執筆・監修:箕浦雅子(薬剤師)|株式会社健将 代表取締役
「ゼラチンを食べると下痢になる」
「ゼリーを食べるとお腹がゆるくなる」
「グミを食べたあとに腹痛が起きる」
このような経験があると、「ゼラチンが体に合わないのでは?」と思うかもしれません。
結論からいうと、ゼラチンそのものを、一般的な下痢の原因と考える十分な根拠はありません。
ゼラチンはコラーゲン由来のタンパク質です。摂取されたゼラチンやコラーゲン由来タンパク質は、消化の過程でアミノ酸やペプチドとなり吸収されます。[1][2]
ただし、ゼリーやグミなど「ゼラチンを使った食品」を食べたあとに、下痢や腹痛が起こることはあります。
その場合には、
- 一度にたくさん食べた
- ソルビトールなどの糖アルコールが入っていた
- 乳製品や果糖など、ほかの原材料が関係していた
- もともと胃腸が敏感だった
- まれにゼラチンアレルギーがある
など、ゼラチン以外の可能性も含めて考える必要があります。
この記事では、「ゼラチンそのもの」と「ゼラチンを使った食品」を分けながら、お腹がゆるくなる原因を整理していきます。
ゼラチンそのものは下痢の原因になる?
まず知っておきたいのは、
「ゼラチンを食べると下痢になる」
と単純には言えないということです。
ゼラチンは、牛や豚などの皮や骨などに含まれるコラーゲンを加工して作られるタンパク質です。
食品では、
- ゼリー
- グミ
- マシュマロ
- 一部のデザート
などに使われるほか、医薬品やサプリメントのカプセルなどにも使われています。
ゼラチン摂取後の吸収を調べた研究では、消化されたゼラチン由来成分がアミノ酸やペプチドとして吸収されることが確認されています。[1]
ただし、[1]はラットを用いた動物試験です。そのため、この研究だけから、人での消化・吸収量をそのまま断定することはできません。
一方、コラーゲン由来タンパク質についてまとめたレビューでも、摂取されたタンパク質が消化され、アミノ酸や一部のペプチドとして腸管から吸収される過程が整理されています。[2]
したがって、
「ゼラチンは消化できないから下痢になる」
という説明は適切ではありません。
グミやゼリーで下痢するなら「ゼラチン以外」も確認

グミやゼリーには、ゼラチンだけが入っているわけではありません。
商品によっては、
- ソルビトールなどの糖アルコール
- 果糖
- 果汁
- 乳製品
- 甘味料
なども使われています。
そのため、
「グミを食べたら下痢した=ゼラチンが原因」
とは限りません。
まずは原材料表示を確認し、ゼラチン以外に何が入っているのかを見てみましょう。
ソルビトールでお腹がゆるくなることがある
グミやシュガーレス菓子などで確認しておきたい成分の一つが、ソルビトールです。
ソルビトールは糖アルコールの一種です。
十分に吸収されなかったソルビトールが腸管内に残ると、浸透圧によって水分が腸管内に引き込まれ、摂取量によっては腹部膨満感、腹痛、下痢などにつながることがあります。
Hyamsの研究では、健康な成人7人に5g、10g、20gのソルビトールを摂取してもらったところ、10gでは多くの被験者にガスや膨満感などの軽い消化器症状がみられ、20gでは腹部けいれんや下痢などの強い症状がみられました。[3]
ただし、この研究は7人という非常に小規模な試験です。
したがって、
「10gなら下痢しない」
「20gなら必ず下痢する」
という基準ではありません。
症状が出る量には個人差があります。
厚生労働省もソルビトールの緩下作用を示している
厚生労働省は「D-ソルビトールを多量に添加した食品について」という通知を出し、ソルビトール摂取量と緩下作用との関係について情報を示しています。[4]
ただし、資料に示された数値も、すべての人に共通する「安全量」や「下痢になる量」を意味するものではありません。
体重、摂取量、食品の形態、個人の消化吸収能力などによって反応は異なります。
グミやゼリーを食べたあとにお腹がゆるくなる場合には、
「ソルビトールが含まれているか」
「どのくらい食べたか」
を一緒に確認すると、原因を整理しやすくなります。
グミを食べ過ぎて下痢するのはゼラチンのせい?
