下痢の原因は高齢者の過敏性腸症候群
高齢になると頻尿や頻便に悩まされる人が多くなってきています。頻便には下痢、軟便の方もおられます。こうした軟便や下痢の原因の一つに、今注目されているのが高齢者の過敏性腸症候群だと言われています。
こうした高齢者の下痢についてご一緒に考えてみましょう。
目次
・過敏性腸症候群とは ・高齢者の過敏性腸症候群 ・どんな症状なのか? ・薬は補助的に ・下痢を改善するために
過敏性腸症候群とは
過敏性腸症候群というのは、慢性の経過をたどって、腹痛や腹部膨満感、下痢や便秘などの便通異常があります。慢性の経過とはその症状が再発・再燃を繰り返し、炎症や腫瘍などの器質的疾患は除外されます。
食事の内容によっては翌日ちょっと下痢になったり、便秘になったりする。
そういう一時的なものではなくて、慢性的下痢や便秘です。つまり過敏性腸症候群とは、検査をしても、がんや炎症、潰瘍など、目に見える異常がないにもかかわらず、下痢や便秘、腹痛などがおこる病気です。
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高齢者の過敏性腸症候群
過敏性腸症候群の病態はいろいろと研究されていますが、一番大きな原因はストレスが非常に影響しているといわれています。
「脳腸相関」という言葉があるのですが、脳でストレスを感じると、腸がそれに反応して敏感になってしまうのが過敏性腸症候群の病態だと考えられています。
発症の頻度は欧米の調査ではだいたい人口の10~20%と報告されています。日本の調査でも15%前後といわれています。発症年齢は、やはり若年者で、20~30歳代が一番多いのですが、さらに70~80歳代にも一つのピークがあるとわかっています。
若者も悩みが多く、生活の環境の変化も大きいのですが、70~80歳代もこの時期には生活環境が大きく変わり悩みが増えてきます。定年になり、家族の中での立場が複雑になり、ストレスを受けるようです。
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過敏性腸症候群の症状
●男性と女性では異なる
過敏性腸症候群は基本的には腹部症状、すなわち腹痛や腹部不快感を認めます。それから便通異常を伴います。すなわち下痢や便秘のどちらかの症状を伴うということが基本的にはあります。
過敏性腸症候群には男女差がかなりあり、一般に数としては女性のほうが多いとされています。
男性はどちらかというと下痢に傾き、女性は混合型といって下痢と便秘を繰り返したり、あるいは便秘に傾く方が多いといわれています。
●時間で異なる
過敏性腸症候群は、昼間、特に午前中に症状が強いという特徴があります。例えば、学校に行く前とか、会社に行く前に非常に症状が強くなります。一方、夜間に症状が出ることはまれです。
過敏性腸症候群は本人がその症状で非常に悩みますので、生活の質が落ち、仕事にも影響が出てきます。
場合によっては、重症の方の中には学校に行けなくなったり会社に行けなくなったりする方もおられます。
●便失禁
また高齢者では便失禁を訴える方がおられますが、過敏性腸症候群や肛門に特に器質的な病気はないけれども、何らかの機能的な原因でお通じが出てしまう状態です。
高齢者では非常に多く、高齢者の10~20%の方に認められます。年齢を重ねると、どうしても肛門括約筋の機能が弱ってきます。
もう一つは、肛門の内側のところ、つまり肛門の栓になるところですが、ここの機能も弱ってしまうので便が漏出してしまうということがいわれています。
更に、便失禁だけでなく、ガスも漏れてしまう、すなわちおならが漏れてしまう場合があります。この場合には肛門失禁という言葉を使うのですが、どちらも非常に患者さんにとっては辛いものです。
●過敏性膀胱
過敏性腸症候群の方の場合には、過敏性膀胱を合併することが多いといわれています。試験の前に緊張するとトイレに行きたくなることはよく経験したと思います。
これはお通じだけではなくて、おしっこのほうも行きたくなる方が多いと思われます。その場合には一時的なもので、病態としては少し違う状態なのですが、緊張により膀胱と腸の両方が敏感になってしまうということです。
過敏性腸症候群の方では、その反応がより強く出るということがいわれています。
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生活習慣を改善し、薬は補助的に
一番大事なのは、生活習慣を改善し、ストレスがかからないようにすることです。食生活や排便習慣の改善、適度な運動と睡眠が大切です。
下痢には消化吸収のよい低脂肪食、便秘には食物繊維を多く含んだ食品がよいといわれます。腸を刺激する脂肪、食塩、砂糖類、アルコール、カフェインはとりすぎないように気をつけてください。
とくに脂肪分は胃に入ると、腸の収縮を促すので、腸のけいれんを悪化させるおそれがあります。便秘が続く時には、食物繊維を多く含む野菜
、全粒穀物(玄米、全粒パン)、胚芽米、果物、豆類、魚、海藻、キノコ類を多くとりましょう。
排便習慣を改善するには、まず暴飲暴食を避け、規則正しい食生活、軽く汗をかく程度の運動、十分な睡眠と休養を心がけ、生活にリズムをつけることです。便意をもよおさなくても、食後の決まった時間にはトイレに行くよう習慣づけましょう。
緊張や不安などのストレス、精神症状の改善を図るうえで、抗うつ剤や抗不安薬、下痢止めなどあり有効な場合もありますが、薬の使用は、あくまでも補助的なものと考えましょう。軽症の場合は、腸の働きを整える整腸剤、腸内環境を整えるサプリメントなどを使用するといいでしょう。
この病気に対する治療のゴールは、日常生活に支障がなくなる程度に過敏性腸症候群を抑えることです。生活習慣を見直し、辛い時には医師と相談しながら、じっくりと構えて対処すると、ほとんどの方が改善していきます。
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下痢を改善するために
「元気の元は胃腸から」と昔から」言われています。まずは腸内環境をしっかり整えることが重要です。殆どの病気は腸内環境の悪化から始まります。
腸内環境を整えるサプリメントがありますので、上手に利用しましょう。下痢の改善は一段と早くなります。