慢性下痢の原因は亜鉛欠乏

慢性下痢の原因は亜鉛欠乏

近年食生活の変化はめまぐるしく、時には恐ろしい程私たちの身体を蝕んでいきます。

特に腸内はその被害を受け、腸内環境の悪化はますます加速しています。腸内環境の悪化に加えミネラル不足が目立ちます。特にミネラルの一つ、亜鉛不足による下痢も発生しています。

亜鉛が不足すると下痢になる理由

亜鉛は生命の維持や細胞の正常な分化に深く関わっており、不足すると色々な不定愁訴の原因や下痢の原因にもなります。中でも近年若者を中心に急増している腸の病気、クローン病になる可能性が大きいのです。

理由としては、亜鉛が不足することによって、腸内環境が乱れてしまうという点が挙げられます。

亜鉛は人体に不可欠なミネラルの一つであり、細胞の代謝に関わる数百種類の酵素を構成しています。皮膚や髪などに多く存在しており、代謝が活発な骨や腎臓といった組織にも含まれています。腸に亜鉛の栄養素が行き届かないことで、腸内の働きが落ちてしまいます。

人間の腸では、食べ物の水分を吸収して便を固形化させて、排出するという働きが行われていますが、腸の働きが落ちてしまうことでうまく水分を吸収することができなくなり、食欲の低下、下痢となってしまいます。
当然腸内環境も乱れてきます。慢性的な下痢が続く原因にもなります。

亜鉛の働き

亜鉛(Zn)は、私たちの生活の中では500円玉や乾電池の材料として使われている金属ですが、鉄(Fe)と同じように、人間の身体にとって欠かせない「必須ミネラル」の一つです。

体内に存在する亜鉛の量は成人で1.5g~3gとわずかで、必要とされる量も少ないのですが、身体のさまざまな仕組みの中で多様な働きをしていることがわかっている、重要なミネラルです。
そのため効果・効能も多岐にわたります。亜鉛の主な働きを挙げてみましょう。

①酵素の活性化
食物を食べ、栄養素として吸収し、エネルギーに変えて身体を動かすため、体内では常にさまざまな化学反応が起きています。その化学反応には酵素が必要で、体内ではたくさんの酵素が作られ、働いています。

このうち300種類以上の酵素に亜鉛が必要とされています。亜鉛は、酵素の構造を安定化させたり酵素の働きを活性化したりしています。約300種類の酵素を活性化します。

②細胞分裂や新陳代謝
細胞分裂する際に亜鉛が不足していると、DNAが正しく分裂できなくなります。

③活性酸素の消去
亜鉛はSODという抗酸化酵素の材料になります。

④胎児の健康な成長
細胞が爆発的に分裂する妊娠中は大量に亜鉛が必要なります。

⑤精子を作る
アメリカでは亜鉛のことをセックスミネラルと呼び、精子の生成や運動,女性の卵巣にも働きかけます。不足すると不妊の原因にもなります。

⑥アルコールを分解する
アルコール脱水酵素がアルコールを分解するときに亜鉛が必要なります。

⑦免疫力を高める
免疫細胞を活性化する働きがあります。亜鉛をたくさん摂っていると風邪を引きにくくなるというデータがあります。

⑧味覚
亜鉛は味覚細胞の形成にかかわっています。そのため亜鉛不足になると味覚異常になります。

⑨穏やかな気持ちにする
脳内にも亜鉛は多く存在し、記憶や精神の安定に関わっています。

⑩血糖値を下げる
亜鉛は糖の代謝に必要なインスリンを作るために必要になります。

⑪子供の健康な成長
細胞分裂が活発な成長期の子供には亜鉛は不可欠。亜鉛が不足すると身長、体重が正常に増加しない成長遅滞になってしまいます。

亜鉛がインスリン様成長因子(IGF)の働きを補助し骨の成長を束示威しているという研究があります。亜鉛は欠乏しやすい栄養素であり、栄養事情の悪い時代や場所では顕著に亜鉛の欠乏症が見られていたようです。

また成長期の子どもや療養中の方は、亜鉛を消費しやすいため欠乏しやすいミネラルです。またストレスや働き過ぎで亜鉛はたくさん消費され、亜鉛を摂っているつもりでも、亜鉛不足に陥ってしまうことがあるのです。

このように、亜鉛は全身の健康に深くかかわっており、不足すると腸内は正常な働きが出来なくなり下痢になってしまう事がりますので、栄養のバランスには充分な配慮が必要です。

亜鉛不足の原因

亜鉛は欠乏しやすい栄養素です。また限られた食材にしか多く含まれないので亜鉛は意識して摂らないと不足します。では亜鉛が不足する原因を挙げてみましょう。

●偏った食事から亜鉛の摂取量が少なくなる
偏った食事や、極端なダイエットにより亜鉛の摂取量が不足します。

●亜鉛を消費する量が多くて不足する
またストレスの多い人、成長期の子供も亜鉛をたくさん消費しますので不足しやすくなります。

●亜鉛を阻害する食べ物で不足する
ファーストフードやインスタント食品に含まれる食品添加物(ポリリン酸など)には、亜鉛の吸収を妨げ、不足を招きます。また、食物せんいや青菜に含まれるシュウ酸は亜鉛の吸収を阻害するため、肉類や魚介類を食べないベジタリアン、ビーガンなどは不足しやすいミネラルと言われています。