必ずしもそうではありません。
グミを一度にたくさん食べた場合には、
- 糖アルコール
- 糖質
- 果糖
- 食べた量そのもの
など、複数の要素が重なります。
特にソルビトールを含む商品では、摂取量によって消化器症状が起こる可能性があります。[3][4]
また、グミを食べたあとに下痢や腹痛が起きると、
「香料や添加物が原因なのでは?」
と考える方もいるかもしれません。
しかし、グミを食べたあとの下痢を一括して「香り」や「添加物」が原因と説明することはできません。
原因を考える場合は、ソルビトールなどの糖アルコール、果糖、乳製品、食べた量など、具体的な原材料と摂取量を確認する方が適切です。
ゼリーでお腹がゆるくなる場合は?
ゼリーの場合も考え方は同じです。
ひと口にゼリーといっても、
- ゼラチン
- 寒天
- ペクチン
など、商品によって使われている材料は異なります。
さらに、
- 果糖
- 果汁
- 糖アルコール
- 乳製品
などが入っている商品もあります。
そのため、
「ゼリーを食べると下痢する=ゼラチンが原因」
とは限りません。
たとえば、
「ゼラチン入りのゼリーだけで症状が出るのか」
それとも、
「寒天やペクチンを使ったゼリーでも同じことが起きるのか」
を確認すると、原因を整理しやすくなります。
ゼラチンアレルギーは実在する
ゼラチンによるアレルギーは、一般的な消化器症状とは分けて考える必要があります。
ゼラチンアレルギーは実在します。
Sakaguchiらは、ワクチン接種後に即時型の全身性アレルギー反応を起こした小児を調べ、ゼラチン特異的IgEとの関連や、一部の小児でゼラチンを含む食品によるアレルギー反応がみられたことを報告しています。[5]
ただし、この研究は、ワクチン接種後に全身性反応を起こした小児という特殊な集団を対象にした研究です。
そのため、この結果から一般人口におけるゼラチンアレルギーの頻度を推定することはできません。
ゼラチンアレルギーでは、
- じんましん
- 皮膚のかゆみ
- 赤み
- 腹痛
- 吐き気
- 下痢
- のどの違和感
- 息苦しさ
などが起こることがあります。
重い場合には、アナフィラキシーを起こす可能性もあります。[5][6]
「ゼラチンを食べ過ぎるとアレルギーになる」とは言えない
ゼラチンアレルギーは、
「ゼラチンをたくさん食べたから起こる」
「食べる量を減らせば予防できる」
と単純に説明できるものではありません。
アレルギーは免疫反応であり、ゼラチンの摂取量だけで発症や予防を説明することはできません。[5][6]
そのため、ゼラチンを食べる量だけを気にしてアレルギーを予防しようとするのではなく、実際にアレルギーが疑われる症状がある場合には医療機関で相談することが大切です。
ゼラチンアレルギーがある人はカプセルにも注意
ゼラチンは食品だけでなく、医薬品にも利用されています。
日本では、ゼラチンを含むジェルカプセルの感冒薬を服用したあとにアナフィラキシーを起こし、ゼラチンが原因と診断された症例が報告されています。[7]
この症例では、服用約5分後に皮膚症状、腹痛、呼吸困難、失神などが生じ、検査でゼラチンへの反応が確認されています。
また、ゼラチンはカプセル以外にも、一部のワクチン、止血材、医療材料などに使われることがあります。[6]
そのため、ゼラチンアレルギーと診断されている人は、食品だけでなく医薬品や医療材料についても、医師・薬剤師に伝えておくことが重要です。
一方で、ゼラチンアレルギーのない人が、
「ゼラチンカプセルだから危険」
と考える必要はありません。
肉類のアレルギーとゼラチンは関係する?
ゼラチンは牛や豚など、哺乳類由来の原料から作られることがあります。
特に、α-gal(ガラクトース-α-1,3-ガラクトース)に対するアレルギーを持つ人では、哺乳類由来のゼラチンに反応する可能性が報告されています。[8]
実際に、肉アレルギーのある患者がゼラチン製剤でアナフィラキシーを起こした症例報告があります。[8]
ただし、
「牛肉や豚肉にアレルギーがあれば、必ずゼラチンにも反応する」
という意味ではありません。
肉類に対するアレルギーがある場合や、食品・医薬品で繰り返しアレルギー症状が起こる場合には、自己判断で広範囲の食品を除去するのではなく、アレルギー専門医に相談してください。
「ゼラチンの摂り過ぎ」が下痢を起こす?
