下痢の原因は様々です。自己防衛システムである免疫力が低下すると、外から侵入した細菌やウイルス、体内で発生したがん細胞など排除できなくなります。すると下痢になりやすくなります。
下痢がなかなか改善しない、下痢がいつまでも続く慢性的な下痢にもなってしまいます。免疫力は私たちの身体にもともと備わっている自然治癒力ですが、様々な条件が重なると力を失ってしまいます。どんな場合に免疫力が低下するのでしょうか。その原因をご一緒に考えてみましょう。
免疫力の低下で下痢になる
免疫力が低下してしまうと、病原体や危険な細胞を排除する力が弱まってしまうため、感染症にかかりやすくなったり、症状が重くなったり、治りにくくなったりします。また、普段は感染しないような細菌にも感染してしまう場合もあり、下痢を引き起こします。免疫を低下させる原因には以下のようなものがあります。
① 加齢 ②ストレス ③体の冷え ④睡眠不足 ⑤運動不足 ⑥偏った食生活
⑦タバコ ⑧飲酒などです。ではその理由を考えてみましょう。
① 加齢による免疫力の低下
私たちが健康で過ごせるのは、体の中で免疫細胞が毎日、細菌やウイルス、がん細胞などと戦い、老廃物などのゴミを除去し、傷ついた細胞を修復してくれているおかげです。
ですから元気であるためには免疫力アップがかかせません。しかし、残念なことに免疫力は20歳をピークに年齢とともに下がっていってしまいます。
年齢とともに免疫力が下がる理由は年を取ると造血幹細胞が免疫細胞に分化する力が低下し、免疫細胞の数が減ってしまうため、免疫力が落ちてしまうのです。
免疫細胞の約7割は腸に集合しています。腸は口から肛門までをつなぐ消化器官の一つです。消化器官は常に食べ物や水分などを取り込んでいるため、病原体などの異物も合わせて取り込まれるリスクにさらされています。
そのため、有害な物質を体に入れないために、腸には免疫細胞が多く集まっているのです。免疫力が下がると細菌感染、ウイルスに対して十分な力が発揮できなくなり、腸での本来の仕事ができず下痢になってしまうことがあるのです。しかし、年齢に関係なく腸管免疫は強化することができます。
② ストレスによる免疫力の低下
ストレスがたまると、免疫力が下がり風邪や病気などになりやすくなってしまいます。
なぜなら、ストレスは自律神経のバランスを乱してしまうからです。
そもそも自律神経は血管や内臓をコントロールしている神経で、免疫に関する細胞もコントロールしているのです。ですから自律神経のバランスが崩れると、腸にも影響を及ぼし、腸管免疫が下がり、下痢になりやすくなり、なかなか改善しなくなるのです。ストレスによる過敏性腸症候群は代表的な下痢の病気の一つです。
③ 冷えによる免疫力の低下
急に体が冷えると、体の機能も停滞します。血液は各細胞、臓器の栄養源なので、血液の巡りが悪いと体の機能も停滞しやすいです。もちろん免疫力も低下します。
平均体温が1℃下がると免疫力は37%下がり、1℃上がると免疫力は60%活性化されます。体温は免疫力を大きく左右します。風邪を引いた時、熱が上がるのも免疫力を上げるための生体防御反応です。
慢性的な冷えがあると、免疫力も低下している上に、胃腸がうまく働かくなり下痢や便秘の原因になります。
④ 睡眠不足による免疫力の低下
一般的に、私たちの身体には、昼は活動的に動いて、夜は休むというリズムが備わっています。そのリズムに逆らうとストレスになることから、できるだけ夜に睡眠時間を確保することが重要です。
細菌やウイルスに対する免疫力は睡眠中に保たれ、強化されるため、睡眠不足が続くと免疫力が落ちてしまいます。そのため、風邪などの感染症にかかりやすくなってしまうのです。結果、ちょっとしたことで下痢になりやすくなります。
睡眠中には免疫細胞が活発に活動するほか、傷付いた細胞を修復する成長ホルモンの分泌も行われます。また睡眠不足は自律神経のバランスを乱し、免疫機能を担う白血球のはたらきを低下させる要因になってしまいます。
⑤ 運動不足による免疫力の低下
適度な運動の効果としては、血液やリンパの流れが良くなることに伴い、免疫細胞が体内を移動しやすくなり、がん細胞やウイルスに感染した細胞を発見しやすくなることが挙げられます。
さらに、運動により体温が上がることで、免疫細胞がはたらきやすくなる効果もあります。適度な運動は、全身の血液循環と個々の免疫細胞のはたらき、双方にとって効果があるのです。下痢の改善にも効果的です。
⑥ 偏った食生活による免疫力の低下