さらに、お酒をよく飲む方も注意が必要です。アルコールの代謝に関わる酵素は、亜鉛を材料としています。お酒を飲むことで体内の亜鉛が使用されるだけでなく、アルコールは尿中への亜鉛の排泄を促します。

●アスリート・スポーツ選手に多い亜鉛不足
亜鉛は汗や尿から排泄されるため、実はアスリート・スポーツ選手では不足しやすい栄養素です。スポーツで引き起こされる貧血をスポーツ貧血と呼びますが、その中の一つに亜鉛欠乏性貧血があります。

症状は風邪を引きやすい、疲れやすい、集中力が下がるなどで、パフォーマンスの低下を招く可能性があるため、より注意が必要です。

亜鉛不足で起きる症状

亜鉛は体内のたくさんの仕組みに関与しているため、不足するとさまざまな不具合がでてきます。亜鉛不足から起こる症状には次のようなものがあります。


①下痢になる
亜鉛が欠乏すると消化管粘膜が萎縮するため、消化液の分泌減少や消化管運動が低下します。亜鉛不足で消化管の働きが悪くなることや、腸の粘膜の免疫機能が低下することから、下痢を起こしやすくなります。
腸粘膜の免疫機能の低下がひどくなると下痢が慢性化することがあります。

②味が分からない(味覚障害)
舌で味覚を感じるのは、舌にある味蕾(みらい)の中の味(み)細胞から味覚神経を通して脳にある味覚中枢へ情報が送られるためです。この味細胞は比較的、短い周期で新しく生まれ変わってきますが、その際に亜鉛が必要となります。

そのため、亜鉛が不足すると、この味細胞が新たに生まれてこないため、「味がわからない」、「本来の味ではない味がする」、「何も食べていないのにいやな味がする」、等の味覚障害が起きてきます。また、薬剤の影響で味覚障害が起こる場合もあります。ストレスや風邪を引くと味が分からなくなるのも亜鉛の不足によるものです。

③食欲がない(食欲低下)
亜鉛が不足すると、胃や腸など消化管の働きが悪くなり、食欲が低下します。食べる量が減るために亜鉛がさらに足りなくなり、悪循環を招いてしまいます。

④皮膚炎
亜鉛は皮膚にも多く存在し、たんぱく質の合成に関わっています。そのため、亜鉛が不足すると健康な皮膚が保てなくなり、皮膚炎やかゆみ等、さまざまな皮膚のトラブルが起きやすくなります。また、亜鉛は皮膚に限らず炎症を抑える働きをもつことが、わかっています。

⑤脱毛
髪の毛や眉毛等の生えている「地肌」も皮膚の一部なので、皮膚と同じように亜鉛不足により、健康な状態が保てなくなります。亜鉛不足で、毛根の周囲にトラブルが生じ、脱毛が起きます。円形脱毛症では亜鉛不足が多く見られます。

⑥生殖機能の低下(生殖機能障害)
亜鉛が不足すると、特に男性の性腺(精巣:精子や男性ホルモンをつくる場所)に発達障害や機能不全が起き、精子の減少、性欲の減退等の症状が現れることがあります。亜鉛不足が男性不妊症の原因になることもあります。

⑦傷が治りにくい
亜鉛はたんぱく質の合成や細胞の再生に関わっているため、不足すると傷の修復力が低下し、傷が治りにくくなります。寝たきりの高齢者等にできる床ずれが治りにくく重症化する人には亜鉛不足が見られます。

⑧風邪(感染症)を引きやすい
亜鉛が不足すると免疫機能が低下するため、ウイルスや細菌に感染しやすくなります。また感染症に対する抵抗力も弱くなり、重症化したり、症状が長引く、繰り返し風邪を引く等の症状が出やすくなります。

⑨身長の伸びが悪い(成長障害)
亜鉛は成長ホルモンや性ホルモン等発育に関するホルモンの産生や働きに関わっているため、子どもに亜鉛不足があると身長の伸びや体重の増加に障害が起こることがあります。

⑩貧血
赤血球の膜を作っているのが、亜鉛が関わっているたんぱく質です。亜鉛が不足すると、たんぱく質の合成がうまくいかなくなり、赤血球の膜が脆く壊れやすくなります。ですから、赤血球の膜が弱いと細い血管を通る時、膜が破れて赤血球が壊れてしまいます。

赤血球というのは寿命があって、毎日壊れる数と作られる数がだいたい一緒になるため貧血は起こりませんが、寿命で壊れる赤血球以外に壊れる赤血球が多くなると、赤血球の補充が追いつかず数が減少してしまいます。結果貧血になるのです。