ゼラチンについて、
「何g以上食べると下痢になるのか」
と気になる方もいるでしょう。
現在、ゼラチンについて、
「○g以上摂取すると、一般的に下痢になる」
という明確な摂取基準は示されていません。
また、健康な人について、
「ゼラチンを多く摂ると腎臓がタンパク質を処理できなくなり、腎機能が悪化する」
と一般化できる十分な根拠も確認されていません。
そのため、
「ゼラチンは1日○gまで」
といった一律の上限を、このような一般的な健康情報として設定することは適切ではありません。
もちろん、どのような食品でも、一つのものを極端に大量摂取することはおすすめできません。
ただし、根拠のない数値をもとにゼラチンだけを特別に危険視する必要もありません。
寒天に替えれば下痢しない?
これも一概には言えません。
寒天とゼラチンは異なる食品素材です。
ゼラチンは主にタンパク質ですが、寒天は食物繊維を多く含みます。
そのため、
「ゼラチンが合わないなら寒天に替えれば絶対に下痢しない」
とは言えません。
また、
「寒天をたくさん食べれば必ず下痢になる」
とも一律には言えません。
ゼラチンか寒天かという二択だけで考えるのではなく、
「何を、どのくらい食べたときに症状が出たのか」
を確認することが重要です。
ゼラチンを食べると毎回お腹がゆるくなるときは?
繰り返し症状が出る場合は、次の点を確認してみてください。
- 何を食べたか
- ゼラチン入りだったか
- グミ、ゼリー、マシュマロなど食品の種類
- どのくらい食べたか
- ソルビトールなどの糖アルコールが入っていないか
- 乳製品や果糖などが入っていないか
- 食後どのくらいで症状が出たか
- じんましんやかゆみを伴っていないか
- ゼラチンを含む別の食品でも症状が出るか
特に重要なのは、
「ゼラチンを含む複数の種類の食品で同じ症状が起こるのか」
それとも、
「特定のグミやゼリーだけで起こるのか」
という違いです。
特定の商品だけで症状が出るのであれば、ゼラチン以外の原材料が関係している可能性もあります。
ゼラチンを食べて下痢になったときの対処法
いったん疑わしい食品を控える
症状が出ているときに、
「本当にゼラチンが原因か確かめよう」
と、自分でもう一度食べる必要はありません。
いったん疑わしい食品を控えて、症状の経過をみましょう。
特に、じんましんや呼吸症状などアレルギーが疑われる場合には、自己判断で食べ直して確認するのは避けてください。
水分を少量ずつ補給する
下痢では水分や電解質が失われます。
一度に大量に飲むのではなく、少量ずつ水分を補給しましょう。
「ゼラチンだけ」が原因と決めつけない
グミやゼリーで症状が出た場合は、
ゼラチン・糖アルコール・乳製品・果糖・摂取量
などをまとめて確認することが大切です。
こんな場合は医療機関へ
次のような場合には、医療機関へ相談してください。
- 強い腹痛がある
- 下痢を繰り返す
- 血便がある
- 高熱がある
- 嘔吐を繰り返す
- 水分が十分に取れない
- 尿が少ないなど脱水が疑われる
- 同じ食品で繰り返し症状が出る
- 原因が分からないまま症状が続く
また、
「じんましん、全身のかゆみ、のどの腫れ、息苦しさ、ぐったりする、意識が遠のく」
などの症状がある場合には、アナフィラキシーなど重いアレルギー反応の可能性があります。
この場合は、速やかな救急対応が必要です。[5][6][7]
まとめ|「ゼラチン=下痢の原因」と決めつけない
ゼラチンを含む食品を食べたあとに、下痢や腹痛が起こることはあります。
しかし、
「ゼラチンそのものが一般的に下痢を起こす」
とは言えません。
グミやゼリーでお腹がゆるくなった場合には、
- 食べた量
- ソルビトールなどの糖アルコール
- 乳製品や果糖などほかの原材料
- もともとの胃腸の状態
- まれなゼラチンアレルギー
などを分けて考える必要があります。
特に大切なのは、
「ゼラチンが入っていたから」
だけで判断するのではなく、
「その商品に何が入っていて、どのくらい食べたのか」
まで確認することです。
また、ゼラチンアレルギーは、一般的な下痢とは別の問題です。
ゼラチンを含む複数の食品で繰り返し症状が出る場合や、じんましん・呼吸症状などを伴う場合には、自己判断で原因を決めつけず、医療機関に相談してください。
参考文献・参考情報
[1] Wang L, Wang Q, Liang Q, He Y, Wang Z, He S, Xu J, Ma H.