免疫力が落ちる原因の一つは、偏った食生活です。なぜなら、免疫の担い手である樹状細胞やマクロファージ、リンパ球などは、タンパク質や脂質などからできているため、食事の影響を大きく受けやすいのです。
しかし、極端なダイエットや偏った食生活を続けていると、白血球の活性化に必要な栄養素が不足してしまい、白血球の数が減少し、免疫機能も低下してしまうのです。 免疫機能低下は腸内での正常な働きができなくなり、下痢にもなりやすくなります。
白血球の数を増やし免疫細胞を活性化させるには、ビタミンやミネラル、良質なたんぱく質など、栄養をバランスよく栄養を摂取する必要があります。
食生活を見直してみると、必ず改善しなければならないところが見つかるものです。
栄養は多すぎても少なすぎても、健康の保持や増進には好ましくありません。桶に水を溜める場合、どんなに水を入れても一番短い板のところまでしか水は溜まらず、それ以上は溢れてしまいます。
これと同じ原理で、何か一つ足りない栄養素があると健康レベルもその水準になり、体の不調が生じてきます。栄養バランスが整っていると病気に負けない丈夫な身体を作ることが出来ます。
⑦ タバコによる免疫力の低下
タバコを吸うと体内で一酸化炭素が発生します。通常、ヘモグロビンは酸素と結合し、血液に乗って全身に酸素を運びますが、一酸化炭素のほうが酸素よりも200倍ヘモグロビンと結合しやすいため、全身が慢性的な酸欠状態になります。
すると、栄養分の運搬や老廃物の回収機能が衰えます。また、酸素不足になるため、貧血や息切れなども起こしやすくなります。そうなると運動ができなくなり、体力が低下して免疫力も落ちてしまいます。
更にタバコに含まれる有害物質が体内に入ると、さまざまな障害が起こり、免疫力の低下を引き起こします。
例えば、肺に存在する免疫細胞である肺胞マクロファージが、タバコの有害物質によって損傷を受けることで、免疫機能が著しく低下してしまいます。また、タバコ成分中のニコチンには血管を収縮させる作用があり、それによって免疫細胞が体内を循環しにくくなり、免疫力の低下につながります。
⑧ 飲酒による免疫力の低下
お酒を飲みすぎると肝臓がアルコールを分解しきれず、肝機能が低下してしまいます。肝機能が低下すると、免疫システムに必要な栄養などを体内に供給するのが難しくなり、免疫力低下を引き起こします。
さらに、飲酒によって体内に取り込まれたエタノールは、発がん性が示されている物質に代謝されるので、がんの原因になると考えられています。また、世界保健機関によると飲酒は約60の病気を引き起こすとされています。
もちろん下痢にもなりやすくなります。「酒は百薬の長」といわれることもありますが、お酒の飲みすぎは多くの病気を引き起こす原因となってしまうのです。
常習飲酒者から生まれた子供は長期間にわたり免疫系異常がみられ、そのため、いろいろなウイルスに感染しやすい事が分かってきました。
⑨ 薬・抗生物質・サプリメントの過剰内服による免疫力の低下
日本人は薬好きと言われるほど、たくさんの薬を飲むのに抵抗がないようです。ですから一人の患者さんに多くの内服薬が処方されるケースが、しばしば見受けられます。
また、サプリメントや栄養剤をご自分で購入されて内服されておられる方がおられます。これらの内服は、免疫細胞の活性化を妨げ、ひいては、薬害、副作用、薬剤耐性、を引き起こします。
特に、不必要な抗生剤の長期内服は、免疫力を弱める結果につながります。サプリメントなども、自然のものか合成のものかあるいは、本当に必要なものかどうかよく見極めて慎重に選ばなければなりません。
免疫力をあげて下痢にならないために
免疫力が下がる上記の原因があれば改善するように努めましょう。更に免疫力をあげる方法として「笑い」があります。笑うとNK細胞が活性化され、免疫力が高まります。
笑いによる脳への刺激が、神経ペプチド(免疫機能活性ホルモン)の分泌を促し、NK細胞はさらに活性化され、ウイルスやがん細胞にも立ち向かっていくのです。笑いは自律神経のバランス保持にも貢献します。
笑いは絶えず前向き志向で免疫力をアップさせるのです。大いに笑いましょう。更に、重要なこととして、腸管免疫は年齢を重ねても強化できます。腸内環境を整えることでできるのです。
腸内環境を強化しよう
「元気の元は胃腸から」と昔から言われているように、あらゆる病気の発生場所は消化器官にあると指摘されています。腸内には免疫細胞が7割も集中しています。
バランスの取れた食生活と腸内環境を良好に保つことは免疫力を高めて下痢の改善や様々な病気予防に効果的です。腸内環境を良好に保つサプリメントがありますので上手に利用しましょう。