⑪口内炎
亜鉛不足で口腔内の免疫力や、たんぱく質合成能力が低下すると、その結果、粘膜が弱くなり、口内炎が起きやすくなります。

⑫免疫力低下
亜鉛は体内に入り込んだ異物、ウイルス、細菌などを駆除してくれる「免疫細胞」をサポートする役割があります。人間の身体に備わっている免疫機能には、大きく分けて「自然免疫」と「獲得免疫」があります。

どちらもナチュラルキラー細胞(NK細胞)が主役ですが、亜鉛がなければ活躍できないのです。亜鉛がないと免疫システムが完成しないのです。出来たとしても不良品でまともに働いてくれないのです。

下痢にならないための亜鉛不足を防ぐ方法

亜鉛不足を防ぐ方法として、まず、亜鉛が多く含まれる食品を食べるようにしましょう。牡蠣を始め、にぼしやうなぎ、するめなどの魚介類や、わかめやひじきなどといった海藻類に多く含まれています。

また、レバーやひき肉などの肉類や、卵を食べることも効果的です。日々の食事に積極的に取り入れるように心がけると良いでしょう。この他にも、乳製品やナッツ類にも含まれています。

亜鉛の過剰摂取も下痢になる

食品からの摂取以外では、サプリメントを飲むこともまた良い方法です。食事の前や寝る前など、積極的に飲むことによって、亜鉛不足を防ぐことが可能です。

サプリメントを飲むことで、効率良く亜鉛の栄養素を摂取することができるので、忙しい時には便利ですが、亜鉛のサプリメントは過剰摂取する恐れがありますので、摂取量には充分注意しましょう。

一日上限が30mgです。亜鉛の過剰摂取も下痢・嘔吐・腹痛などの健康被害をもたらします。出来れば野菜や貝類といった自然のものから摂取しましょう。

亜鉛は意識して摂らなければすぐに不足

これまでに紹介した、亜鉛不足の症状ですが、亜鉛が足りていれば全て解決するとは言えません。しかし、亜鉛が足りていなければ解決が困難なのは確かです。

現代は非常に亜鉛の維持が困難になっています。亜鉛は吸収率が悪いばかりでなく、減少しやすいことも亜鉛不足の大きな原因です。

砂糖がたくさん使われている飲み物やお菓子、便利な加工食品、添加物などは亜鉛の働きや吸収を鈍らせます。

もし、あなたが亜鉛不足の症状を感じている、もしくは避けたいと思うなら、亜鉛の吸収を阻害させるようなものを食べず、亜鉛を積極的に摂りましょう。

ファーストフードやインスタント食品に含まれる食品添加物には、亜鉛の吸収を妨げます。栄養素自体もあまり含まれていないため、なるべく摂らないようにしましょう。

レモンなどのビタミンC豊富な食品と合わせて食べると、亜鉛の吸収が高まりますので、ビタミンCの多いピーマンやモロヘイヤなどの食材と一緒に食べると効率的です。

高齢者は特に注意しましょう

高齢者の亜鉛不足を示すデータもあります。長野県の七つの国保診療所に通う851人(平均年齢78.3歳)を対象にした2005年度の調査によると、血清に含まれる亜鉛の平均値は73.1㎍で基準値の平均87.5㎍を下回っていました。

高齢者の場合、食事からの摂取不足に加え、亜鉛の吸収を阻害したり、体外に排出する作用のある薬の長期服用の影響などが考えられます。

亜鉛欠乏チェックリスト≫
以下の10項目の中で、あなたはいくつ当てはまりますか?
①風邪をひきやすい

②洗髪時、髪が抜けやすい

③食欲不振になりやすい

④肌が乾燥しやすい

⑤傷の治りが悪い、跡が残りやすい

⑥爪に白い斑点がある

⑦味覚や嗅覚が鈍い

⑧性欲が落ちた

⑨ネックレスなどで皮膚炎が起こる

⑩傷や虫刺されが膿みやすい

3つ以上当てはまった方は、亜鉛不足の可能性があります。亜鉛を多く含む食材を食べるように心掛けてください。

栄養バランスを整えよう

栄養は多すぎても少なすぎても、健康の保持や増進には好ましくありません。

桶に水を溜める場合、どんなに水を入れても一番短い板のところまでしか水は溜まらず、それ以上は溢れてしまいます。

これと同じ原理で、何か一つ足りない栄養素があると健康レベルもその水準になり、体の不調が生じてきます。栄養バランスが整っていると病気に負けない丈夫な身体を作ることが出来ます。

腸内環境を強化しよう

「元気の元は胃腸から」と昔から言われています。昔は今ほど、添加物やインスタントもの、輸入品などはありませんでした。食生活が変わり、病気の量も種類も変わりました。病気になったら医療に頼りますが、病気を根本的に治すのは食べる事から始まるのです。

特に腸内は食べた物を活用し、健康にするところですので、とても重要なところです。まずは腸内環境を整えましょう。下痢の改善も早くなります。腸内環境を強化するサプリメントを利用するのも良い方法です。