Determination of bioavailability and identification of collagen peptide in blood after oral ingestion of gelatin.
J Sci Food Agric. 2015;95(13):2712-2717.
DOI: 10.1002/jsfa.7008. PMID: 25410396.
※ラットを用いた動物試験。ゼラチン摂取後の消化・吸収について参照。
PubMedで論文を確認する
[2] Holwerda AM, van Loon LJC.
The impact of collagen protein ingestion on musculoskeletal connective tissue remodeling: a narrative review.
Nutr Rev. 2022;80(6):1497-1514.
DOI: 10.1093/nutrit/nuab083. PMID: 34605901. PMCID: PMC9086765.
コラーゲン由来タンパク質・ペプチドの消化、吸収について参照。
PubMedで論文を確認する
[3] Hyams JS.
Sorbitol intolerance: an unappreciated cause of functional gastrointestinal complaints.
Gastroenterology. 1983;84(1):30-33.
DOI: 10.1016/S0016-5085(83)80163-2. PMID: 6847853.
健康成人7名を対象に、5g・10g・20gのソルビトール摂取後の消化器症状を検討した小規模研究。
PubMedで論文を確認する
[4] 厚生労働省「D-ソルビトールを多量に添加した食品について」
食安監発第0826002号、平成15年8月26日。
ソルビトール摂取量と緩下作用との関係について参照。
厚生労働省の資料を確認する
[5] Sakaguchi M, Nakayama T, Inouye S.
Food allergy to gelatin in children with systemic immediate-type reactions, including anaphylaxis, to vaccines.
J Allergy Clin Immunol. 1996;98(6 Pt 1):1058-1061.
DOI: 10.1016/S0091-6749(96)80191-6. PMID: 8977505.
ゼラチン特異的IgEと食品・ワクチンに対する即時型反応について参照。
PubMedで論文を確認する
[6] Jiang Y, Yuan IH, Dutille EK, Bailey R, Shaker MS.
Preventing iatrogenic gelatin anaphylaxis.
Ann Allergy Asthma Immunol. 2019;123(4):366-374.
DOI: 10.1016/j.anai.2019.07.017. PMID: 31351979.
医薬品、ワクチン、止血材など医療現場におけるゼラチン曝露について参照。
PubMedで論文を確認する
[7] Tanaka M, Inomata N, Matsuura M, Ishida S, Suzuki A, Sohara M, Aihara M.
A case of anaphylaxis induced by gelatin-contained gel capsule cold medicine.
Arerugi. 2014;63(9):1258-1264.
DOI: 10.15036/arerugi.63.1258. PMID: 25492881.
日本で報告されたゼラチン含有ジェルカプセル感冒薬によるアナフィラキシー症例。
J-STAGEで症例報告を確認する
[8] Uyttebroek A, Sabato V, Bridts CH, De Clerck LS, Ebo DG.
Anaphylaxis to succinylated gelatin in a patient with a meat allergy: galactose-α(1,3)-galactose (α-gal) as antigenic determinant.
J Clin Anesth. 2014;26(7):574-576.
DOI: 10.1016/j.jclinane.2014.04.014. PMID: 25439422.
α-gal感作と哺乳類由来ゼラチンへの反応についての症例報告。
PubMedで論文を確認する
執筆・監修
箕浦雅子(薬剤師)
株式会社健将 代表取締役
薬剤師としての専門知識を基盤に、長年にわたり健康・食品分野に携わり、腸内環境や納豆菌をはじめとする健康情報の発信を行っています。
株式会社健将は健康食品の企画・開発・販売も行っています。本サイトでは、健康や身体に関する一般的な情報について、公的機関・医学論文などを確認しながら、できる限り正確で分かりやすい情報提供に努めています。
利益相反(COI)について
執筆者は株式会社健将の代表取締役であり、同社は健康食品の企画・開発・販売を行っています。
本記事は、特定のゼラチン商品、菓子メーカー、医薬品、サプリメント等を批判・推奨することを目的としたものではなく、公的機関・医学論文等の情報をもとに一般的な健康情報を提供することを目的としています。
※本記事は一般的な健康情報の提供を目的としたものであり、個別の診断・治療を目的とするものではありません。症状が続く場合や気になる症状がある場合は、医療機関へご相談ください。
