下痢には様々な原因があります。昔からお腹を下した時には、おなかを温めるなどをして、民間療法でかなりの下痢は治っていました。
下痢の原因は腸管の運動異常
ところが最近は下痢の原因が複雑になり、その下痢の原因の多くは不明のまま、慢性的な下痢に悩まされている方も多くおられます。
様々な下痢の原因がありますが、どれも同じ「下痢」という症状が現れますが、それぞれ下痢の原因、仕組みは全く違います。
下痢の原因が共通しているのは、便の中の水分量が多くなって、下痢になるということです。つまり腸内での水分調節に異常が起きたという事です。
では便の水分が多くなる原因は、どのように違ってくるのでしょうか。大きく4つ、①滲出性下痢 ②分泌性下痢 ③浸透圧性下痢 ④腸管の運動異常による下痢に分けることができます。今回はシリーズでお伝えしている第4番目の腸管運動の異常による下痢について考えてみましょう。
腸管の運動異常とは
腸管運動という言葉はあまり聞きなれないものかもしれませんが、体内に取り込まれたものを混ぜたり、不要になったものを肛門側へ押し出すために無意識的に行われている運動です。
腸管の運動異常で起こる下痢はこうした腸の動きが亢進(活発化)したり、抑制されることで起こるのです。
腸管の運動種類
消化器系の一部である小腸では、分節運動、振子運動、ぜんどう運動と言った3種類の運動が行われています。分節運動では腸の内容物を混ぜ合わせる役目を果たしており、腸内に分布している輪走筋によって行われています。
振子運動では縦走筋が働き、腸管を縦方向に伸縮させ腸内の内容物の混和に役立っています。ぜんどう運動では主に輪走筋が働いて不要なものを肛門側へ送り込む働きをしています。
大腸では小腸で行われている運動の他に、大ぜんどうも行われ輸送が一気に行われています。
小腸で起こるぜんどう運動は腸管壁にある神経によって起こるものや、小腸に分布している平滑筋自体によって分節運動が行われていることもあります。
腸管は自律神経が関与
一般的に小腸運動は自律神経のうちの副交感神経の刺激で活発になり、交感神経の刺激で抑制される仕組みになっています。大腸の運動も副交感神経の働きによって促され、交感神経の働きによって抑制されます。
自律神経は体を安定した状態に保つために働いていますが、ストレスなどの精神的なものによって不和を起こしてしまうことが多々あります。
小腸や大腸にも自律神経が分布し、腸管の炎症がみられないのに下痢をしてしまう過敏性腸症候群ではストレスが原因となって、腸管の運動異常が引き起こされるのでは、と考えられています。
このような腸管の異常運動による下痢では、薬で症状を抑え込もうとしても原因となるストレスが排除されない限り根治は難しいと言えるでしょう。お腹を下してしまった時には、体からの何らかの警鐘だと思って受け止めることが大切です。
腸管運動が亢進した場合の下痢
腸の動きが活発になりすぎると、便の移動時間がとても早くなります。健康な人の場合、栄養や水分を吸収するために、便は24時間~72時間は腸内に留まり、ゆっくりと固形化します。
しかし、腸の動きが亢進することで、水分を吸収する間もなく便が排出されてしまうため、下痢になってしまうのです。
過敏性腸症候群(IBS)や甲状腺の機能亢進、大腸がんなどで腸の切除手術を受けた場合などがこれに当たります。
腸管運動が抑制(低下)した場合の下痢
腸の動きが低下すると便秘になりそうなものですが、下痢になる場合もあります。腸管の動きが低下すると、今度は便がなかなか動かなくなります。
すると、腸内の悪玉菌(腸内細菌)が異常繁殖し、腸の水分吸収能力が低下、便の水分量が減らず、下痢になります。糖尿病や甲状腺の機能低下によって起こる下痢は、これに当たります。
糖尿病の合併症による下痢
糖尿病になると、高血糖の影響で、体のあちらこちらに悪い影響を及ぼします。糖尿病の合併症のひとつに、自律神経の障害があります。
下痢の原因は、自律神経の障害により腸の運動機能が低下し、小腸の上部を中心に腸内細菌(特に悪玉菌)が異常に増殖して腸内で発酵したガスが、腸を刺激するためと考えられています。
このような症状は、長い間、高血糖の状態が続き、消化管の働きを調整している自律神経の障害や細小血管の障害が元となって初めて発症します。
そのため、長期間血糖のコントロールが上手くいかないという自律神経障害の強い人に、下痢が続くという症状が現れるようです。しかも下痢は昼夜を問わず発生します。
糖尿病が原因の下痢は、ふつうの下痢止めでは効かないことが多く、かなり強い薬を用います。しばしばトイレに間に合わなく便失禁をしてしまうこともあり、日常生活に支障をきたす事があります。
ですから、糖尿病の方は、食生活でしっかりと血糖コントロールを良くしておくことがとても大切になります。
甲状腺機能低下症による下痢
甲状腺機能低下症は、腹痛・下痢・便秘などの症状がでる病気です。 ホルモンが適切に分泌されなくなりますので、疲れやすい・脱力感などの全身症状。
集中力低下・忘れやすいなどの精神症状。発汗低下・皮膚が乾燥するなどの皮膚症状がでます。
甲状腺機能低下症は自己免疫疾患です。通常人間の身体は外部からのウイルスや細菌に対する免疫を持っていますが、甲状腺から分泌されるホルモンが減少することにより、免疫機能が正常に働かず自分の身体を攻撃してしまい、全身にさまざまな症状がでます。
甲状腺機能低下症の原因は、まだはっきりとはわかっていませんが、体質や遺伝的な要因が関係していると考えられています。
一度甲状腺機能低下症になると、完全に回復することはほぼありませんので、生涯お薬を服用し続ける必要があります。
腸内環境を整えて下痢を改善する
慢性的な下痢の主な原因は、ストレスや生活習慣の乱れによって起きた腸内バランスの悪化です。下痢を改善するには、まず、腸内環境の改善が欠かせません。
乳酸菌は善玉菌のエサになり、悪玉菌を抑制します。乳酸菌は毎日続けないと意味がありません。ヨーグルトを買ってもすぐに食べ忘れてしまったり、買い忘れてしまう人はサプリメントがおすすめです。
健康は何といっても腸が元気であれば、つまり腸内環境が正常であれば、たとえ腸内に悪いものが入ってきたとしても、腸内で増殖しない様に、あるいは素早く排出することができます。腸内環境を整えるのに必要なサプリメントがありますので、上手に利用しましょう。