うこともあります。
●腸の異常機能は生理不順を起こす
生理不順や月経困難症の女性は、 胃腸の働きが悪いために、便秘や頭痛を訴えることもあります。
このような症状は、自律神経のバランスが崩れたり、 ストレスによって血行が悪くなることが関係していますが、 まず胃腸を整えることが必要になってきます。
胃腸の調子がよくなると、 それだけで、 生理不順や月経困難症が軽くなる場合</s trong>があります。
このように、 胃腸がストレスを受けると、 脳で不快な経験として知覚し、 その脳での反応が消化管機能を悪化させるという悪循環を招きます。
こうした脳と胃腸の関係を「脳腸相関」と言います。
脳ストレスは免疫力が下がり、下痢にも更になりやすくなる
昔から、感情の荒ぶりを「顔を真っ赤にして怒る」「頭に血がのぼる」と表現しますが、実際に「怒り」の感情が私たちの体に影響を及ぼします。
怒ると交感神経が刺激され、自律神経が乱れて、血管は収縮して、心拍数や血圧が上昇、血流の悪化を招きます。
その結果、細胞は栄養不足になり、老廃物や疲労物質は排出されにくくなります。血液循環が悪くなると、脳梗塞や心筋梗塞を起こすリスクが上がります。
怒りで交感神経が過緊張になれば、リンパ球が減り、がんと闘ってくれるナチュラルキラー細胞も減るので、感染症にかかりやすくなったり、ガンになりやすくなったりします。
勿論腸にも影響しますので、下痢はなかなか改善されません。
怒りは吐きだした方がいいとも言われますが、自律神経が長時間乱れる原因になるので注意が必要です。また、怒ると発生するのが、体を酸化させる活性酸素です。
毎日イライラしていると、どんどん体が錆びてしまうかもしれません。
下痢の改善のためにも、短気は損気です。すぐに怒ることなく、穏やかに過ごしましょう。
過敏性腸症候群は下痢になる男性と便秘になる女性と異なる
過敏性腸症候群は基本的には腹部症状、すなわち腹痛や腹部不快感を認めます。
それから便通異常を伴います。
すなわち下痢や便秘のどちらかの症状を伴うということが基本的にはあります。
過敏性腸症候群には男女差がかなりあり、一般に数としては女性のほうが多いとされています。
男性はどちらかというと下痢に傾き、女性は混合型といって下痢と便秘を繰り返したり、あるいは便秘に傾く方が多いといわれています。
●過敏性腸症候群は時間で異なる
過敏性腸症候群は、昼間、特に午前中に症状が強いという特徴があります。
例えば、学校に行く前とか、会社に行く前に非常に症状が強くなります。
一方、夜間に症状が出ることはまれです。過敏性腸症候群は本人がその症状で非常に悩みますので、生活の質が落ち、仕事にも影響が出てきます。
場合によっては、重症の方の中には学校に行けなくなったり会社に行けなくなったりする方もおられます。
●過敏性腸症候群の方は便失禁がある
また高齢者では便失禁を訴える方がおられますが、過敏性腸症候群や肛門に特に器質的な病気はないけれども、何らかの機能的な原因でお通じが出てしまう状態です。
高齢者では非常に多く、高齢者の10~20%の方に認められます。
年齢を重ねると、どうしても肛門括約筋の機能が弱ってきます。
もう一つは、肛門の内側のところ、つまり肛門の栓になるところですが、ここの機能も弱ってしまうので便が漏出してしまうということがいわれています。
更に、便失禁だけでなく、ガスも漏れてしまう、すなわちおならが漏れてしまう場合があります。
この場合には肛門失禁という言葉を使うのですが、どちらも非常に患者さんにとっては辛いものです。
●過敏性腸症候群の方は過敏性膀胱
過敏性腸症候群の方の場合には、過敏性膀胱を合併することが多いといわれています。
試験の前に緊張するとトイレに行きたくなることはよく経験したと思います。
これはお通じだけではなくて、おしっこのほうも行きたくなる方が多いと思われます。
その場合には一時的なもので、病態としては少し違う状態なのですが、緊張により膀胱と腸の両方が敏感になってしまうということです。
過敏性腸症候群の方では、その反応がより強く出るということがいわれています。
●下痢を改善するには生活習慣を改め、薬は補助的に
一番大事なのは、生活習慣を改善し、ストレスがかからないようにすることです。
食生活や排便習慣の改善、適度な運動と睡眠が大切です。
下痢には消化吸収のよい低脂肪食、便秘には食物せんいを多く含んだ食品がよいといわれます。
腸を刺激する脂肪、食塩、砂糖類、アルコール、カフェインはとりすぎないように気をつけてください。
とくに脂肪分は胃に入ると、腸の収縮を促すので、腸のけいれんを悪化させるおそれがあります。
便秘が続く時には、食物せんいを多く含む野菜、全粒穀物(玄米、全粒パン)、胚芽米、果物、豆類、魚、海藻、キノコ類を多くとりましょう。
排便習慣を改善するには、まず暴飲暴食を避け、規則正しい食生活、軽く汗をかく程度の運動、十分な睡眠と休養を心がけ、生活にリズムをつけることです。
便意をもよおさなくても、食後の決まった時間にはトイレに行くよう習慣づけましょう。
緊張や不安などのストレス、精神症状の改善を図るうえで、抗うつ剤や抗不安薬、下痢止めなどあり有効な場合もありますが、薬の使用は、あくまでも補助的なものと考えましょう。
軽症の場合は、腸の働きを整える整腸剤、腸内環境を整えるサプリメントなどを使用するといいでしょう。
この病気に対する治療のゴールは、日常生活に支障がなくなる程度に過敏性腸症候群を抑えることです。生活習慣を見直し、辛い時には医師と相談しながら、じっくりと構えて対処すると、ほとんどの方が改善していきます。
●脳と腸を深い関係は言葉にもある
日本には昔から腹 ( 腸 ) と心 ( 脳 ) の深い関係を示唆する表現がたくさんあります。
「腹が立つ」「腹黒い」「太っ腹」「腹の探り合い」「腹に一物あり」などです。
このような言葉が数々あるということは、脳と腸の類似性、共通性が医学的に明らかになっていない時代から、日本人は腸と脳の関連性に気づいていたのです。
先人の知恵というのは素晴らしいものと感心します。
「怒りは体を壊す」とあります。穏やかな日々は健康を齎します。
腸内環境を整えよう
「元気の元は胃腸から」と昔から」言われています。
まずは腸内環境をしっかり整えることが重要です。
しっかり整った腸内になると殆どの病気は改善されます。
腸内環境を整えるサプリメントがありますので、上手に利用しましょう。
下痢の改善は一段と早くなります。