生ハムやチーズは好きですか? 下痢を引き起こすリステリア菌

食べ物が悪くなっているのに気づかず、うっかり食べて下痢になってしまった、なんていう経験はお持ちですか?

これからどんどん温かくなり高温多湿になってくると、様々な食中毒菌が繁殖しやすくなります。

そうした中で、最近チーズや生ハムを食べて食中毒になり、下痢をする方が増えています。特に妊娠中の方、高齢者の方は注意が必要です。

下痢の原因となりやすいチーズや生ハムにいる食中毒菌とは?

チーズや生ハムにいる食中毒菌は「リステリア」(リステリア・モノサイトゲネス)です。リステリアは、動物の腸管内や環境中に分布する細菌です。国内で報告されるリステリア感染症の数は決して多くはなく、推定の患者数は年間200人程(平成23年)とされています。

一般の人では、リステリアに感染し重症化することはまれですが、妊婦、高齢者、免疫機能が低下している方は注意が必要です。

欧米では、ナチュラルチーズなどの乳製品、生ハムなどの食肉加工品、スモークサーモンなどの魚介類加工品、コールスローなどのサラダで集団食中毒が発生しています。

国内では、乳製品、食肉加工品や魚介類加工品などから、とても菌数は少ないですが「リステリア」が検出されています。

食品由来によるリステリア症は、発症こそ稀な確率ですが、重症化すると致死率が高い疾患であることから、世界保健機関(WHO)においても注意喚起を行っています。

 

リステリア菌(リステリア・モノサイトゲネス)の特徴

・河川水や動物の腸管内など環境中に広く分布、土壌、植物、表流水、牧草、汚水と畜場などの様々な環境から分離されます。

・リステリアは−4℃でもゆっくりと増殖することができます。10%の食塩水の中でも増殖し、30%の食塩水にも耐えることがわかっています。食肉製品に使用許可になっている程度の亜硝酸塩にも抵抗性があり、これが食肉加工製品からも検出される理由の1つと考えられています。

これらのことから、冷蔵庫での保存や塩分の添加、亜硝酸塩への抵抗性など、他の菌であれば増殖を抑えられるような環境下でも増殖することができるため、感染の原因になる場合があるようです。

近年の食品保存や輸送技術の発達に伴い、冷蔵輸送や長期冷蔵保存が増えたことが、リステリア症の発生の一助となっている可能性も考えられます。冷蔵庫にいれておけば安心だと思わない方がよいでしょう。

・発症しても軽症で自然に治るとされていますが、リステリアに感染したときの症状の重篤度には個人差があります。妊娠中の方や、高齢者、免疫機能が低下している方が発症した場合、症状も重篤になる傾向があり、場合によると死亡、流産・死産の危険性もあるなど、症状の個人差が大きい食中毒です。

・悪寒、発熱、筋肉痛など症状によっては、インフルエンザをはじめとする他の感染症と区別が難しい場合もあり、敗血症、髄膜炎、中枢神経系症状などを引き起こすケース(リステリア症)もあります。

リステリア食中毒の主な原因食品例

・生ハムなどの食肉加工品

・未殺菌乳、ナチュラルチーズなどの乳製品(加熱をせずに製造されるもの)

・スモークサーモンなどの魚介類加工品

・肉や魚のパテ、メロンなどの事例もあります

 

特に気をつけていただきたい方

・高齢者の方

若い方よりもリステリアに感染すると発症するリスクが高いといわれています。65歳以上の高齢の方がリステリア症患者数の77.6%を占めています。高齢者の方は重症化しやすく、髄膜炎・敗血症を起こすこともあり危険です。

・妊婦の方

妊婦が感染すると、リステリアが胎盤や胎児へ感染し、流産や早産、生まれた新生児に影響がでることがあります。

・免疫機能が低下している方

抗がん剤治療中やHIVエイズの方、糖尿病、腎臓病、ステロイド治療を受けている方などは、少量のリステリアでも発症し、敗血症や髄膜炎など重篤な状態(リステリア症)になることがあり、海外では死亡例も確認されています。

 

リステリア食中毒の予防法

・生の食肉類を食べず、肉は十分に加熱します。

・期限内に食べきるようにし、開封後は期限に関わらず速やかに消費しましょう。冷蔵保存を過信しない。リステリアは他の食中毒菌と同様に加熱することで予防できます。食べる前に十分加熱しましょう。

・生で食べる野菜や果物は良く洗います。

・生肉に使用した調理器具はよく洗い消毒します。

・妊婦がこの菌で食中毒を起こすと流産などの影響が出ることがあります。念のため、未殺菌乳で製造したナチュラルチーズ、生ハムなどは避けるようしてください。

腸内環境を整えよう

私たちは口から食物をとり入れ、とり入れた食物が胃や腸を通り、肛門から便となって排出されます。口からは食物以外に、さまざまな細菌やウイルスが侵入してきます。

腸はこれらの外敵にさらされる機会が多いため、免疫機能が備わっています。免疫に関わる細胞の6~7割は腸に存在しており、腸は体内で最大の免疫器官と言われています。

人の免疫力は、何も手を加えなければ20代をピークとして年々低下するものです。そのため、子供や高齢者は免疫力が弱いものです。免疫力が低下すると、感染症、食中毒、他の様々な病気になりやすくなります。

この腸の健康を保つ事が、免疫力をアップするカギと言えます。腸が健康な状態とは、腸内細菌のバランスが整った状態です。

腸内には数百種類以上、100兆個ともいわれる腸内細菌がいます。

その理想的な構成比率は善玉菌(納豆菌、乳酸菌など)が2割、悪玉菌が1割、日和見菌が7割という割合が良いバランスと言われています。こうした腸内細菌のバランスは、偏った食事や少しのストレスですぐに崩れてしまうほど繊細なものです。

腸内細菌のバランスを保つには発酵食品など腸内細菌を助け、補う食品を毎日摂取するのが望ましいです。それでも、食事で摂れる量には限りがあります。サプリメントなどを追加して、効率よく腸内の善玉菌を増やしていきましょう。